第6章
竜の翼は直に世界の果てに辿りつきました。
世界の果ては木も草もなく山々は太古の昔のように力をもち皆怒りに満ちていました。
毒の煙がたち込め赤いマグマが血潮のように流れ空には重い雲が陰気に空を多い尽くしています。
竜は、地上に降り咆哮しました。
「我は遠き国の王である!!!古来より生きるお前たちの宝を頂きに来た!!!」
山々が、怒りに震えました。
「お前の噂は聞いている_____竜王がお前の話をしていたからな・・・帰るがいい愚か者めが・・・お前など私にしてみれば赤子も同然____帰るがいい。思い上がるな____命を落とすことになるぞ」
一番大きな山がいいました。きっとこの山が最初に生まれた山なのでしょう。雄大さとマグマに彩られた怪しい美しさに暫し竜は魅了されました。
竜は、飛びました。
山々は怒り狂いマグマで焼けた熱い石を竜に投げつけました。何百もの熱い石が大砲のように飛んできます。もちろん避けきれるはずもありません。しかし、竜は恐れず進み続けました。
一つ、二つ、三つ_____竜は石を避けました。しかし、四つ目は竜の大きな翼に当たりました。
竜は痛みに咆哮しました。
しかし、竜は進み続けました。
一つまた石が当たりました。ごきりと不気味な音が体の中で響きました。どうやら骨が折れたようです。
しかし、恐れも憎しみもなく王女との短くしかし楽しい思い出だけが頭を駆け巡りました。
最初にあった時の竜を睨みつけるように竜を見据えた王女の顔が思い浮かびました。
笑っている王女の顔を思い浮かべました。
竜の翼の下でぐっすりと眠っている王女の顔を思い浮かべました。
歌を歌ってくれている穏やかな王女の顔を思い浮かべました。
自分の為に泣いてくれた王女の顔を思い浮かべました。
最初に生まれた山に近づいてきました。
しかし、竜の片翼はひしゃげて飛びにくくなっていました。身体の骨は軋み、片方の目も見えません。
でも、竜は気にしませんでした。
竜は、山の何者も溶かす火の中に飛び込みました。最初に生まれた山が叫びます。
炎の中は熱く____いくら強い竜の鱗でも段々と溶けていきました。竜は痛みに咆哮しましたが進み続けました。竜の鱗が溶け肉が焼けようともマグマを切り裂き進んでいきます。
きっと死ぬまで止めないでしょう。竜は、どんどんどんどん進み続けます。
とうとう光輝く石を見つけました。そして、竜はすばやく石を取ると空へまた飛びました。
竜が石を山から取ると山は死にました。マグマは固まり毒のガスは消えました。重い暗い雲は消え青々とした雄大な空が見えました。
竜は、倒れました。
手にはしっかりと石が握られています。石は、ダイアのように輝き神聖な光を放っています。この輝きを見せたら王女はどんな顔をするだろう。
竜は笑いました。きっと驚く____そう思うと竜は最後に王女の顔が見たくて見たくて仕方ありませんでした。今から戻ればきっと日の出あたりには王女のいる城へ辿りつくでしょう。
竜はぼろぼろの翼を動かしました。痛みで何度も血を吐きました。でも、平気です。もう直王女に会えるのですから。
王女は、自分が死んだら泣いてくれるでしょうか。竜は考えました。きっと姫は自分を殺すでしょう。そして、優しい姫は必ずこの醜い竜の為に涙を流してくれるでしょう。
竜は、早くつけるように翼を急がせました。
もう直夜が明けてしまいます。