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100話 祝福の光



祝100話!!!!!!

今まで読んでくれた方、ついに大台にのりました!!!!!

今後とも転生捨て子を宜しくお願いしますm(_ _)m












「珍しく緊張してるな?アルス」


「それはそうよあなた………晴れ舞台なんですもの」 




 優しげな微笑みを向ける父ケイレスと母マリーを前にアルスは緊張した面持ちで控室でうろちょろと歩き回っていた。




「結婚とはこんなにも緊張するんだね」


「それはそうよ、アルス。一人一人別に生きてきた人間が、これからはどんな時も共に生きていくって誓い合うんだもん」


「まさか、アルスが結婚とはな………時が経つのがとても早いな」


「いずれはあなたもお爺ちゃんね」


「そうなったらお前もお婆ちゃんだぞ?」


「ふふっ」


「ははっ」




 二人が自分の事のように嬉しそうにしているのを見てアルスは少し落ち着いた気持ちで“ふぅー”と息をつく。




「兄上!兄上!!」




 すると控室に何処かに行っていたメルが走って入ってきた。




「メル………走っちゃダメよ?」


「そうだぞ。貴族子女として…」


「そんなことよりも!!」




 二人の小言を無視してメルはアルスの前に立つ。

その顔は花が咲いたように、にこやかである。




「どうした?メル」


「ロクシュリアお姉ちゃん…………すごいよ?」


「すごい?」


「すんごい可愛いの!!!」


「ふふ……そうか」


「珍しく緊張してるんだ!」


「まぁなー人生で一度しかないだろうからな」


「いいなー!メルもあんな綺羅びやかなドレス着たい!!」


「ドレスならいつも着てるだろ?」


「ぶぅー………違うよ!純白の花嫁のドレス!!!」




 そう言ったメルに後ろにいるケイレスとマリーは“いずれこの子も…”と少し気落ちしている。




「まぁまだ先のことだろ?まずは良い人を見つけなきゃな」


「…………うん」




 ガチャリと扉が開き、また人が入ってくる。

それを見たアルスは家族勢揃いであることを嬉しく思った。




「緊張しているようだなアルス」


「………格好いいわ!!さすがは私の息子!!!」




 もちろん入ってきたのは皇帝シルバと皇妃エリザベートである。




「緊張………してるね」


「ハッハッハッ アルスでも緊張するのだな」


「あなたも自分の事のように緊張してたじゃない?」


「なっ!?それを言うなエリザ」


「ふふっ……この人ったら緊張して昨日はあまり寝れていないのよ?」


「………父上も緊張するんだね」


「一人息子の結婚式に緊張しない親が居ると思うか?」




 なぜか吹っ切れて堂々とそう告げるシルバにアルスは苦笑を顔に浮かべる。

が、シルバの普段は見せないそんなエピソードに心温まったのは言うまでもない。




「改めて、アルス!結婚おめでとう」




 シルバはそう言ってアルスの頭を撫でた。

幼少期を他国で過ごさせてしまった息子。

共に過ごした時間はそこまで長くはない。

こうやって子供として頭を撫でるのはもう最後かもしれないと少し寂しさを感じてしまう。




「おめでとうアルス………はぁまだまだ子供のままで良かったのに………。でも、私も嬉しいわ本当に」




 エリザベートはアルスの頬を両手で包みニッコリと微笑んだ。

生き別れても、再び出会えた喜び。

そして、そんな愛おしい息子が愛した女性と結婚するという寂しさと嬉しさ。

エリザベートはこんな複雑な気持ちになるのはもう生涯ないかもしれないと思いながらアルスを抱きしめた。




「アルス………良い子を見つけられてよかったな。妻を一生守って幸せにしていくんだぞ?」


  


 ケイレスは不器用である。

だからこそ少し恥ずかしくてアルスというよりも天井を見ている。

が、それは涙を堪えているのもあると隣のマリーは分かっていた。

ケイレスがアルスに拳を出した。

それにアルスも拳を出して、二人の拳がぶつかる。

ケイレスはそれが済むとその場から少し退いてマリーを押し出す。




「アルス!!本当に大きくなったわね………あんなに小さかったのに、もう結婚なんて………ふふっ………でも、とても嬉しいわ。綺麗な奥さんを泣かせちゃダメよ?」




 マリーもエリザベートのようにアルスを抱き締めた。

夫が拾ってきた時、アルスはまだ幼かった。

そして、共に過ごし間違いなく家族として今まで愛して育ててきた。

昔から手がかからなくて、困難なことを一人で背負い込もうとする息子。

その息子を心配に思っていない時はなかった。

そんな息子が、今日結婚する。

それがこの子にとって安らぎになってくれることを祈りたい。




「兄上…………メルは…………ずっと兄上の妹です!変わりなく溺愛して下さい!!」




 メルのその発言に皆が笑った。

メルがとても真剣な顔なのもまた皆の頬を緩める。

他の人に盗られないかと不安に思う可愛い妹の頭をアルスはよしよしと撫でる。




「もちろん………メルの事はずっと大事だよ」


「………なら良いです!おめでとう兄上」


「ありがとうメル」















 魔国で最も大きな皇都の創真教教会。

そこに未だかつて無い程に人が集まっていた。

普段は使われない王族の結婚用に存在する綺羅びやかで芸術的な屋外のチャペルで向かい合う男女と、その二人を祝福するために立つ創真教の枢機卿。

皆の視線は一様に男女に向けられていた。


 



「夫、アルス・シルバスタ=ベルゼビュートは生涯妻を愛すると誓いますか?」


「身体が灰になるその時まで妻を守り、そして生涯愛し続けると誓います」


「妻、ロクシュリア=ソーマリアは生涯夫を愛すると誓いますか?」


「もちろん誓います。今世だけでなく来世でも出会い愛せるように神に祈り続けます」


「では、誓いの接吻を」





 二人が口吻を交わす。





 南大陸を除けば最も信仰されている創真教。

その創真教で聖女から教皇となった少女。

彼女は、孤児だった生い立ちにも負けず、ただひたすらに神を崇め、そして平和な世のために祈りを捧げ続けてきた。




 北大陸の統一国家であるベルゼビュート大魔帝国。

その国の皇族(前王族)でありながら人族との戦争によって赤子の時に誘拐され、南大陸の森に捨てられた少年。

彼はそれでもそんな環境に臆することなく、正しいと思う道をひたすらに歩み続け、そして現在は皇太子、そして使徒として世界の平和の為に命を灯す。





 交わる可能性はとても少なかったそんな二人が、今この時………夫婦となった。





 空から光が降り注ぐ。

その光の柱は二人を包み込む。

そんな幻想的で有り得ない光景に観衆は息を呑んだ。




『わしの良き理解者であり良き友であり孫のような存在である使徒アルスよ。

そして、恵まれた幼少期ではなかったであろうに、それでも世界の平和の為に祈り続けた聖女ロクシュリアよ。

創造神であるわしは、二人の婚姻を心から祝福する!!!!

そして、神である私も二人の未来が永劫幸せであらんことを心から祈る……』




 その場の全員に聞こえる程の天啓。

神の声は、観衆の思考を停止させた。

何が起きているのか皆が理解するまでに少しの時間を要した。

そして、最初にそれに気付いた誰かの驚きは波のように大観衆に広がり凄まじい轟音の歓喜に形を変えた。





「………創造神様の祝福!!!!」


「す、すげぇ」


「これが………使徒様と聖女様……」


「魔国はこの先も安泰じゃ………」


「グスンッグスンッ……すごいぃ」


「なんて美しいの………」









 邪神による世界の不穏は消えていない。

だが、この時この瞬間は間違いなく皆が歓喜し喜びに包まれた。











 光が降り注ぐチャペルの上。

使徒アルス、聖女ロクシュリアは夫婦となり、創造神からの祝福を受けた。

その場に居た全ての者が確かに聞いた創造神の言葉。

それは、その場の全員の記憶に生涯残った。

 




 この日のこの出来事の事を、遠い未来では祝福の光という内容で歴史書に刻まれている。

降り注ぐ神々しい光に包まれた二人の笑顔と神の声、それは邪神と戦った使徒と平和の為に祈りを捧げ続けた聖女に向けられた世界からの最大の祝福だったとされている。

その為、歴史書だけでなくこの逸話は後の創真教の教本にも書かれている。











「ねぇ、アルスくん」


「ん?」


「私は、世界一幸せだよ」


「……あぁ、俺も世界一幸せだ」


「二人で乗り越えていこうね」


「何があってもな」


「うん、何があっても………」


「「愛してる……」」









↓アルス・シルバスタ=ベルゼビュート

挿絵(By みてみん)



↓ロクシュリア=ソーマリア

挿絵(By みてみん)







『祝!100話!!!』

『祝!250万PV!!!』


 初のイラストです!!

あえて皆のイメージに任せたいと思って載せてこなかったのですが、設定の為のイラストにするのは勿体ないと思い、アルスとロクシュリアの結婚と100話のこの機会に転載しました!


 100話という区切りを無事迎えられてよかったです!!

今後もまだまだ話は続きますm(_ _)m

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