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Letter〜呪いの館〜  作者: 猫田 るめる
TARGET
3/11

3話

 午前5時、目覚まし時計が部屋中に鳴り響き起きる。歯磨きを終えて、朝ごはんの支度をする。朝は晴菜が仕事で4時半に家を出るため、朝の支度は悠貴の日課になっている。

 朝ごはんを食べ、悠貴は、学校へ行くために玄関を出て郵便物を確認した。これも彼の日課だ。

 いつもは何もない閑散としたポストに、真っ黒な手紙が1通あった。表に小さく「BlackLetter」と書かれてある。まだ少し時間があった悠貴は家の中に入り、中身をみた。しかし、中は何も存在していなかった。


 悠貴はその後学校へ行った。1限と2限に考古学の授業。1限は座学で、古代の遺跡の謎や仕組みについて学び、2限は教授の気まぐれにより外へ。何をするのかと思ったら、地層を調べ始めた。教授は猫のように気まぐれで、時には生徒たちと遊んだりするくらいだ。地層調べも、彼にしてみると遊びなのだろう。それはもう夢中になる。

 気まぐれな彼は、中に戻ってまた何かし始めた。勿論、生徒たちは授業の一環としてその場に居合わせている。その気まぐれのおかげで、2限は授業らしい授業はしなかった。

 3限目、4限目は特に何もなく、ただただ暇を持て余していた。携帯をいじってたり、中庭でただボーッとしていたり、最近父さんから借りた事件の内容の謎解きをしたりした。謎解きは思っていたとおりハマり、ハッと我に返ったときには、5限のチャイムが鳴った頃だった。

 6限の推理学は、ずっと謎解きだった。教授が考えた謎解きの問題を解いて見せるの繰り返しだった。最後に近づくにつれ、教授はまた問題が思いついたのか、悠貴に出してきた。

「真田、今度の謎は、おまえが考えてこい」

 悠貴にとって、まさかの一言だった。

『俺の宿題だというのか…』

 と思った悠貴だが、やることはやらなければいけないので、教授に、わかりました、と告げると授業終了のチャイムが鳴った。

 その後は、また雪弥が手伝ってくれと悠貴にすり寄ってきた。悠貴は、なかば呆れながら

「お前が解けない謎って、どんな謎なんだよ?」

と雪弥に聞いた。

 雪弥は、パァッと顔を明るくさせ、悠貴ににその謎の詳細について教えた。

「ちょっと図に表してくれないか?」

 説明のみでは、わかりにくかった悠貴は、雪弥に問いかけた。

 雪弥は紙とペンを鞄の中からだし、説明と加えて表してくれた。

 だが、悠貴にとってこの謎は簡単すぎたのか、すぐに解いてしまった。

 『つまんね』

 と思った悠貴は、未だに答えを考えている雪弥に教えた。

「これをこうして、こうすれば、ほら」

「うお、すげえ! さすが悠貴!」

 『いや、このくらい簡単だろう』

 と言おうと思った悠貴だったが、心の中に留めておいた。雪弥は

「ありがとう!」

と言って、去っていった。

 そんなに時間は経っていないはずなのに、悠貴の腕時計はもう4時半を指していた。悠貴は少し早足にバイト先へ向かった。


 バイトへの道では、中年の小太りな男がふらふらしながら歩いている。

 悠貴が通う大学があるこの町は、居酒屋などが近くにあり、夜は中年のサラリーマンたちが酒を飲み、言葉を交わし合っている。悠貴も21なのでその席に誘われることがあるが、真面目なのか人が嫌いなのか、必ず断っている。

 酒屋が集まっている通りを過ぎ、細い道をずっと歩いて行くと、バイト先のシーレスについた。

 バイト中は、たまにだが面白いことが起きている。

 チーフは悠貴の後輩にツンデレで絡んでいるし、店長は相変わらずのんびり仕事。悠貴らがテキパキと働いているときものんびりしていて、いつも仕事が遅い。そんな店長を偉大な人だと拝んでいるチーフもチーフではあるが。

 ホールでいつもと同じ仕事をしているうちに夜9時をまわり、悠貴は更衣室で帰り支度を始めていた。

 そんな時、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

「真田先輩。あの、飯田ですけど…」

とドアの向こうから聞こえたか細い声は、今日またチーフがツンデレになっていた飯田絵美いいだえみだった。

 彼女は、悠貴が通っていた高校に現在通っていて、後輩にあたる。顔も可愛くて絶対モテるはずなのに、今まで彼氏は一度もいたことないという。だからチーフが手を出しそうで、二人が一緒の時はヒヤヒヤしている。

 そんな彼女を迎えるため、悠貴は着替えを済ませ、更衣室のドアを開けた。彼女は、手のひらから少しはみ出るくらいの袋を悠貴に差し出した。

「クッキーとチョコパイ、作ってきたの。みんなに配っているから真田先輩にも…はい」

 悠貴は少し戸惑いながら

「ありがとう」

と言って、その袋を受け取った。

 帰り支度が済み、悠貴はまたみんなに挨拶をしてバイト先を出た。

「まさか、これを貰えるとは思ってなかったなー…」

 そう呟きながら、少しルンルン気分で自宅に着き、玄関に入る。玄関には、彼より少し大きめの薄汚れた革靴がきちんと揃えてあった。

 悠貴は玄関で靴を脱ぎ、夕飯を食べに食卓へ向かうため、リビングに入った。

「ただいま」

「おう、悠貴。遅かったじゃないか」

 今回は、重明のほうが早かったようだ。

 今日は仕事が早く終わったらしく、早く電車に乗って家族の顔を見に来たんだと笑顔で話した。久しぶりに家族みんなで食卓を囲み、話し声や笑顔が飛び交う。重明は、目の前にあるものを愛おしそうに微笑みながら見つめていた。

 晴菜が、昨日のように食器などを片付けている最中、突然重明に呼ばれた。

 悠貴は、いつもの通り謎解きだと思って

「また今日も謎解きだろ?」

と聞いたのだが、重明の様子は少し違った。その重明の様子を見て、悠貴は

 『今日は謎解きをしないんだ』

と察した。

「悠貴、お前次々と人が行方不明になっているのを知っているか?」

 突然、重明が悠貴に問いかけた。

 悠貴は、頭の中に入っている記憶を呼び起こし、昨日テレビのニュースで見た、集団で行方不明になっているという事件を思い出す。

「知ってる。最近話題の、集団行方不明事件だろ? まだ誰も見つかっていないってやつ」

「あぁ、そうだ。年代は関係なく、各地域の人たちが行方不明になっていて、全国にその被害が広がっているらしい。しかも、被害者らは未だに見つかっていない」

 悠貴は、そんなニュースで話題になっている事件を、なぜ俺に聞くんだ、と思いながら、その話を興味深く聞いていた。

「今回、その事件と重なるような事件が起きたんだ。地域関係なく人々が忽然と《こつぜん》とその場から姿を消し、誰に襲われたわけでもなく、死んでいたらしい。その遺体には、どこにも傷はなかったそうだ」

 悠貴はその話を聞いて、おかしいと思った。

 まず、人間にそんな難しいことができるのだろうか。傷を負わせずに、人々が消え、殺されている。それが可能なやり方は限られている。

「それ、昨日のニュースで見た。毒物とか、薬品の可能性はないのか?」

 その可能性があれば、絞れると思ったのだが

「遺体調査をしてもらったが、薬物の反応は出なかったらしい」

その可能性もなくなり、また振り出しに戻った。

「脳内出血とか、そういうのでもないのか?」

「あぁ、そういうのも検出されなかったそうだ」

 『脳内出血などでもない?』

 悠貴は腕を組んで考え込んだ。

 外傷もなく、内傷もないのに人が殺されるなんてあり得るのだろうか? しかし、今現在こういうことが起きているのだ。

「その遺体の周りには、特に何もなかったのか?」

「あぁ。ただ、被害者の胸元に黒いピンバッジがついていたらしい。そのピンバッチに3桁の数字が書かれていたらしいんだ」

 3桁の数字の意味がわかれば、大体は予測つくと思われるが、その3桁の数字の意味がわかっていればこうして悩んではいないはずだ。遺体の周りには何もなく、傷を負わせず人を殺すなんて、出来るはずがない。しかもそれが何回も続いているとは、同一犯と見て間違いない。

「実はな、俺の同僚の進藤寛ってやつが、先月から行方不明になっているんだ」

 重明は急に、同僚の話をし始めた。

「俺は、進藤がこの事件に関係あるんじゃないかって思っているんだ」

 悠貴は、それを興味深そうに聞いていた。

 まさか、こんな近くに事件に関係ありそうな人がいるとは悠貴も思わなかった。

「とうさ…」

 悠貴は、そういえば、と手紙のことを思い出し、重明に呼びかけた時に、ブレーカーが落ちたのか、一瞬で前が真っ暗になった。

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