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Letter〜呪いの館〜  作者: 猫田 るめる
深緑の森
6/11

6話

 重明と悠貴は一緒に扉を開けると、激しい光が彼らの目を晦ました。

 ━━……光が収まり目を開けると、暗い森にいた。後ろを振り返ると、さっきそこから入ってきたはずの扉はなかった。変な方向にうねっている木々や、咲きそうにもない丸い花。そして不気味な動物がたくさんいて、本当に気持ち悪い。

 なぜこんなところを歩かなければいけないのだ、と心の中で呟きながら悠貴は前に進んでいく。




 ━━━どのくらい歩いたのだろうか。未だに目の前はずっと同じ景色のままで、前に進んでいるように感じられない。この先の道に本当に違う景色が待っているとは思えないほどだ。

 道標であるものは何もないこの状況に置かれている中で、彼らはただただ先に進んでいた。

「うわあああぁっ!」

 悠貴の前にいる重明が突然尻餅をついて叫んだ。

「父さん、どうしたんだ……って」

 悠貴は重明が叫んだ訳を知ろうと前を見ると、結構大きなテナガザルみたいなやつがそこにいた。だが、テナガザルにしては大きすぎて、異世界の生物のようだ。目はグリングリンとして大きく、口も体も大きい。体調3mあるかないかという大きさだ。

 そんな大きなバケモノが彼らの方をじっと見ていた。彼らの事をじっと見つめたあと、そいつは長い手足を使って木々を移っていった。

 そいつはある程度行ったところで、彼らの方へ向き直る。

「道案内、してくれるのか?」

 そいつは悠貴の言葉を読み取ったのか、頷いてまた奥へ行ってしまった。悠貴は尻餅をついたままの重明を立たせ、後をついていった。


 ━━行って待ち、行って待ちを繰り返すそいつは、かなり進んだと思われるところで止まり、指をさした。指をさした先は城跡の大きな扉だった。

「ここに入ればいいのか?」

 そう聞くと、ヤツはキャッキャッと何処どこかへ行ってしまった。

「…とりあえず、入るしかないのだろう」

 いつの間にか復活していた重明を尻目に、悠貴はその扉の前に向かって歩いた。重明もその後に続き、扉の前に2人並んだ瞬間━━…

 ここの不気味な森にでる前と同じように、まばゆい光に包まれた。

 目の前の光が収まり、二人はゆっくりと目を開ける。するとそこには、最初にいた部屋よりも少し広い豪華な部屋の入り口にいた。

 真っ赤な壁紙と、絨毯じゅうたん。壁には、頭蓋骨のランプが、四方八方に一直線に飾られている。高級感があるが、なにが描いてあるのかわからない絵も飾られていた。音楽はなく、シンとしている。

 その部屋は50という人数はらくらくと入る。部屋にあるのは、赤いふかふかそうなソファや、机の上にある何本かのシャンパン。

 シャンパンには誰も手を出していなく、赤いソファにも誰も座っていなかった。

 ここにいるみんなが緊張している。それもそのはず、何が起こるかわからないこのゲームに参加することになり、最初のステージはどのような内容なのかなんてわからないという恐怖にある。その中でくつろげるわけがない。

 藤ヶ谷を目で探しみていると、彼は何かを探しているようだった。

「悠貴、あそこにお婆さんがいるぞ」

 重明の声に反応した悠貴は、彼が指をさす先を見た。

 重明が指を指す先には、顔じわが多い腰の曲がった小柄なお婆さんが座布団の上に座っていた。不気味なオーラがにじみ出ているので、存在感がある。

 悠貴はお婆さんを見ていると、おばあさんの真上の壁の一部が動き、最初の部屋の時に見たモニターと似たような物が自動で出てきた。

 ガタンッという音と同時にモニターの画面がつき、最初に見たマトリョーシカがまた不気味な笑みを浮かべながらそこにいた。

「さあて、みなさん揃いましたかな? ここのステージの説明はそこにいるカーリババに聞いてくれたまえ。では、健闘を祈る。クックッ」

 ぷつりと言ってモニターの画面が切れた。あのモニター、電源は切れていないようだ。

 電子音がかすかに聞こえるモニターを見続けていると、このゲームのCMらしきものが流れてきた。

 カーリババと呼ばれるお婆さんが、「丸投げしおって」と言いながらも自己紹介をし始めた。

「わしが、カーリババじゃ。ここの館主やかたぬしじゃ」

 さっき重明が指をさした悠貴の目の前にいる婆さんがカーリババだ。笑顔が本当に不気味だ。

 そんな笑顔を真顔に戻し、カーリババは勝手にステージ説明をしだした。

「さて、わしからこのステージの説明をしようかの。ここのステージは森じゃ。森の中にある館についたらゴールじゃ。ほれ、そこに扉があるじゃろ?扉を出ると、さっきお前さんたちが歩いておった森の続きに繋がっておる。その森には、怖い女の人形がおるんじゃ。女の人形はお主らを食べるために追ってくる。じゃが、それを回避するための約束事がある。森の中で女の人形のことは口に出すな? それと、早く帰りたいとか言うんじゃないぞ? 女の人形はその好奇心や恐怖心でお前さんたちを餌だと思うんじゃ。それと、一人が行ってゴール地点に着いたら、モニターにゴールとでるから、その後に続いていくんじゃ。そうじゃないと、大変なことが起こるからの。そして、もうひとつ気をつけなければいけないことがある。それは、この中で2人犠牲を出さなければいけないということじゃ。じゃが、それはランダムに決まる。女の人形がその扉の前におったら、犠牲になるというわけじゃ。必ず2人、とは限らんぞ。人形次第じゃからな。さて、わしからの説明は以上じゃ。順番は何でもいいぞい。勝手に行っておくれ」

 カーリババの長い説明が終わり、空気に緊張感が走る。そして少しざわついてきた。

「誰が行く?」「お前先に行けよ」など様々な声が聞こえてくる。

「俺が行く」

 一人の男が宣言した。よく見ると、さっきまで人混みの中にいた藤ヶ谷だった。

 藤ヶ谷は扉の前まで歩み寄り、扉は軋む音と同時に自動的に開き、まばゆい光に包まれて消えていった。扉がバタンと大きく音を立てて閉まった。

 シン、と静まり返った部屋。

 静まり返っているが、空気に緊張感が走っているのがわかる。

「あいつ、どうなるんだろう」、「まさか、早速一人死んだなんてことないよな…?」という嫌な言葉しか並べられていない文章が聞こえてくる。

 恐怖━━━今の空間には、その一言しかない。藤ヶ谷は生きて次のステージに行けるのだろうか。

 突然、モニターが流れていたCMからいきなり派手な音が流れて画面も変わった。みんなビクリとしたが、その画面にある文字でホッと胸を撫で下ろした。

『GOAL!!』

そう派手な音と色使いででていた画面はパッと切り替わり、カーリババが話す前の画面と同様に暗くなった。

 部屋に、尋常じゃない緊張感がピリピリと伝わってくる。

「よし、じゃあ俺が行く!」

 さっきの藤ヶ谷が行った時に安全だとわかったのか、一人の男が名乗りでた。まだ謙遜けんそんする人が多かったが、少しずつ「じゃあ、あいつの次行こうかな」「私その次に行くわ」などいろいろ聞こえてきた。

 先ほど名乗りでた男が扉の前に行くと、藤ヶ谷のときと同じように自動的に扉は開いた。扉の入り口は、眩い光に包まれていた。男はそこに向かっていき、光に包まれながら消えていった。

 扉は勢いよく閉まり、また静まり返った。そして数十分後、モニターのあの激しい音が鳴り、GOALの文字を確認する。あの男も無事に辿り着いたようで悠貴らは少し安心した。

 その後、一人また一人と無事に辿り着いた。悠貴と重明はまだ残り、部屋にも半分以上残っていた。

「今度は俺が行く」

 次にそう宣言したのは、悠貴と同じ年くらいの男。

 周りは安心しきっているのか、男が行くところを見ようとする人は誰ひとりいなかった。男はまっすぐと扉の前に行き、扉が不快な音と共にゆっくりと開いた。

 だが、そこには光はなく、ただ暗い空間が広がっていた。その扉の前に立っていたのは、おかめの顔をした大きな人物。

 いや、人形と言ったほうが正解なのだろうか。

 カーリババが言っていた『女の人形』とは、この大きなおかめかぼちゃのことだった。

 扉の前にいた男は、わなわなと震えながら俺達の方を振り返った。

「た、助けてくれ!」

 その言葉は部屋中に響き渡り、その声が他の奴らに聞こえたのか、一斉に扉の方へ目を向けた。

「うわああぁ!」

「なによあれ!」

 部屋中に悲鳴が響き渡る。悠貴と重明も、恐ろしく思った。

 背は普通の男よりも高く、おかめの顔をした女型の人形。少し微笑んでいておちょぼ口のその顔は、表情をひとつも動かさない。それが悠貴らの恐怖感を煽った。

 男は恐怖に陥った顔を向けながらこっちに手を伸ばしていた。こっちに逃げようと手を伸ばす彼を、その後ろで逃がすものかと手を伸ばす人形。男は何とか逃げようとしたが、遅かった。

 人形の手は男を捕らえ、自分の手元に持ってくると、扉がバタンとしまった。部屋にいる者らは、それを食い入るようにみていた。

「うわあああああああ!! やめろおおお!!」

 そんな悲鳴とも呼ばれる声が扉の奥から聞こえてきた。

 そして、何事もなかったようにその声は消えた。

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