1時間目- (3)
時は過ぎ去り、といっても10分しか経ってないが。
現在、俺はミルニィさんに俺の担当するクラスの教室へと案内されているところだ。
これで二度目の案内になるけど、……さっきとは対応がまるっきり違う!
「あ、あの〜」
俺が声をかけるものの……。
「……はい。何ですか?」
あれ?冷たくない??
ちょっと前までは「は、はい!な、なんでしょうか?」みたいな緊張してて可愛いな、おい!みたいな子じゃなかったか?
まぁ、憧れに近い存在だと信じていた人が、自分以下の存在だと知ってしまったら、「こんなやつをちょっとでも尊敬してしまった自分が情けない」とでも思ってそうだよな〜。
被害妄想だとはわかっているが実際に合ってそうで怖い。
「その〜」
「あ、大丈夫ですよ。ちゃんと生徒の前では第六階級教師として話しかけたり合わせますから」
まだ何も言ってないのに勝手に解釈するなよ!
それと目で話しかけるなって訴えるのやめてくれ!!
「いや、違くて」
「はい?」
やっぱりなんか口調が冷たい!
「あとどんくらいで教室には着くのか、な?」
「もうすぐですよ」
「は、はい……」
何でだろうな。俺、別に悪いことはしてないんだけどな。
チラっとバレないよう横目でミルニィさんを見る。
近くで見るとより一層綺麗だということがわかる肌の白さ。
さてさて、どうやって攻りゃ、仲良く出来るだろうか。
っと俺が滅多に使わない脳を煩悩のためにフル回転していると。
「着きましたよ。セイタ先生」
冷たく言われたせいではなく、普通に先生と言われ慣れてない俺は身震いした。
なんか変な感じだ。
まぁ、高3で先生なんて言われ慣れてる人の方が珍しいよな。
「先生?どうかしました?もしかして隊長、大佐、教官の方がいいですか?」
「いやいやそういうことじゃねえから」
思わず教官も悪くないって思っちゃったよ。
「ちなみにこのクラスって最弱クラスとかってわけじゃ」
「ないです」
「ないですよねー」
てっきりラノベあるある展開かと思ったんだが。
ほらよくあるじゃん。最弱を最強にするとか、実はめっちゃ強いとか。
「じゃ〜最強?」
「極端ですね。もちろん違います」
「じゃ〜何なんだよ!」
俺が知ってるラノベにこれ以外のパターンあんま知らねえぞ。
てか、今時最弱とかじゃねえと読んでもらえないじゃねえのか?
「中間です」
「は?」
「だから中間ですよ。何の特徴もないクラスです。模擬戦でも勝ったり、負けたりで五分五分」
うわっ、何そのつまんないクラス。
「じゃ、じゃあ、実は昔は強かったとかは?」
「ありません!」
即答でミルニィさんに言われ、言葉を失う。
何それ、ただのモブじゃん!
最弱が勝ち上がって第二回戦辺りでやられる (1ページで)奴らじゃねえか。
場合によっちゃ、「最弱クラスは2回戦、3回戦と勝ち続けた」っで片付けられちゃう奴じゃねえか!
1行だよ?1行!
「では心の準備はできましたか?」
「い、いや。まだなんだけど」
「では行きましょう」
「いや、まだって言ったよね?聞いてないだろ!」
俺の心の準備も整ってない間にミルニィさんは教室のドア開けた。
そこには……。
って、剣⁉︎
「あっぶねーー!!」
教室に入ると目の前で剣が一振りされた。
一歩でも前に居たら死んでたぞ。剣ほぼ見えなかったし。
「なんだこのクラスは……」
思わずそう呟くほどの光景だった。
1人の少女は剣を振りまくり、もう1人は魔法?なのかよくわからんが泡を飛ばしている。
そして、もう1人は教室の端で本をよんでいるという状態だ。
「なんってこった……」
THE カオス!
俺がまたも呆然になると、横で呆れ顔のミルニィさんは、右手を伸ばし、某テーマパークのキャストさんのようなことを口にした。
「ようこそ。何の変哲もない普通のクラス、N-7クラスへ」
まじか……。
前の世界での教室とはほとんど変わらない大きさのこの部屋に生徒3人、副担任1人、偽担任1人がいる。
5人じゃ、広いこの部屋で俺は唖然と固まった。
「席に着きなさい」
ミルニィが慣れたようにそう言うと、女子生徒たちは意外にも素直に着席した。
「随分慣れてるんだな」
俺がミルニィさんにそう尋ねると、めんどくさそうな顔で答えられた。
「私はこのクラスでよく授業をしてますからね」
「え?門番やってるのに?」
「はい?門番は教師が交代でやるという制度ですけど」
そんなことも知らないんですか?みたいな目で見てくる。
ムカつくなこの人。
「いずれセイタ先生もやることになりますので忘れないでくださいね」
それはともかく、
「このクラス3人しかいないのかよ!」
俺が思わず叫ぶと、すぐ隣のミルニィさんが小声で答えた。
「普通はひとクラス4人ということになってるんですが、うちのクラスは1人、不登校っとなっています」
おいおい、不登校とかこの世界にもあんのかよ……。
ついつい肩が下がっていく俺。
はぁっとため息を吐いた俺が「了解」っと答えると、
ミルニィは自己紹介をすることに決めた。
「それじゃ〜……前から順に」
するとツインテールの金髪の女子がゆっくりと立ち上がった。
金髪ツインテール来たあぁあああ!
こりゃもう、あれだろツンデレしかないだろこれは。
俺が心浮かれてると予想を覆すことが起きた。
「…………」
「あれ?」
すると小さく口を開いた金髪美少女は赤チェックのスカートをパンっと直し一言だけ。
「…………ユ……ント」
「ん?」
「……ユミル…………フィリント」
こ、これはまさかのツンデレとは離れた静か系か⁉︎
金髪ツインでは珍しいがこれはこれで。
「…………」
「えっと〜しゅ、趣味とかある?」
俺が割れ物を扱うように尋ねるが
「…………」
「あれ?」
「…………」
こ、これって……静か系じゃなくてこれはもう無言系じゃねえかよ!
「はぁ〜、では次」
ため息混じりにミルニィ副担任が言うと、次は青いロングヘアーの女子生徒がバッっと立ち上がった。
顔立ちはさっきの子に勝るに劣らず可愛らしい。
髪は染めたとは違って地毛だとわかるほどの綺麗な濃いブルー。髪と同じ色の瞳の下には小さいホクロがある。うん!やっぱり可愛い。
てか、今度こそツンデレか⁉︎
最近は青髪ツンデレもあることだし、これあるんじゃね⁉︎
「え〜っと!わたしは〜、サリ・ジリンクトぉ〜。よろしく〜!」
右目にピースサインの右手を重ねウィンクをしてきた。いや、可愛んだけど……うん。
ツンデレじゃないんだ。
まぁ、これはこれで。
「センセーって、第9階級なんでしょ〜?」
眠たそうな眼でゆっくりとサリは続ける。
「は?」
「あれ?第何階級まであるんだけ〜」
可愛いけど、頭に問題がありそうだな。
ミルニィ先生はまたも呆れ顔になるも咳をして微妙な空気を切り替えてくれた。
「ゲッホン。では次」
次は何だ〜っと半ば呆れ気味な俺はため息をしながら前を見た。
スッと立ち上がったミディアムヘヤーの少女はキリッと表情を変える。
「アタシはシルミー・エレイント」
顔立ちは前の二人と同じく整っていて、可愛らしい。
特徴的な銀髪には地味な黒のピンが付いている。俺的にいい年頃の女子なんだから可愛らしいのでもつければいいのにっともったない風に思えた。
するとシルミーはまだ話すようで、右手を腰に当て続ける。
「剣には自信があるわ。一度、第六階級の先生と剣を混じらせたい!そう思ってます!」
ぜってええええヤダよッ‼︎
そんな挑発染みて言ってるけど、乗りませんよ先生は!
もし混じらせたら、俺の体が剣と混じって血まみれだよ。死ぬよ!
とは言えないので。
「ま、まあ、いつかな。はは」
ジーっと隣からの視線が痛いが無視し俺はみんなに告げた。
「えーっと、次は俺だな。俺はセイタだ。よろしく」
他に言うべきこともあるんだろうけど、何も思い浮かばなかった。
すると、さっそく手を挙げたのはサリだ。
「センセーしっつも〜ん」
「ん?」
「なんで〜六階級の人が私たちなんかの教師やってるの〜?」
「そ、それはあれだよな、あれ」
俺は隣にいるミルニィ先生に目を向ける。
すると眼で「私にフラないでください!」と返ってきたので仕方なく俺が答えることになった。
「まぁ〜あれだよ、勇者をもっと増やし、平和を維持するため、えーっと、未来の勇者を育てるべきだと思ったん、だよ!」
我ながら苦し紛れの言い訳だ。ヤバイ怪しまれる!
さすがに嘘が下手すぎた。
ああ、や、やめてミルニィ先生。そんな冷たい目で見ないでくれ!
「へ〜そうなんだっ!すっごいね先生!すっごくいい人じゃん!」
良かった〜バカで。
更新1ヶ月ぶりですね!
(遅れてすいません)
完結までのプロットなどは完成したので、出来るだけ頑張って1月以内で完結しようと思っています。
ですがさすがに3作品を同時に書くというのは素人には難しいのであくまで予定です(笑)
次回の更新は1月25日の週の予定です。
よろしくお願いします!