134話 鉱国への道中ですでに頭痛がしてきたんだが
「つまり邪神が暗躍していて、大規模な戦争が起こるんだよね?」
「あぁ、間違いなく起こる。」
ロクシュリアは不安げな顔で俺を見つめている。
思えば結婚してからほとんど一緒に居られていない。
とても申し訳なく感じるが、俺がここまで忙しいのは重大なナニカがあるのだとロクシュリアは理解してくれている。
とはいえ奴らの動きを考えるとやはり大戦は避けられないだろう。
改めてロクシュリアに色々と近況を説明した。
「創造神様は直接手助けはできないの?」
「あぁ、それは無理だ。そもそも邪神が依り代で地上に降臨しようとしているのも禁忌中の禁忌だ」
「もし、邪神降臨が成功したとして...それでも勝てる?」
「その前に決着をつけるさ」
アルスとロクシュリアの寝室からは満天の星空が見えていた。
二つある月と星空は絵画のような美しさである。
ふいに立ち上がったアルスはロクシュリアの手を取りベランダに出る。
眼下には人の営みを感じる夜景が広がり、上には星空。
その光景を見ながらアルスは繋いだ手を少しぎゅっと握った。
「我が国と、邪神、聖信教会との戦争じゃない。もし我々が敗北すれば魔族も獣人も亜人も、そしてほとんどの人族も未来を絶たれることになる。そんなことはさせない」
「私は、アルが居てくれたらそれだけで」
「元教皇とは思えない言葉だな...」
俺が微笑みながら茶化すがロクシュリアの顔は真面目だ。
「大丈夫、死なないよ俺は。まだまだ俺にはやることがあるんだ。ロクシュリアとだってまだ新婚を楽しめてないしね」
「約束...」
「あぁ約束だ」
月明かりに照らされる二人の影は、激動の渦中で眩いほどの温もりに包まれていた。
*
「殿下ー、そろそろブルーダスト鉱国につきますよ」
「さすがに早いな」
雲の上。
ダークネスドラゴンの背に乗り移動しているアルス達はまもなく鉱国に辿り着くところまで来ていた。
"クロ疲れてないか?"
"ぜんぜんっ!"
道中ほとんど休んでいないが育ち盛りのドラゴンはかなり元気だ、
本人がそういうなら大丈夫なのだろう。
「それにしてもなんでついてきたんだ」
「俺も聞いてないぞ」
ベルクールに続いて俺も振り返って声をかけたのは、ついさっき現れた少女に対してだ。
ベルクールと二人で来ることになっていて変更は聞いていない。
ここまでの道中ついてきている気配には気づいていたのだが、敵ではなさそうなので放っておいた。
そしてさきほど彼女は現れた。
「...護衛?」
「なんで嬢ちゃんが疑問形なんだ?」
「エリスプリナ、キミが護衛につくとは聞いていないんだが」
「...自主的に?」
「だからなんで嬢ちゃんが疑問形なんだ?」
「エリフレイナは把握しているのか?」
「...書置きは、残した」
「はぁ」
そう、付いてきていたのは蒼天の天人隊遊撃隊長エリスプリナだ。
戦闘では実力者だが、他の業務がほとんどできないで有名な彼女である。
つまりは自主的に勝手についてきた、ということだ。
きっと今頃天人隊隊長のエリフレイナがこめかみに青筋を立てていることだろう。
「嬢ちゃん帰国したら絶対怒られるぞ」
「...それはいや」
「仕方ない。とりあえず同行を許可するから、なるべく大人しくしていてくれ」
「...ぎょい...御意?」
突っ込みどころが多すぎる。
連れて行って大丈夫なのだろうか。
あ、頭痛がしてきた、、
辿り着いたブルーダスト鉱国の首都は鉱の名が付くに相応しい、鉱山に四方を囲まれた場所だった。
自然あふれる山の国とベルクールが言っていたが確かにそんな感じだ。
俺が訪れることは前もって伝えているが、ドワーフは鎖国的な種族だと本で読んだことがある。
少し不安ではあるが、この国には友人のポリオが居る。
まずはポリオに会いたいところだ。
ドラゴンに乗って首都の門に行くわけにはいかないので門の遥か上空から俺達は重力に従って落下した。
空を飛ぶことができる俺とエリスプリナがいればこの急降下も問題はない。
問題はないのだが、ちらっと横目で見るとベルクールの顔は青い。
「殿下!!!!しぬっ死にますって」
「大丈夫大丈夫」
「...ベルクール...ビビり?」
「嬢ちゃん!!!!後で覚えとけよーー!!」
ベルクールの心配はさておき、地面に落ちる前に俺がちゃんと彼を受け止め問題なく着地した。
「この方法は二度とやめましょう...う、うぅえおろおろ」
「善処する、って吐くなよベルクール」
「...汚い」
嘔吐しながらエリスプリナを睨みつけるベルクールと、睨まれても全く動じずに嫌そうな顔で俺の後ろに隠れるエリスプリナ。
そんなこんなで我々は鉱国の主門に辿り着いた。
まぁもちろんだがそんな上空から急に降ってきた怪しい俺達は兵に囲まれている。
「貴様ら何者だ!!」
逞しい髭とずんぐりとした体格の正しくドワーフ然とした兵が代表して詰問してきた。
「あ、申し訳ない。ベルゼビュート大魔帝国皇太子アルス・シルバスタ=ベルゼビュートと申します」
そういって俺はいつもは仕舞っている角と翼を出した。
はたから見ればそれだけで魔族だと理解するだろう。
そして、角と翼の大きさ、禍々しさはそれ相応の血統を意味する。
「大魔帝国の皇太子...様ですか?」
「あ、これは父からの手紙です」
「も、紋章を確認致します...確かに、これは皇家の。失礼いたしました。王城へご案内します」
「その、片付けすいません。ベルクールも謝れ」
「申し訳ない」
「いえ、問題ありません」
道に残ったベルクールのゲロがとてもいたたまれない。
片づける人、すいません。
気を取り直して、いざ鉱国の王城へ!!
お待たせしました。
最終章に向けて進んでいきます!!
度々連載が止まる癖は、昔から読んでくれている方はいつものことだと思いますが、本当に申し訳ないです。
なるべくコンスタンスにあげていきますm(__)m
しれっと封鎖していた感想を再開します。
誹謗中傷はやめてください、泣きます、、
暖かいコメント待ってます(-。-)y-゜゜゜
by尾上蓮虎




