0時間目- (3)
「いやーお見事!」
と愉快そうに言う中年オヤジは、後ろにぐったりと3人セットで縄に縛られた男たちをチラ見やると、俺の方に向き直った。
「いやいや」
俺は少し照れくさくて頭を掻く。
このオヤジさんは後ろの下級山賊に盗みをされた店の店主らしく、俺にお礼を言いに来てくれたのだ。
「本当に感謝しているよ! それに見事な剣技だった!」
興奮したように言う店主に俺は「いえいえ」とトーンを落とし、それだけ言い立ち去ろうとすると
「もし良かったらウチに寄ってってくれー!サービスするぞー!サービスッ!」
元気よく大声で俺の背中に叫び声が当たり、俺はまた恥ずかしくなって軽く振り返ると、手を振った。
「ふっ」
人に感謝されるのも悪くないもんだなっとまた頭を掻き、市場から離れた。
「剣技……か」
俺は街を眺めながら目的地の北側街までの道を歩みながら手のひらを見る。
今回、俺が勝てたのはたまたま下級山賊だったからだ。
ここ南側の街内ではやや力がある者だと思われるかもしれない。だが、学園のある北側街や街を出てしまえば俺は大した力もない存在なのだ。
一応、言っとくが俺は前の世界で強かったわけではない。
なのにどうして山賊に勝てたって?
それは異世界もの特有のチートのおかげだ。
俺がここに来て唯一と言っていい最弱なチート。
【リミティアフォース】という指輪のおかげだ。
これの能力自体は詳しくは知らないし、名前の意味も掴めなてない。それにこれをくれたじじいでさえ知らないという不安要素大有りだが、なぜか力が少しパワーアップするみたいで、デメリットなどの影響が今の所見えないためはめているというのが、現状だ。
街の北側に来るとさっきまで流れてたスローテンポの雰囲気を一瞬にして変える活気のいいメロディーが耳の中へ入っていく。
俺は思わずスキップしそうなぐらいに足が軽くなったが、何とか堪え走り歩きで学園へ向かった。
前の都会も良かったけど、個人的にこのRPGっぽい中世ヨーロッパに似た街の方が好きだ。
こんなにもいい環境を与えてもらってるのに、なんで……なんで俺は弱いままなんだよ。
どうせ転生したんだったら、無双くらいさせろよおお!!
ま、まさかさっきのザコ山賊が俺にとっての最後の無双とか言わねえよな?
あ、自分でフラグを立ててしまったあああああ‼︎
とかなんとか考えてるうちに俺は学園まで辿り着いたのであった。
現在の俺の力 : 某ゲームのスライムを倒せるか倒せないかレベル。
追記 : 倒せてもほぼ瀕死状態。
評価 : 大変よく頑張りましょう。
お久しぶりです!
白川みつきです!!
更新が約2ヶ月ぶりと、大変遅れてすいません。
次回からの更新も不定期ですが、1ヶ月の最低1回は更新しますので、よろしくお願いします。
そして『0時間目』(序章)が終わり、次回からは本編が始まります!
『1時間目』もお楽しみに!
ではでは!