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━迷宮都市━


昼頃


「見えますか、彼処に見える砦が迷宮都市の入り口です。まぁ実際には迷宮都市の外に作られた城塞都市なんですけどね。」

商人殿の言葉にお嬢様と俺は頷いて見せた。

まったく持って商人殿の知識と経験は素晴らしく、お嬢様もこの商人殿に対しては非情に礼儀正しく接しておられる。

それにしても此処までよく無事にたどり着けたもんだ。

俺はこの1週間の出来事を思い出していた。


基本砂漠の移動は夜行うが、このキャラバンの商人達は昼間も構わず移動する。

俺はその事を商人殿に質問したら、商人殿はあっさり言われた。

「この砂漠では昼間の方が魔物が釣れやすいからですよ。」

最初は商人殿の仰ってる意味が解りませんでしたがその意味は昼を過ぎた頃になるとはっきりしました。

「左手8時の方向にに魚影在り!」

見張りの冒険者の声を聞くと回りにいた冒険者達は槍を片手に大型の馬車の上に登った。

お嬢様は周りの動きを見ると同様に屋根に上がって行きました。

俺としてもここに居る訳にもいかずつられて屋根に上がって見ました。

屋根の上では襲い来る砂漠ザメと冒険者の死闘が繰り広げられていた。


モタモタしてる俺にベテランの冒険者パーティから声が掛かった。

「そこの新人、馬車にジャンプして来た奴から刺し殺せ!」

「連れの姉ちゃんを見倣いな!」

俺は連れの姉ちゃん事、お嬢様を見るとそれは見事な槍裁きで飛び掛かって来た砂漠ザメを刺し殺しておられました。

俺は溜め息を吐きながらマジックバッグからバトルアックスを取り出すと襲い来るサメに叩き付けました。

小1時間程もバトルアックスを振るっていると、砂漠ザメの襲撃はパタリと止みました。


冒険者の皆々はやっと一段落だとばかりにその場に座り込み水を飲み思い思いに休憩を取り出しました。

俺も正直ヘトヘトになりながら屋根に備え付けられている蛇口から水を汲むとお嬢様に差し出しました。

お嬢様は黙って受け取ると実に美味しそうにそれを飲まれました。

俺はそれを見届けると自分の水を汲みに動きました。

冒険者が水を飲み休憩しだして10分程経った頃キャラバンの商人達が動き始めました。

自分の馬車の周りで死んでいる砂漠ザメの鰭や皮など使える部位を剥がし始めたのです。

俺はその光景に驚いていると、先程指示をくれたベテラン冒険者のパーティが教えてくれました。

「この手のキャラバンはこうやって獲物を確保しながら都市の間を巡るのさ。」

「まぁ大商人や兵隊何かは昼間は砦に居て夜間に動くんだけどな。」

「こういった中小の商人が集まっているキャラバンはどこもこんな物だ。」

冒険者達の話を聞いているとお嬢様と契約をした商人殿が登ってきました。

「こんな者で悪かったですね。」

そう言って他の冒険者を牽制した後、こちらを向いて話し掛けてきた。

「お二人とも良く殺ってくれました、これからもこの調子でお願いしますね。」

そう言うと商人殿は屋根から降りてまたサメの解体に戻って行った。

俺は商人殿に頭を下げながらお嬢様の様子を伺うと満更でもないご様子でした。


それから1日に2〜3回の襲撃を受けながらキャラバンは迷宮都市を目指しました。


そんなバトルまみれの旅の思い出の中でも特に思いで深かったのは、砂漠ザメとやりあってる時に見た砂漠蛸の巨大な姿でした。

お嬢様が砂漠蛸に槍を投げ付け様とするとベテランが止めに入りました。

「砂漠蛸は旅人の守護神だ、決して攻撃しちゃならねぇ。」

確かに良く見ると砂漠蛸が襲っているのはサメだけで人間には手出しをしていません。

砂漠蛸はサメを全滅させると静かに砂の海に消えて行きました。

「良いか、砂漠蛸は人を襲わない、蛸の狙いは人を襲うサメの方なんだ。そして蛸は人に大いなる恵みをもたらしてくれる。」

俺が不思議な顔をしていると、商人達が飛び出してきました。

商人達は我先に蛸が襲ったサメを抱えて梱包し始めました。

「蛸はサメの身は食わずに身体の水分だけ吸うんだよ。」

「そして吸われてサメはミイラの様な状態になる。」

「その癖あの状態になってもまだサメは生きてるんだぜ。」

「勿論ピクリとも動けないけどな。」

「そしてあの状態のまま他国に売られるのさ。」

「何でもどこぞの国では薬として珍重されていて、すんごい高値で売れるらしい。」

そんな事をベテラン冒険者達は話していると、我々の雇い主である商人殿がやって来て、今日の分はボーナスを弾みますよと言って、去って行った。

冒険者達はその言葉を聞いて笑いながら言った。

「なぁ砂漠蛸は旅人の守護神だろ」


俺はそんな思いでに浸りながら迷宮都市の門を見詰めていた。


━迷宮都市━


夕方


我々のキャラバンが迷宮都市の外門を潜った頃お嬢様が商人殿に質問をした。

「のう、商人殿教えて欲しい事があるのだが?」

お嬢様の質問に商人殿は笑顔で答えられました。

「おや、お嬢ちゃんが質問かい、私で答えられる事かな?」

そう問い返す商人殿にお嬢様は訪ねた。

「この街の実力者について。」

「フム、こいつは偉く直球な質問だが、まぁ気持ちは解らなくもない。お嬢ちゃんが心配してるのはこの街の支配者が変わる事についてだね。」

そう聞かれたお嬢様は軽く頷いた。

「そう、今までの迷宮都市は冒険者ギルドと商人ギルドが支配している街だった、そこに今度は新しく貴族様がやって来られる、それも拠ん所ないご身分の方らしい。しかしね、この迷宮都市にはもう一人外しちゃならないお方がいる。」

商人殿の言葉にお嬢様は真剣な目で続きを促した。

「それはマダムだ。」

「マダム?」

俺はついお二人の会話に割り込んでしまい慌てて謝罪した。

「ハハハッそんな気にする事はないさ。マダムの名前は誰も知らない。皆からそう呼ばれているのさ。」

「その方はどう重要人物なのです。」

お嬢様の言葉に商人殿は話を戻した。

「マダムはこの街の裏を仕切られている方さ。表看板は娼館蜘蛛の巣の経営者、裏に回れば闇ギルドの元締めと言われている。」

俺はゴクリと、唾を飲み込んだ。

それを見た商人殿はまたハハハッと笑いながら言った。

「まぁ今度のご領主様がその辺の事を理解して行動されれば良いんだがね、

此ばかりは我々の様な弱小商人には判らない。」

そんな話をしているとキャラバンの馬車は停止をした。

「うむ、何とか今回も無事にたどり着けた様だ。君ら二人はこの後どうするね、もし良ければ私の元で契約して欲しいのだが。」

そう答える商人殿にあのお嬢様がなんと頭を下げて礼を言った。

「商人殿、お気持ち感謝する。しかし私達は行かねばならぬ場所が在るのだ。」

そう言うとお嬢様は商人殿に手を差し出した。

「そうですか、残念ですが仕方在りません。」

そう言って商人殿はお嬢様の手を握りしめ握手を交わした。


商人殿と別れた我々は迷宮都市の中を歩き出し、僅か数分後には執事殿に捕まった。


━迷宮都市舘━



「ゴーン貴様が着いていながら、何故この様なバカをやらせた。」


執事殿の癇癪をぶつけられて私は頭を下げながら平民として反論してみた。

「しなしながら執事殿・・・」

「だまらっしゃい!」

執事殿の一喝に瞬時に白旗を上げ、ひたすら頭を下げ続けた。

「今回の出来事でマックス様は責任を感じ騎士をお辞めになろうとしたのだぞ!」

そんな事言われてもな〜などと俺が思っていると執事殿はとんでもない爆弾を放り投げて来た。

「これでお嬢様とマックス様との婚約も破談だ。」

その言葉に対して俺より先にお嬢様が反応した。

「何だと爺、あの糞虫が私の許嫁だと〜貴様〜影でその様な陰謀を企んでいたか。」

お嬢様が殺気を全開にして目を光らせて近付いて行くと執事殿も気合い全開でお嬢様に反論した。

「このまま行けば、お嬢様は確実にいかず後家で終わってしまいます。それでなくても評判の悪いお嬢様に来た数少ないチャンス、このロバートの努力が分からないのですか!」

「分かるかこの戯け者が、股に醜い尻尾を生やした者に私が興味を持つと思うてか!私の心を動かすなら美少女の100人でも連れてこんかい!」


その後数時間に及ぶ二人の言い争いに付き合わされた俺は、争いの無い平和な世界を夢想せずにはいられなかった。



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