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━迷宮都市舘━



今日これから新たな迷宮都市の領主になるお嬢様とこの都市の管理運営してきた首脳陣達の顔見せが始まろうとしていた。


何故か俺はそんな場所にお嬢様の従者として参加するはめになった。


お嬢様を始め幾人もの癖の強そうな人々が席に着いた頃を見計らって執事殿が話始めた。


「ご領主様、此方には見えられている方々がこの迷宮都市の参事会の方々です。」

執事殿の言葉を聞いて席に着いていた方々が起立して頭を下げた。

「そしてこの度迷宮都市の領主に就任される事になられた、メアリー.フォン.ルーデル辺境伯で在らせられる。」

お嬢様の態度は相変わらず平常運転の様で席を立つ訳でもなく軽く頷くのみだった。


「では、まずは一番左からこの都市の商業ギルドの長を為されているマルコ殿、次に冒険者ギルドの支部長をしておられるガイウス殿、そして今後、この街の警備を引き受けて下さるマックス殿、」

それまでお嬢様は紹介された方々に軽く頷いて見せていたが、マックス(糞虫)殿が呼ばれた際には頷いた後、執事殿を睨み付けた。

執事殿はまったく意に介する事なく話を続けた。

その後も神殿の神官長だの何だのと幾人かの挨拶が済むと執事殿が場所の変更を告げた。

「ではこの後は皆様でご会食の運びになります。」

執事殿の言葉を聞いたお嬢様が今日初めてお言葉を挟まれた。


「まだ一人、挨拶が済んでない方がいます。」


お嬢様はそう言うと俺の方に振り返り、命令を下した。

「ゴン、急ぎ蜘蛛の巣に赴きマダムを連れて来なさい、丁重にね。」

俺はその言葉を聞き、畏まりましたご主人様と答えた。

お嬢様の言葉に何人かの人間が騒ぎだしたが俺はそれを無視してその場を離れた。



━蜘蛛の巣━



歓楽街に入り、人伝に場所を聞きながらやっとたどり着いたら娼館蜘蛛の巣は存外こじんまりとした外観をしていた。

正直これが闇ギルドの元締めの店とは思えないが、奴隷根性の抜けない俺は命令された事を唯々諾々とおこなうのだった。

蜘蛛の巣の玄関を開けると一階のラウンジにいた妙齢な女性が話し掛けてきた。

「いらっしゃい、折角来てくれたのに御免なさいね、まだ営業して無いのよ、」

俺は背筋を伸ばし、ひたすら失礼の無い様に話し始めた。


「お休みの所大変申し訳ございません。

私はこの度この迷宮都市の領主になられたルーデル辺境伯爵の従者をしているゴーンと申します。

主より此方のマダムを参事会にお招きせよとの命を言い付かって参りました。

何卒マダムにお取り次ぎを願います。」

俺としては精一杯の丁寧さで話した積もりだが目の前の女性がどう思ったかは判らなかった。


俺が頭を下げて口上を述べていると、いつの間にか何人もの男達がラウンジに集まって来ていた。

成る程これはヤバそうな店だ、俺一人じゃあっとゆう間にバラされちまうな、そんな事を思っていると、俺の口上を聞いてた女性が少々お待ち下さいと言って、部屋を出て行った。


それから10分程経った頃先程の女性と伴に一人の老婆が俺の前に立ち声をかけてきた。

「お待たせしました。私がこの店のマダムでございます。」

俺は先程と同じ口上を述べた後にこうつけ足した。

「本来なら最初からお呼びするべき所なれども当方の手違いにて此方に連絡が行かなかった模様です、ご主人様からは丁寧に謝罪して足を運んで貰う様にとの事でした。」


俺の言葉を聞いた老婆は了解致しました。

こちらからは私とここにいる女性の二人で参りますと返事を貰えた。

「畏まりました。

こちらの店の前に馬車を待機させております。お支度の方は宜しいでしょうか?」

俺の言葉に老婆は横にいる女性に目を遣り結構ですと返事をした。


━領主の舘━


午後


何とかお務めを果たせた俺は先程の二人を案内して舘に戻って来た。


舘に入るとそこには執事殿が立っていてお待ちしておりました、ご案内致しますと仰った。

そうしてお二人を案内し、その場を離れていった。


俺はこれにてお役御免とばかりに頭を下げ、使用人食堂に向かった。


━使用人食堂━


午後


休憩しながらお茶してる俺の前に執事殿が飛んできて頭をひっぱたいた。

「イタッ何するんですか、お使いはきっちり果たしましたよ。」

俺の苦情を無視した執事殿はマダムに着いて根掘り葉掘り聞いてきた。

俺は旅の商人殿から聞いた話をそのまま伝えた。

執事殿はう〜んと唸ると俺に質問してきた。


「ゴーンよ、お嬢様は、今マダムと二人で話をされている。それもご自身の部屋でだ。」

俺は執事殿が何を心配してるのかと思い笑いだした。


「執事殿、幾らなんでもそれは無い。

お嬢様の好みは若い女性でしょ、あんなご老人とナニがどうなる訳もない。」

俺の意見を聞いた執事殿はもう1度俺の頭を叩いて言った。


「お前が丁重に連れてきた老婆はマダムではない、本当のマダムは老婆と伴にいた女性の方だ。」

俺は目が点になり先程の女性の容姿を思い出していた。

ギリギリだけどお嬢様の趣味の範囲に入ってるかも・・・

俺は執事殿の方を見て一言、答えた。

「どうしましょう」


結論としてお嬢様とマダムの間には何らかの協定なる物が出来たらしい。

それがどの様な物かは発表されなかったが、

他の参事会の方々やこの街にいる怪しげな方々は納得されたようだ。


ただ俺が知っている事と云えば、お二人が丸一昼夜部屋に閉じ籠りドッタンバッタンされ続け、やっと出てきたマダムが息も絶え絶えになりながら蜘蛛の巣に帰って行くのをお見送りした事だけだった。


後日


お嬢様からは、

「まぁたまには年上も良いものだ・・・」

と聞いたが俺は何の事だか分からない振りをした。



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