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1時間目 -(4)


 とりあえず自己紹介を終えた俺らはいつも通りに授業へ入ることになった。

「授業って俺、何やればいいんだ?」

 不安になり俺がぼそっと訊くと相変わらずの冷たさで答えた。

 てか、ため息とか吐くなよ。

「まず私がやりますので、その後は真似してやってください」

「真似って、俺そもそも何も出来ないんだけど」

「技の発動が必要になるのは私がやっておきますよ。先生……さすが無能ですね」

「ちょい待て。さりげなく後半ぼそっと酷いこと言ったよな!?」

「気のせいですよ。空耳です」

 こいつ、最初に会った時とキャラが違いすぎだろーが。

「それでは授業を始めますよ」

 ミルニィはそう言うと屋外に移動となった。



「最初は魔法の鍛錬です。奥にある的に向かって自分の得意とする攻撃魔法をぶつけなさい」

 ミルニィがそう言うと、生徒たちが揃って「はい」っと返事をした。

 普通に素直のところとかメインキャラっぽくなくて困る。

 こういうのはちょっと反抗的で「私は鍛錬とかそーゆーの必要ないので」とか言うとキャラが立つんだけどなあ。

「先生どうかしました?」

 不意にミルニィに顔を覗かれる。

「い、いやあ、なんでもない」

 いきなり近くにいるのは反則だからやめてくれ。



「なるほどな」

 だいたいどういう練習かはわかった。

 多分これは魔法の命中率を上げるとかなんだろう。

 てか、想像してたよりけっこうシンプルな練習なんだな。

「始めますよ」

 そう思っていると、見本としてミルニィが一番奥にある的に向かって右手を出した。

 何やら詠唱を始めているが、早すぎて何言ってるのかさっぱりだ。

 そして、詠唱を終えたミルニィは右手から炎の塊を出し、矢の形に変える。

「はッ!」

 ミルニィが少し雄叫びを上げると炎の矢は一直線に飛んでいき、見事的の中心に当たった。

「す、すげえ……」

 思わず俺はそんな言葉を口にしていた。

 やべ、今の聞かれちゃ不味かったな。と思い俺が後ろを振り返ったが誰も聞こえてなかったようで、みんな目を輝かしていた。

「すごいすごい!」

「さすがですね」

「…………(こくり)」

 するとミルニィ先生は当たり前のような表情をして3人の生徒に告げた。

「次は君たちの番だぞ」

 こいつ絶対当たった時ドヤってただろ。

「どうしました先生?」

 こういうタイプの人間は前日に練習してやがる。



 まぁ大体わかった。

「こいつらは当たるけど威力に差があるんだな」

 てか、当たるのかよ。普通こういうのってすげーはずしちゃったけど、威力がすごいかったから才能あるな。(ぼそり)

 みたいな事言うシーンじゃねえの?

 何普通出来ちゃってんだよ!いや、出来ていいんだけどさ。

「はい。ですが魔法が合う合わないの問題もありますし、威力自体にも問題はないので大丈夫じゃないですか?」

 そう。全員の威力自体も実は悪くはない。

 普通に大丈夫だ。

 だが、普通なんだよ。




 2時間になって俺らは教室に戻った。

「次は魔力コントロールの授業だ。みんな席から立って」

 ミルニィがそう言った。

 横に立つ俺は何がなんなのかわからず、ミルニィの耳元で生徒に聞こえないように囁いた。

「あのさ」

「きゃっ!」

 俺が少し言葉を発すると副担任は可愛らしい声を上げ顔を赤くさせた。

「い、いきなりなんですか!」

「なんですかはこっちだよ。大きな声出すな。てか、ちょっと耳貸せ」

 そう言うとミルニィはまだ顔に熱を残して俺の方へ近づいた。

「コントロールって何やるんだ?」

 俺が聞くと当たり前のようにミルニィが答える。

「魔力コントロールっというのは威力を上げる鍛錬みたいなものですよ」

 へ〜っと俺が相槌を打つ。

「まぁ見ててください」

 と言い、ミルニィは生徒の方へ向き直った。

「それでは私が見本を見せるから。みんな見るように」

「またミルニィ先生〜?セイタ先生はやらないの〜?」

 ちょっと、いや、かなり天然入っているサリが余計な事を言う。

 この馬鹿また余計なことを。

 するとミルニィは俺の方を向いて目をパチパチさせモールス信号っぽいのを送ってくる。

『ど・う・す・る・ん・で・す・か・?』

 なんでこの世界にそれあるんだよ。

 と思いつつ返事する。

『し・ら・ん』

『私・も・知・ら・な・い』

「ですので任せます」

 おい待て!お前面倒くさがって口使っちゃってんじゃねえよ!

 っと心の中で突っ込んだが、もちろん意味なく……。

「ったく」

 仕方なく俺が言うことになったようだ。

 あの副担任、面倒くさいことは全部俺に投げるよな。

 性格悪いにもほどがあるだろ。


「実は、俺は……」


 考えろ、今後この類の質問が来ないようにするには……どうすればいい?

 本当のことを言う。……ダメに決まってるだろ!

 力を解放すると、君たちに危害を加えてしまうかもしれないからな。……なんか中二病臭いし、ミルニィに絶対蔑まれる。

 み、ミルニィがどぉ〜しても自慢したいって言ってるからしょぉお〜〜がないだろぉ?…………殺される。


 他に、何かねえのかよ!?

 っと頭を抱えそうになる俺はふと思いついた。


 …………権力のあるものの力を使うのも手だよな。

 俺は一瞬ニヤッとして、生徒に伝える。

「学園長からこの学園の教師の時は力を使うなって言われてるんだ。詳しい理由は言えないが……。だから、こうやって教えるのはアドバイスだけってなっている。申し訳ない」

 俺が仕方なさそうな表情で言う。嘘は一切ついていない。というより、真実を述べたまでだ。

 いや、一部大嘘があるけど……。

 それを聞いたサリを含め他の二人もあっさりと頷いてくれた。

「なるほど〜わかりました!」

 よし、ひとまず安心だ。

「……相変わらず口だけ達者ですね」

 ぼそっと副担任が俺の横で呟く。

 こいつ…………うぜえええ。


 そして、授業に入った。

 さすがの副担任は余裕でやってのけた。

 またドヤりやがって……腹立つぜ。

 っと、さらに驚くことに全員がそれをやってのけてしまったのだ。

 もちろんお決まりの展開は無視してな。

 その中でも維持時間が長かったのはサリだった。



 次に剣技の授業だ。

 また校舎から出て、今度は木々が生える庭のようなところに来た。

 授業内容は丸太を斬れればクリアというこれまたシンプルな授業だが、ただの丸太ではない。

 ミルニィが特殊効果魔法をかけた。丸太のため切りづらい。経験談。

(隠れて俺が斬ろうとしたものの傷の一つ付かず、逆に反動で俺の手に激痛が走り、その場で倒れるくらいマジで硬かった)

「開始!」

 と副担任が言った。

 そして40分経ったころ。

 まずシルミーが切り倒し、その後二人も1時間ちょいで切り倒した。

 あれを切っちゃうんだ全員。……一人ぐらい切れない奴、いないんだな。

 なんか女子が斬れてるのに俺だけって、恥ずかしっ!

「ほんとはこいつらめっちゃ強いんじゃねーの?」

 そう俺が訊くとミルニィは首を横に振って答えた。

「いえ、これでも成績は真ん中です。もっと上位の生徒ならあの丸太を10分もかからず斬り倒すでしょう」

「おいおい!嘘だろ!?」

 俺が驚愕して続ける。

「それじゃあ、お前の魔法が強すぎるとかは?」

 そう言うとミルニィは俺を睨んで答える。

「馬鹿にしないでくれませんか?私もさすがに魔法のコントロールくらいは出来ます。先生の体で試して見せましょうか?」

「遠慮しときます。ごめん、いや、すいません」

 くそこの副担任め……調子にのりやがって。



 その後も授業は続き、俺は彼女たちの実力をずっと見ていた。

 特に目立った衰えはなく、かといって目立った力強さもなく。

 生徒たちの秘めたる力とか何もわからず、時間だけが過ぎていた。

 俺の力を見る目がないからなのか?

 そんなことを思ってしまうくらいに普通だった。

 だが、くよくよしてても始まらないっと自分を戒め、新たな考えを提案した。




 昼休み。

 教室の扉を開け、俺と副担任が中へ入る。

 生徒たちは目を丸くして俺に視線を向ける。

 それと同時に後ろから声がかかる。

「何をする気なんですか?」

 ミルニィ副担任は心配そうに俺に尋ねる。

「まぁ任せろ」

 と俺は返した。

 そして……


「みんな聞いてくれ!」

 俺は息をふぅ〜っと吐いて、生徒たちに言い放った。



「最強に、ナンバーワンになるぞッ!」


どうも白川みつきです。

久しぶりの更新ですね。

次回の更新は予定では土曜日です。お楽しみに。


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