死神と少年
少年トムのお父さんとお母さんは流行り病で死んでしまった。
だから、トムはお婆さんのお家で暮らしている。
トムは悩み多き年頃だが今頭を悩ませているのは二つだった。
一つは今日の夕飯でお婆ちゃんお得意のプルーンのワイン煮が出てくるかということと
もう一つは皆から馬鹿にされることだった。
トムはチビでドジで男の子のくせに力もなかったので皆から馬鹿にされていた。
ある日__トムは指をさして言った。
「死神がいるよ」
うそつきトム____チビでドジな親なしのトム_______
皆___少年トムを笑ったが一人だけ笑っていない者がいた。
死神だった。
黒いマントを被った死神は驚いてトムを見た。
トムはたいして驚きもせず死神を見つめた。
死神が言った。
_______小僧、何故驚かない?
「だって鎌を持っていないもの」
トムは淡々と言った。
死神は自分の手を見つめた確かに鎌を持っていなかった。
________鎌を持っていたなら小僧は驚いたのか?
死神は言った。
トムは答えた。
「どうなんだろう?______多分驚いたんじゃないのかな」
二人は黙った。
死神は姿を人間に見られたことがなかったので少し困惑していた。
しかし、トムには自分を怖がっている様子はないし何より落ち着いているようにも見える。
何百年_____何千年と生きてきた死神にとってこんなことは初めてだったし、何より自分の姿を見られれば人間は悲鳴を上げるだろうと思っていた。少し腹立たしいように思えた。
だから、少しこの人間を脅かしてやろう。
死神は、深く被った黒いマントの下で笑んだ。
_________おい、小僧
______________実はなお前の魂を貰いに来たんだ。
こうして物語は始まった。
それは、幸せとはなんなのか探すための物語_____
次のお話・・・全部書けるといいな。