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悪魔はボロボロ

作者: 雨風修羅

ディアボロは、ボロボロだった。

何せ悪魔は神から愛されていない。いや、正確には神はすべてを愛する愛そのものであるから、悪魔自身の悪行によって、神から遠ざかっているのであった。

悪魔は不運であり、誰かを陥れるほどに、誰かを呪うほどに、自身が不幸になっていった。

どうしたものか。悪魔は考えた。誰かにとり憑くのは楽しいし、誰かをどん底に突き落とすのも楽しい。だが、自分が不幸になる。人を呪わば穴二つ。自分で撒いた種は自分で刈り取らねばならない。悪魔は悪魔であることで自分自身の精神を追い詰めていた。

そうだ。善人になればよい。善人の皮を被ればよい。どこまでもエゴイスティックに悪魔は決断する。

悪魔はその日から善人のふりを始めた。神からの愛を騙し取るために。悪魔にとって、世の中で一番必要なものは金ではない。憎悪や殺意などの負の感情でもない。神からの愛である。神の被造物である以上、愛は必要なのである。

困っている人に道を教え、飢えている人に食べ物をやり、迫害される者たちを避難させた。悪魔は自分のためだけに、他人のために善行を施す。

やがて彼の中で何かが変わってゆく。習慣が習性に、習性が原理へと。悪魔は自分の心が清らかになっていくのを感じた。嘘で始めたことなのに、詐欺のつもりでしていたことなのに。悪魔はいつしか本物の善人になりつつあった。

よし、ここらでひとつ、何か世の人々のために大きな善を成そうではないか。気分のよくなった悪魔は思い立つ。しかし方法が思い付かない。悪魔は考えに考えた。

そして、悪魔は自ら命を断った。自分がいなくなればよかったのだった。何せ悪魔は悪魔だった。

悪魔はこのまま無になったのだろうか。それとも天使に生まれ変わるのだろうか。それは神のみぞ知ることである。

いずれにせよ、悪魔は矛盾の存在であり、自己破壊者である。いつもボロボロなのは間違いがなかったのであった。

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