生温いエスコート
雨が降りながら
暖かな風が吹く
湿気と混ざり合い
特有の気持ち悪さが
耳を通り
首の後ろ側へ
のっぺりと流れる
空気でありながら
口の中のグミみたいに
触れて行く
途中で雨は止み
傘は不要になった
ズボンの裾は濡れていて
歩きながら
アキレス腱が冷たい
張り付く程ではないけれど
不愉快さが
コンパスで
上手く円が書けない
そんな時みたいだった
扉の前
鍵を探して
バックの中を冒険
真っ暗闇で
屋根の無い玄関先は
軒先の雫を容赦無く
肩や頭に
落として行く
たまに
顔に落ちて
不快な顔を
自宅の扉に向けた
部屋の匂いがして
居場所を認識する
もう出掛けはしないから
玄関には鍵をかけた
先にズボンを
脱いでしまおうと
ポケットの中身を全て出す
ついでに
身につけている物も
取り外した
洗面台の上に腕時計
外は
また雨が降り始めた