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━王都西門━
早朝
朝6時の鐘と共に開く王都の門を2台の馬車が進む。
お嬢様と3人組の被害者を乗せて・・・
1週間後
━王都西門━
夕方
「イヤです!お姉様、ここでお別れするなんて。」
「お願いです!もうお姉様無しの人生なんて考えられない。」
「お姉様愛しているの!私をお姉様の奴隷にしてください。」
悲鳴を上げる3人組に向かって車中のお嬢様は笑顔で一言、
「皆さんごきげんよう」
と仰ると馭者をする俺に出しなさいと命令された。
奴隷の俺としては逆らうと云う選択肢は無く馬車を出発させた。
俺は馬車を操りながら今回のうんざりする遠征の事を思い出した。
━王都近郊の村━
午後
王都を出発した我々一行はこれといったトラブルにも遭遇することもなく最初の宿泊地のホテルにチャックインした。
トラブルはチェックインの後に待っていた。
当初はお嬢様が1部屋、3人組に1部屋、そして残りは大部屋の予定だった。
しかしここでお嬢様がごねた。
「私だけ1人部屋なんて寂しいわ・・・それに3人で1部屋は少々手狭でしょう・・・そうだわ、3人のどなたかが私の部屋に来られれば良いのよ、そうねそうしましょう。」
お嬢様は誰の意見も聞かずにそう言って3人組を見た。
言われた3人組も困惑したらしいが我々仕える側も正直慌てた。
えっ最初の被害者もう出るの!
我々は3人組が旨い事言って断ってくれることを期待したが結果はそうならなかった。
3人は数分の話し合いの後、1人の生け贄が前に出た。
「それでは私が甘えさせていただきます。」
そう言って前に出たのはアメリアだった。
アメリアさん中肉中背赤毛のこの少女が最初の犠牲者か、
我々(執事から奴隷迄)は一切気にする素振りも見せずに自分の作業に没頭するふりをした。
━王都近郊の村━
朝
次の日の朝、我々は何事もなく村を後にした。
もちろん俺は1奴隷としてお嬢様の部屋で何が合ったかは知らない。
何故かアメリアが惚けた顔でお嬢様の腕に絡み付き息を荒げているのか、それを見てる残りの二人が心配そうな顔をしてる事とか、何にも知りません、だって俺奴隷ですから。
2台の馬車は何事もなく目的地に向かって進んだ。
━湖畔の別荘━
午後
目的地の別荘に着き俺は馬車のドアを開けた。
中からはそれは愉しそうなお嬢様と口から涎を滴ながらアウアウしてる3人組が出て来た。
お嬢様は俺に私は少し手が離せない用事が出来ました、依頼の方は処理しておいてちょうだい。
そう言うと3人組を引き連れて別荘の中に入って行きました。
俺は畏まりましたと返事をして頭を下げました。
俺が頭を上げると目の前には執事のロバート殿が立っていました。
「ゴーンよ恐らくお嬢様は数日も経てば飽きてお帰りになると仰るだろう。それまでに何とか片付けておけ。必要ならヴァーンを使え。」
そう言うとお嬢様の後に続き別荘の中に消えて行った。
━湖畔地帯森林━
夕方
俺はお嬢様のご指示を受け別荘を後にしコボルトの群れを探しに出掛けた。
太陽の沈む頃湖畔の周囲にコボルトの痕跡を見つけた。
さてこの足跡を辿ってコボルトの巣を見つけるって・・・無理だろう。
俺の仕事は元々墓掘り人よ、暗闇の中、コボルトの追跡なんて出来る訳け無いじゃん。
俺は湖畔を後に別荘に戻った。
「バンさん助けて下さい。」
頭を下げる俺に苦笑いを浮かべながら、
「なぁゴンちゃん前に教えたろ。」
そう言って頭を掻くバンさんに俺は、暗闇の中での追跡なんて無理ですと泣きをいれた。
「ゴンちゃん俺は足をやっちゃってるから戦闘は無理だぜ。」
そう言うバンさんに俺は、戦闘迄付き合ってくれなくて良いんでお願いします。
頭を下げ続ける俺を苦笑いで見ながら、しゃあないなじゃあ行くか、バンさんはそう言って歩き出した。
━森林━
夜
さすが元レンジャーのバンさん、湖畔の周辺にあった足跡からモノの見事にコボルトの集落を捜し出してくれました。
「ゴンちゃん、この集落オスが殆ど見当たらねぇ、おそらくだがこの集落のオスは人間の村でも襲いに行ってるんだろうぜ。どうする?」
どうすると聞かれても俺のする事は決まってるので、殺ったら帰りますと伝えるとバンさんは、オウそれじゃ俺は先戻るわ、そう言って去って行った。
バンさんを見送った俺はコボルトの集落に向かって歩き出した。
コボルト達の集落に突撃した俺は旅行鞄から取り出したメイスを近場に居たコボルトの頭に叩きつけた。どう見ても子供のコボルトだが獲物には変わらない俺はこういう事に関して差別はしない派だ。
その後もあきらかにメスや年よりと思わしき個体を狩っていった。
周囲が静かになった頃、俺はこの集落のコボルトの討伐部位を集めてみた。
う〜ん全然足らない、ここにあるコボルトの死体は29体、依頼は一人頭最低10体
お嬢様+犠牲者3人で最低40体は必要か、後11体は最低でも狩らないと・・・
う〜んどうしよう、バンさんに今から別の群れ探して貰う、足の悪いバンさんに深夜のハイキング2連チャン・・・無理だろう・・・襲撃の最中に逃げた個体も数体いた様だが今からそいつらを探すのもな〜何処に居るの〜出て来て〜って行ったってな〜出てきちゃくれないよな〜も〜ドウシヨドウシヨドウシヨ・・・ドウシ・・・いや、態々探し行かなくてもここで待ってれば狩に行ったオスが戻って来るんじゃね。
さっき逃げた個体がオス共を呼び戻しに行ってくれれば、
待ち伏せか、確か鞄の中にお嬢様がご使用になるあれがまだ入っていたはず・・・殺ってみるか・・・
━コボルトの集落━
深夜
コボルトの群れの長は怒り狂っていた。
狩に出て人の村を襲い家畜を奪い意気揚々と戻っていると子供の個体が泥だらけになりながら走り込んできた。
集落が人に襲われたと、
襲うべき我々が逆に襲われただと、そんな理不尽が許されてたまるか!
コボルトの群れは戦利品をその場に棄てて集落に走った。
集落にたどり着いたらコボルト達が見た物はまさに襲われ殺されようとするコボルトの群れだった。
許さんぞ人間共!
長とコボルトの戦士達は集落に突撃し襲い掛かる人間達と死闘を繰り広げた。
━コボルトの集落━
早朝
コボルトの長が最後の人族を倒した頃、太陽が集落を照らし出した。
その眩しい光を浴びた後、コボルトの長は驚愕の余りその場から動くことが出来なくなった。
自分の槍に貫かれている個体は長の息子だったからだ。
長は自分のした事が理解出来なかった。
自分は間違いなく人族を槍で突いたのに何故息子がその槍に刺さっているのか、誰か教えてくれ!
しかしその質問に答えてくれる仲間はもう居ない、皆地面に倒れ伏しているから・・・
死体の中でただ呆然と立ち尽くす長に覆い被さる様に1つの影が見えた。
長はゆっくりとした動作で振り替えるとそこにはバトルアックスを振りかぶる人族が見えた・・・
はぁ〜上手くいって良かった。
お嬢様の怪しげなお薬を集落中に蒔いちゃったあげく狩に失敗なんて事になったらどうしようかと思った。
俺はマジックバッグにバトルアックスを仕舞うと倒れているコボルトの討伐部位を集めにかかった。
━お嬢様の別荘━
朝
「足らんな。」
執事殿の非情な一言に俺は凍り付いた。
「いえ、よく見てください!確かにコボルトの討伐部位が40個ありますから!」
俺の言葉を聞いた執事殿は溜め息をつきながら言った。
「だから足らんといってるのだ。必要な討伐数は50体、ここには40しか無いではないか。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・えっ?」
「えっ、では無い。此度の依頼を受けた人数を勘定してみろ。」
俺は言われるがままに勘定を始めた。
「お嬢様+犠牲者×3人で必要な数は40個体・・・」
執事殿はその後に次いでそれと数もまともに数えられない奴隷が1人じゃと仰られた・・・
その後数日の間、俺は静かな湖畔の周りを泣きべそをかきながらコボルトを探しまわった。
━王都を走る馬車━
夕方
「ゴンやはり私には冒険者としての狩の方が合っている見たいね、明日からまた狩に出ます。」
お嬢様のお言葉に、畏まりましたメアリーお嬢様とお答えした。
だって奴隷の答えはこれだけだもの。




