二 怜人
「す、好きですっ...。」
「えっ..」
悠人が告白されていた。
「っ」
慌てて口を押さえる。
「えっと....いつも一緒にいる女の子って、彼女...ですか?」
「理衣奈の事?違うけど...」
「えっと...返事...」
「あぁ...ん。まだワカンナイんだよね。」
「すみません突然...」
もう見れなかった。
足音を立てないようにその場を離れる。
「はぁ.....」
溜息が漏れた。
ジリリリリリリ
「おーい理衣奈ぁ!」
悠人の声が聞こえる。
「あ~待って」
ドアを開けると何時ものように悠人と怜人がいる。
「ごめん遅れたね」
「ほら行くぞ」
「行こ~」
「あ、そういえば...」
「?」
「どうした?」
「昨日告られてたでしょ」
「えっなんでしってんの!?」
「ちょっとチラッとね。で?」
「う~ん...。でも告白されたの初めてなんだよね。どうしようかな」
「ふ~ん」
「何々?寂しい?」
「はっ」
う~ん正直実感ないなぁ
「よーし、今日はマラソンだぞー」
やる気のない号令にしぶしぶついて行く理衣奈。
「あーもうマラソン無理.....。私運動オンチなのに~」
既に怜人と悠人は先を走っている。
クラッ
あ...やばいかも
道にしゃがみ込む。
「はぁっ」
頭がクラクラする。
太陽の光が容赦なく突き刺さってHPを削る。
もう、無理だ...。
「..衣奈!理衣奈!大丈夫か!?」
「あ、.....怜人!?マラソンは!?」
「もうゴールした。保健室行くか?」
保健室....。
「行く。」
「じゃあ口閉じてろ。舌噛むから」
「....えっ?」
ふわりと浮く浮遊感。
「ちょっ!怜人!」
「喋んな」
私は俗に言う、『お姫様抱っこ』をされていた。
う~~。もう駄目だ...。
ピチャン
水の音が響く。
「ん。コレでカラダ冷やせ」
「.....ありがとう」
冷たい...。
氷水に浸されて水気を絞ったタオルが並んでいく。
「ふふ、まるで王子様ね、怜人クン。憧れちゃうわぁ~」
保険医の真紀ちゃんがニコッと言う。
「.....じゃあ俺戻るんで」
「はぁ~い」
保健室を出て行った怜人の頬が赤くなっていたのを私は見逃さなかった。
「結構.....可愛い所もあるのね...」
「ふふっ怜人クン格好良かったわね~。私の王子様も早く現れないかしら」
真紀ちゃんは美人な癖に理想が高いから未だ結婚できていない。
「いや、怜人はそんなのじゃないけど」
「そうなの?もう青春ね~」
「いや、真紀ちゃん?」
「ん~?」
駄目だ完全に自分の世界に浸ってる。
私はそんな真紀ちゃんを見守るしかなかった。