4話
何が起きたのかわからず、悠貴は生理的に瞬きをすると、目の前の風景はいつもと全く違っていた。
「なんだこれ…」
そこは見たこともない、不気味な部屋。明かりはオレンジ色で薄暗く、天井に大きなシャンデリア風の明かりが1つと壁の隅に1つずつ付いている。
壁は、紺色の壁紙で貴族のような豪華な飾りがつけられているが、ところどころに髑髏やコウモリの標本、死体が描かれた絵も飾られていた。
そして周りには、顔も名前も知らない大人数が「なんだここ?!」、「ここはどこだ?!」、「家に返して!」などと喚いている。
「悠貴!!」
悠貴は呼ばれた方を振り向くと、そこには重明がいた。どうやら重明も、悠貴と一緒にに飛ばされてきたらしい。
「父さん、これは一体…」
「私にもわからん。だが、ここにいる皆は同士のようだ」
悠貴はその言葉に頷いた。
どこだここ、と言っている時点で、彼らもここがどこだかわかっていないようだ。悠貴は重明の左の胸元で光っているものを見て驚いた。
「父さん、胸に付いているその黒いピンバッチ…」
重明はそれを見て気づいたのか、大きめの声で
「こ、これは…! あのとき遺体についてたピンバッチ!!」
と言った。
悠貴も確認したら、やはり自分の胸にもついていた。
「悠貴、…何番だ?」
「134…、父さんは?」
「俺は、162だ」
やはり3桁の数字。これが何かを意味しているのだろうが、何を意味しているのかはまだ彼らはわからない。
重明によると、遺体についていたピンバッチと同じ形の物らしい。周りの人たちにも付いているのだろう。これが何時付けられたのか、誰も全くわからない。
「まず、周りが騒いでいる内は、あまりそのことで騒がないほうが良さそうだな」
重明の言うとおりだ。
悠貴と重明を含めたここにいる人々は、性別はバラバラで年齢もバラバラ。ましてや、ここにいる人たちはみんながみんな首都圏から来ているわけではないはずだ。
ただでさえ身動きが取れないのに、今パニックを起こしている人々に悠貴らが得た情報を与えることで、さらにパニックを起こしてしまうと、怪しく思われ、余計に身動きが取れなくなってしまう。さすがに動きまわっていたら、いつ危険な目に遭うかなんてわからない。
しかし、このような大きい部屋がどこに存在しているというのだろう。
人の人数は、悠貴と重明を含めると、ざっと50人程度。それを一気に、この大きな部屋に集める理由が何かあるのだろうか。
悠貴は周囲を見渡していた。すると、一人の男が
「画面が光ったぞ!!」
と言い出した。
悠貴を含め、そこにいた人たちは、一斉に画面がある方に向いた。画面には、不気味な笑みを浮かべたマトリョーシカが映しだされていた。
周りはシンとなり、画面に映るそれに目を向ける。
「ようこそ、我がゲームの館へ。私は、ここの支配人をしております、ドン・セルビスです。そしてあなた方は、私が主催するこのゲームに選ばれた50人です。私はそのゲームに参加する方たちを、“TARGET"と呼んでおります。あなた方は、そのTARGETと呼ばれる方々なのです」
部屋にいる彼らは、何を言っているのか、さっぱりわからない様子だった。
ドン・セルビスと名乗るマトリョーシカの格好をしたやつは、変声器を使っているからか、声の選別で男か女かは判別できない。
こいつが言っているゲームとは何だ? 俺らがそのターゲット? どういうことだ? こいつは何を言っているんだ?、と、悠貴は思いながら、疑問が多すぎて頭がついていかなかった。
「んなことしらねーよ! 俺らをこっから出しやがれ!!」
画面に向かって一人の男が言う。
それに続くように、周りから「そうだそうだ!」、「家に返してちょうだい!」などが聞こえてきた。
それを聞いていたドン・セルビスが
「まぁまぁ、落ち着きなさいな」
と言って、人々をすぐに鎮めた。
妙に落ち着いているドン・セルビスに、悠貴を含めた部屋にいる人は酷く不気味がって、口を噤んでしまった。
「落ち着きましたね。さてと、家に帰りたいと言いましたね?」
そう言うドン・セルビスの答えを、彼らは固唾を飲んで待つ。
「これからあなた方にやって頂くゲームにクリアしていただかないと、ここからは出られません」
悠貴の期待が裏切られた瞬間だった。
ドン・セルビスは、彼らにまた頭が痛くなるようなことを言い放った。
「ゲームだと?!」
こっから出せ、と言った男がそう尋ねると、ドン・セルビスは「クックッ」と笑っていた。
「ゲームの内容は何だ」
悠貴は、ドン・セルビスに尋ねた。周りの人が、その答えをじっと待っていると、ドン・セルビスはまた「クックッ」と笑った。
そして、彼が出した答えは
「もう少ししたら開始の合図がなりますので、その時にお応えしますよ」
だった。




