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━王都ギルド━
朝
お嬢様と俺はオーガ討伐を終了して王都に戻った。
お嬢様は何時もと変わらず売春宿に直行し、俺はギルドに今回の討伐の終了を知らせに行った。
ギルドに入り受付の前に立つと奥の方から執事殿が現れた。
「ゴーンこっちに来い。」
俺は執事殿の言われた通りに奥の部屋に足を運んだ。
・・・もう絶対説教だ、イヤ説教で済めば良いけど下手すりゃ鉱山か最前線送りだ。
俺は死刑宣告を受けた囚人の様な顔色で部屋の中に入っていった。
部屋の中には執事殿と見た事の無いおっさんが二人苦虫を噛み締めて座っていた。
「ゴーン、こちらは冒険者ギルドのギルドマスターのガイル殿だ。」
俺は右手に座ってる白髪の老人に頭を下げた。
ギルマスは軽く頷くと俺を席に座るよう促した。
「ゴーンもう一人の方について、お前は知らなくて良い。」
そう言った執事殿に俺は頷き左手に座ってる方に頭を下げた。
「済まんな。」
そう言うと左手に座っていた紳士が話始めた。
「ゴーン君、今回の討伐ご苦労だった。
しかしこうなった以上、お嬢様を今の状態のままにしておく事は出来ない。」
不機嫌な顔をする執事殿に向かってギルマスも話出した。
「その通りだ。
さすがにオーガの単独討伐を成し遂げた冒険者をこれ以上新人として扱う訳にはいかん。」
「単独ではない。」
そう言う執事殿に対してギルマスは奴隷は勘定に入らんと言うと俺に向かって頭を下げた。
俺は別に気にして居ないと伝える意味も込めて軽く会釈した。
「ガイルの言う事もそうだが、こちらとしてもこれ以上庇いきれん、既に一部の貴族からお嬢様に対する問い合わせが上がり始めている。」
「・・・して結論は出てるのだろう。」
執事殿の言葉に左手の紳士は頷いた。
「お嬢様には非嫡出子として王籍を外れて頂く。
その上で辺境に領地を賜り辺境伯として1代貴族となって頂く。」
"ふ〜"
執事殿は溜め息をつきながら訪ねた。
「して場所は?」
執事殿の返事を待ってギルマスが話出した。
「西の地に王家からギルドが預かっている土地がある。」
"ガタッ"
執事殿が椅子から立ち上がり二人を睨み付けた。
「まさか迷宮都市とは言うまいな!」
執事殿の言葉にギルマスはその通りだよと答えた。
左手の紳士は、これは決定事項だ、と言い切った。
執事殿はドスンと椅子に腰を掛けると期日はと言った。
「今日より3日後に発表される、出発は10日以内と思っておいてくれ。」
紳士はそれだけ伝えると籍を立ち部屋を出て行った。
ギルマスは申し訳なさそうな顔をしながら部屋のドアを開け我々の退出を促した。
━王都屋敷━
夜
売春宿からお帰りになったお嬢様に向かい執事殿が先程の話をした所、お嬢様の反応は至極あっさりした者だった。
「そう、ではその様に進めなさい。」
それだけ仰るとお嬢様はご自分の部屋に戻って行った。
俺は執事殿の後ろに立ちお嬢様を見送ると、俺も自分の部屋に戻ろうとその場を後にしようとした。
「ゴーンよ、お主はこれからどうする。」
執事殿のポツリを仰った言葉に俺は何と答えて良いか判らず聞き返した。
「申し訳ありません。
仰られてる意味が解りません。」
俺の答えに執事殿は、あぁそれは済まなかったと仰られた。
「建前では在るが今回の討伐の功績を鑑み、お嬢様は貴族に叙せられる。
その戦闘奴隷であるお前にも当然褒美が下される事になる。
奴隷のお前の場合は平民に引き揚げられる。」
俺は執事殿の言葉に呆然となった。
俺が平民になる・・・正直1度も夢見た事が無いと言えば嘘になる。しかしそれがこんな急に・・・俺が困り果てていると執事殿が話出した。
「まぁ後10日以内にこれからの事を考えて起きなさい。」
そう言うと執事殿は部屋を出て行った。
俺はどうして良いか判らず部屋の中で立ち尽くした。
10日後
━王都西門━
早朝
数台の馬車と前後を囲むように数十人の騎士に囲まれた中にゴーンの姿はあった。
同じ馬車にはお嬢様と執事殿が乗り込んでいた。
そんな俺に執事殿が話し掛けてきた。
「ゴーンよ本当に王都を棄てて良いのか?」
執事殿の言葉にゴーンは笑いながら答えた。
「良〜く考えて見たんですけど奴隷じゃない自分ってのがどうしても思い浮かばないんですよ。東の国境はドンパチしてるって聞いてるし西なら良いかな〜て思いまして、まぁお嫌じゃなければこのまま置いといて下さい。」
俺の答えに執事殿はまぁ好きにするが良いと答えた。
「資格としてはお前は既に平民になっとる。」
そう言うと執事殿はそれにしても物好きな、平和な王都を棄てて迷宮都市に行くとはと仰られた。
「執事殿、1つお伺いしたかったのですが迷宮都市とはどんな所なのですか。」
俺の質問に呆れ返った様に執事殿は答えられた。
「なんじゃお前は知らずに来る気になったのか。
迷宮都市とは嘗ての死霊都市じゃ。
遥かな昔な、頭の狂った魔導師が古き国の都で悪魔だか魔神だかを召喚した。
その結果都市の住民は皆してアンデットとかした。
その後は魔物だの悪魔だのの巣になっての、王国とギルドが監視をしてきたのじゃ。
唯一の収入源は討伐した魔物から採れる魔宝石、住んでるのは腕は立つが問題のある冒険者か宝石目当ての商人位だな。」
その言葉を聞いて俺は決心した。
「長らくお世話になりました、此にて失礼します。」
俺の言葉に合わせたように馬車が動き始めた。
それを見ていたお嬢様は笑いながら答えた。
「ゴン、お座り。」
俺はお嬢様の言葉に逆らう事なく黙って席に着いた。




