第2章
その日の夜__少女は初めて塔から出て月を見ました。
そして__初めて涙を流しました。
「夜の世界を照らす男神よ___父なる月よ____どうか、どうか・・・この声を聞いてくださいまし、私は明日竜王子の所へと向かいます。私はきっと殺されてしまいます。どうか、どうか助けてください」
そう言うと王女は美しい涙を一つ流しました。
その美しい涙に心を動かされたのか、月が王女に言いました。
「哀れな美しき王女よ。私の声を聞きなさい_____竜王子は満月の夜、迎えた王女を食べてしまうだろう。だが、私には何もしてあげることが出来ない」
王女は、その話を聞いてまた美しい涙を一つ流しました。
その美しい涙に心を動かされたのか、また月が王女に言いました。
「哀れな美しき王女よ。私の声を聞きたまえ___竜王子にこう願いなさい。月と太陽の間に咲く花が欲しいと。きっと竜王子はあなたの最後の頼みといえば聞いてくれるでしょう」
王女は首を傾げました。しかし、月がそういうのできっと大丈夫なのでしょう。
最後に月がいいました。
「貴方の知恵があればきっと乗り越えられるでしょう」
王女は月にお礼をいいました。
次の日王女は竜王子の待つ国へ向かいました。
満月が真上にあがる頃に王女は竜王子の国に着きました。
竜王子の国はそれはそれは豊かでその国の人々は美しい王女を出迎えました。
大人たちは嬉しそうに歌います。
__________今宵も王女がやって来た
_______________なんて美しい王女だろう
きっと今度は大丈夫_______立派な后になるでしょう。
それとも、一つ墓標が立つか_______
でも、大丈夫_____また次の満月には新しい王女が来るのだから
子供たちが冷ややかに歌います。
________今宵も王女がやってきた
呪われし竜王子の后となるために_______
でも、なれるはずがない_______
今宵の満月の夜に_____________
きっと王女は腹の中_______________
次の満月には新しい王女がくるだろう
王女は、城へつくなり美しいドレスに着替えさせられ寝室へと連れていかれました。
寝室には大きな天蓋のベットがありました。大きな天蓋ベットの上には大きな竜が悠々と寝転んでいました。
王女は、竜を始めてみたので最初見た時声を上げそうになりました。しかし、必死で抑えしっかり顔を上げ竜を見つめました。
竜は、感心したように言いました。
「ほお_______我が忌まわしきこの姿を眼にしても悲鳴一つ__震えることなく立っていたのは何処の国の王女にもいなかったぞ」
王女は、笑みを見せながらゆっくりと近づきました。
「私の命を奪うお方___そして、この豊かな国の王であらせられるあなたに最後のお願いがございます」
竜は、長い尻尾を揺らしながら言いました。
「この私を恐れぬそなたの勇気に答え特別に聞いてやろう______」
王女は、竜によく聞こえるように近づきました。
美しい王女は竜が恐ろしかったのですが、王女は勇気を振り絞り言いました。
「はい、太陽と月の間に咲くといわれる花があるといいます。私は昔から高い高い塔に住んでおりましたゆえ世界をしりません。ですから最後に見てみたいのです」
竜は、目をピクリと動かして鼻をならした。
「勇気のある王女よ______別の願いはないのか」
王女は首を振った。
「私の命を奪うお方___そして、この豊かな国の負うであらせられるあなた、これ以上の願いはありません」
「我が后となるものよ____そして命短き者___お前の願いとならば国一つとて月が地上に消える前に滅ぼしてやろう______我は王なるぞ?なんだって叶えてやろう。しかし、お前の言っている花を見たものは誰一人といない・・・そんな愚かな望みは止めよ。他の望みはないのか_____」
「いいえ、ありません______」
王女はきっぱりと告げました。
「偉大なる夜の支配者___そしてこの国の王であられる方____貴方に出来ないことなどないはずです」
王女があまりにも熱心に言うので竜は仕方なく翼を広げた。
「我が后となるものよ____そして命短き者___月が大地に沈む前に帰ってくる。そして、我はお前を食らうだろう」
そういい残すと竜は、大きな翼を広げ空へ飛んでいきました。