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━奴隷長屋ゴンの部屋━


早朝


奴隷にあるまじき事にご主人様に起こされると云う失態を演じた俺を、お優しいお嬢様は叱責されることもなく軽く許すと颯爽と仕事に行こうとされた。

そしてその30秒後に駆け付けた執事殿に捕まり風呂場に連行されて行った。

あのご様子なら小一時間は掛かるな、俺はこの時間を無駄にせぬ様に仕度に掛かった。

顔を洗い歯を磨き支給されているワイシャツを来てネクタイを締める。

革のズボンに革のブーツを履き革のベストを着用、その上から革のコートを羽織る。

道具類を詰めた旅行鞄(マジックバッグ)を用意し終わるった俺は髪を撫で付けながら食堂に入り珈琲で食事を流し込む。


メイドの1人がそろそろお嬢様の仕度とお説教が終わる旨を知らせに来てくれた。

俺は礼を言いながら急ぎお嬢様のお部屋に向かった。


━お嬢様の部屋━



俺がお嬢様の部屋の前にたどり着いたタイミングで部屋のドアが開きお嬢様が飛び出して来た。

「ゴン行きますよ。」

お嬢様は湯浴みをされ清潔な服に剣帯をつけ颯爽と執事殿のお説教から逃げだされた。

「はいっお嬢様。」

俺は返事を返しお嬢様に付き従がおうとした。

そんな俺の背後から執事のロバート殿が声を掛けてきた。

「ゴーン解っておるな?」

執事殿の恐ろしい声に俺は無言で頷いた。

まぁ執事殿からの指示は何時も決まっている。

1つ、お嬢様を遠出の遠征に行かせない。

1つ、お嬢様が何時もと違う行動を執ろうとした際には屋敷に報せる事。

1つ、その身に替えてお嬢様を護り抜く事。

1つ、お嬢様の身をなるたけ清潔に保つ事。(血塗れ汁まみれでフラフラさせない)

1つ、報告連絡相談は小まめにする事。

執事(ロバート)殿との5つの約束


この屋敷に来た時に言い渡された言葉、守りたいけどなかなか守れてない執事殿とのお約束。

特に血塗れ汁まみれでフラフラ・・・


執事殿曰く、この程度の事は出来て当然、

お嬢様の服装の乱れは奴隷たる俺の責任と度々叱られた。

まぁそれでもクビにせずに使ってくれているので俺としては感謝している。

最近では手の空いている時に血塗れにならない戦闘術のご指導迄して下さる・・・


そんな事を考えながらお嬢様の後に従って歩いているとお嬢様が急に立ち止まりこちらを向いておっしゃられた。

「ゴン、たまには昼間の狩に興じてみたいわ!遠征に出ます。」

俺は何時もの条件反射で畏まりました、と答えてしまった。

・・・すいません執事殿、だって奴隷の返事はこれだけ何だもん、などど心の中で言い訳しながら俺はお嬢様に1つ提案をした。


「お嬢様それでは冒険者ギルドに赴き遠征の依頼があるかを確認されてはいかがでしょうか?」


俺の提案に対しお嬢様は

そうね許可します、とお許しを下された。

俺は深々と頭を下げ感謝の意を示すと門前に待機していた馭者のバンさんに行き先の指示を出すと共に門番の1人レンさんに急ぎ執事殿に繋ぎを取るように目配せをした。

門番の方も察しが良く軽く頷くと早速執事殿の元に走って行った。


お嬢様が馬車にお乗りになり、俺が馭者席に着く頃、執事殿が素晴らしい速さで駆け付けて来た。

「お嬢様此度のお仕事についてですが」

執事殿がそうお声を掛けた瞬間、お嬢様が馭者に出発をお命じになった。

馭者のバンさんは、逆らう事なく言われるがままに馬車を走らせた。


━冒険者ギルド━



お嬢様の後に続いてギルドの中に入って行くと私は素早く周りを見渡した。


ギルド内にはすでに何人もの冒険者達がたむろしていた。

こちらを見てすぐに目をそらす冒険者達、彼等については問題ない。

お嬢様の御身分を理解しているベテランだ。

次にこちらの存在に気づかず依頼の張ってあるボートを見ているパーティー達、これも問題ない。

彼等は新人だ、たとえこちらにちょっかいを掛けようとしてもお嬢様の迫力に圧倒されるだけだろう。

問題は依頼表を見ながらこちらを値踏みしている奴等だ。

恐らく他の街からの流れ者、王都で一旗上げようと力み返ってるたぐい、舐められたら終わりとばかりに周りを睥睨してる。あの手の連中が一番不味い。

俺の予想通りと云うか、思ってるそばから馬鹿共が近づいて来た。

「なぁお嬢ちゃんここは冒険者ギルドだぜ、来る場所を間違えてないかい。」

「そうそうそれとも何か困り事かなぁ、何ならオレたちに依頼してみるかい。」

「まぁ俺達はその辺にいるジャリタレ共とはちっとばっかし値段が違うけどな、またお姉ちゃんなら身体で払うっても・・・」


またお約束を・・・俺が頭を抱えそうになっている前でお嬢様は馬鹿共を華麗にスルーし掲示板を眺めだした。

イカン!お嬢様が危ない依頼表を手に取る前に何とかしなくては!

俺は焦りながらお嬢様に近付こうとした時、華麗に無視された馬鹿共が騒ぎ出し有ろう事かお嬢様のお身体に手を掛けようとした。

「このアマ舐めてんのか!」

「こっち向け!」

「テメェふざけるなよ!」

あぁくそっこの馬鹿共が!

俺はまずこいつらを処理するために動いた。

背中を向けてる中で1番近場にいた男の延髄に拳を叩きつけた。

拳をくらった馬鹿がバタリと倒れるとさすがにその音で残り二人がこちらを振り返った。

何か言おうとしてたがそんな事に耳を貸す余裕はこちらには無い。

向かって右手の馬鹿の腹に拳を突き刺し膝を付いたそいつの面に蹴りを入た。

3人目の馬鹿はこの状況に慌てたのか喚きながら腰の剣を抜こうとした。

コイツはまったく持って本当の馬鹿だ!

何処のギルド内でも刃物沙汰はご法度だろうに、

俺は半ば呆れながら一気に間合いを詰め、抜き掛けた剣を手で押し込みながらそいつに言った。

「止めとけ、そいつを抜いたらお前さんギルドの職員とベテランに、よってたかって殺されるぜ。」

俺の声に少しだけ冷静さを取り戻したのかそいつはビクリとなって周りを見渡した。

目を細めて成り行きを見守ってるギルド職員とベテランの冷たい視線をにやっと気づいたらしい。

「ここは何も無かったかの様に仲間連れて出て行きなよ、なぁ解るだろぅ。」

俺の優しい提案に馬鹿は軽く頷き了解を示した。

俺はそいつからすっと離れるとお嬢様に目を向けた。

そんな俺にお嬢様はこれにしますと1枚の用紙を見せた・・・遅かったか〜!

俺は恐る恐るその依頼表に書かれている内容を見た。


依頼

コボルトの間引き。王都から西に2日程歩いた湖畔の別荘地に最近コボルトが大量発生した、これの処理をお願いします。最低でも一人頭10頭以上


・・・執事殿すいません。


俺は執事殿に心の中で謝りながらもお嬢様が選んだ依頼が存外まともな物で在る事に少々面食らった。

お嬢様の事だからドラゴン退治何て言い出したらどうしようかと思った。。

もちろんドラゴンに殺さる前に俺は執事殿に殺されるだろうが。

俺はお嬢様に頭を下げながら、ではこちらの依頼を受注して参りますと言った。


お嬢様はただ無言で頷づかれた。



俺は、お嬢様から渡された依頼表を持って行き、受付にていたギルド職員に手渡しながら文句を言った。

「なぁ遠征になりそうなものは剥がしといてくれよ。」

俺の言葉に反して職員の奴はこう言ってきた。

「あれでもヤバそうな案件は大慌てで剥がしたさ。それともドラゴン退治の遠征依頼が良かったか?」

俺は溜め息を吐きながら礼を言った。

「いや、感謝してるさ、ありがとうよ。」

俺の言葉にギルド職員は

「感謝するなら馬を跳ばして駆け込んできた執事殿に云うんだな。」

俺はこの言葉を聞いた瞬間にギルドホールに目線を飛ばした。

あぁ受付の奥の方で鋭い目でこちらを睨んでる執事殿発見。

なんか目が光ってて怖いんですけど・・・

俺が執事殿にアイコンタクトをとろうとしたら執事殿が指を指して何かを訴えた。


俺は慌ててお嬢様の方を振り向くとそこには知らない冒険者パーティーと愉しそうに話をしているお嬢様が見えた。



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