表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/138

129話 モルドナの王





 セイゴと話をした日から、数日後。

アルスの所にとある手紙が届いた。

それを見たアルスは、過去の記憶を必死に思い出す作業をしばらくしてから突然思い出して「あー!!!」と声を上げた。

手紙を届けに来た兵士がギョッとしていたのはアルスは気づいていない。






 兵士を下がらせてからアルスは改めてその手紙を読み直した。

差出人はモルドナ王国の国王ヴォルフェウス・ルーデル・モルドナだった。

前に南大陸の戦争、あの邪神の使徒達と戦った時に極秘で会談をした王だ。

手紙の内容はやっと国内も落ち着きだし王太子も執務こなせるので、魔国に赴きたいという内容だった。

確かにあの時、一度行きたいと言っていた。




 今はこっちはかなり忙しいので断ろうと思ったが、手紙にはモルドナ王国は対聖信教会の同盟に加入していると書いてあった。

であるなら、話は変わってくる。

同盟の内情はぜひ確認したい。

アルスは返答の手紙に承諾を伝える文を書いた。

南大陸は乱世のような状態になっているのでこちらから護衛と船を出すとも書いておく。

向かっている際に何かあっても困る。
















それから数週間、アルスは多忙も多忙。

まさに忙殺されながら過ごした。

ローナの小言も、もはやBGMに聴こえるほどだった。



そして、そんな地獄の日々の中ついにモルドナ国王が魔国に到着した。




アルスだけでなく父上を含めた家族全員がモルドナ一行を迎えた。

モルドナ一行は国王と王妃、あの時に居た将軍ヴァルソア・ルーグランドと王国軍の精鋭。

そして、モルドナ国王を迎えに行っていたレオナルド達壱番隊も帰還した。




「お初にお目にかかります、ベルゼビュート皇帝陛下。南大陸モルドナ王国の国王ヴォルフェウス・ルーデル・モルドナと申します。以前は皇太子殿下に国を救われました。改めてお礼申し上げます」


「頭を上げてくれ、モルドナ王。気持ちは受け取った。ベルゼビュート大魔帝国皇帝シルバ・ヴィベルイ=ベルゼビュートだ」




一国の王同士ではあるが、南大陸の中小国の王と、北大陸の唯一国家である帝国の皇帝ともなればその力関係は歴然。

モルドナ王の顔には緊張の面持ちが見て取れた。




「お久しぶりですね、モルドナ王陛下。あれから国が再建してきたと聞き嬉しい限りです」


「皇太子殿下、お久しぶりです。あの時は本当にありがとうございました。お陰様でなんとか今も国家を運営する事ができています」


「いえいえ、気にしないで下さい。当然の事をしたまでです。将軍もお変わりないようで」


「はい!日々難題は抱えていますがなんとか現役でやってます」


「あなたが引退したらそれこそ大問題でしょう。まだまだ引退は遠いかと」


「はぁ〜、そうですね」




将軍は苦笑しながら頭を掻いた。

本当に大変なのだろう。

同じく忙殺されているアルスにはそれが痛いほどわかった。




「外で話すのも冷えるだろう。中に入ってくれ。まずは用意した部屋でしばし休憩し、その後また話す機会を作ろうと思うのだがいかがか?」


「ありがとうございます。長い船旅でしたので厚意に甘えさせてもらいます」
















父上とモルドナ王との会談は問題なく行われた。

アルスも同席していたし、そもそも別大陸で友好国の為問題が起こるわけもない。

それから、夜は歓迎の晩餐という形になった。




モルドナとは発展具合が圧倒的に違う魔国に終始モルドナ王とその一行は驚愕していた。

帝城での晩餐も凄まじい豪華さで、集まった魔国勢も将軍が頭痛を覚える程に精強、そして洗練されていた。




アルスも晩餐に参加している訳だが、モルドナ王としばしば目が合うので最初は受け流しつつ、しかししつこいので話し掛けに行くことにした。




「どうかされましたか?モルドナ王陛下」


「その呼び方は辞めてください。こんな凄まじい国を見せつけられて、かつ恩人である皇太子殿下に陛下などと呼ばれるのはむず痒いです。ヴォルフで構いません」


「さすがにそれは……では、ヴォルフ王でよろしいですか?」


「はい、お好きに呼んで下さい。にしても、凄いですね大魔帝国は……初めて来て驚愕しっぱなしですよ。見たことも無い技術、それを街全体、いや国全体に行き届ける豊かさ、そして兵士達の練度、街の治安の良さ、どれをとっても我が国、いや南大陸のどの国ともレベルが違う。本当にここまで胸が躍ったのは初めてです」


「過分な評価ですね……まぁ確かに栄えてはいますね我が国は」


「過分なんてとんでもない。もっと誇るべきです」


「それもこれも我が父と先祖の方々のお力です。感謝しかありませんね」


「本当に偉大な方々だ。いつか、来たいと思っていました。来れる機会を得ることができて幸せに思います」




この王は本当に少年のようだなとアルスは思った。

魔国の話をしているときも顔が常にニコニコしているし、興奮が伝わってくる。

あの時も思ったがこの国王は……少し変な人だ。

将軍もやつれるはずである。




「それより、同盟はどんな様子ですか?」


「同盟と教会との間の戦争は各地で起こっています。戦況は全体から見れば、現状拮抗していると言えます。かなり押し返しました」


「それは凄いですね。あちらには今代の勇者と呼ばれる邪神の使徒がいるはずですが」


「確かに使徒は途轍もなく強いです。しかし、戦争は各地て起こっている為同盟が連携すればなんとか拮抗を保てるというのが感想です。噂によると、使徒の一人と幹部の一人が行方不明だとか、それも要因かもしれません。確実な話ではないですが行方不明の使徒に関しては突然どこにも現れなくなったとか」




行方不明の使徒と、幹部と聞いてアルスはギクリとした。

その二人は今この国に居る。

とは、言えない。

だがまさか同盟が拮抗しているとは。

邪神の軍勢はそこまで強くないのだろうか。

いや、数の違いもあるのだろう。

ヴォルフ王からの手紙に書かれていた南大陸の同盟参加国は意外にも多かった。

また中立の国も少なくはない。

実際の数の問題では同盟の方が現状多い。

これは、良い兆候だ。

ここにわが国の軍勢が加われば一気に攻め落とせる可能性が出てきた。




「なるほど。この前の手紙にも書いた事ですが、もし我が国が同盟側に参戦するとなった場合反発はありそうですか?」


「ないでしょうな。むしろ、好機と取るはずです」




ヴォルフ王の確信のある顔にアルスは意外だと驚いた。

南大陸つまり人族と、北大陸の魔族との間には戦争の歴史が長くある。

因縁と言ってもいい。

であるのに反発がないとは。




「驚きましたか?実は同盟の方々には長い事アルス殿下から聞いた話を説明していました。最初は半信半疑だった者も現状を見て確信しています。偽りの歴史、信仰、それによる被害。考えれば答えはそこにありました。それに、もしその話がなかったとしても同盟は魔国を受け入れたでしょう。目下の敵は間違えなく教会ですから」


「そうか、ちゃんと話を広めてくれていたのですね。ヴォルフ王に話をしてよかったです。味方が増えるのは有り難い」


「我々の国の大逆転劇は南大陸では有名な話です。私は誰にももちろん殿下のお力を借りたことは伝えていませんが、同盟の王達は気づいているでしょう。南大陸の神が邪神であるなら、他の大陸で信仰されてる神こそ本物の創造神。その創造神の使徒であるアルス殿下の加勢、あの話を納得していればそこに至る推理は簡単な事です」


「そこも一つの要因ということですね。我が国の戦力はなかなかですし」


「なかなかなんてモノではないですよ。圧倒的な戦力です」


「では、いずれ正式に我々も同盟に加入した際には直接私が南大陸に赴きましょう」


「段取りは任せてください、アルス殿下」


「助かります、ヴォルフ王」








このベルゼビュート大魔帝国の帝城で開かれた晩餐での、皇太子アルスとモルドナ王との話し合いは、後の世でも語られる一幕であった。

この二人の出会いこそ対邪神(教会)同盟の未来、そして南大陸の多くの国々の未来を変えたと言っても良いだろう。















まさにそれは運命であった。



















62話以来のモルドナ王と将軍の登場でした。

忘れた方はぜひ62話を見直してみてください。

久しぶりの投稿なので一気に3話書きましたが結構しんどい、、、、_| ̄|○


今後はなるべくストックしよう。

近日中に次の話をあげます!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ