少女と魔物
「と、取りあえず助かった…でいいんだよな?」と誰に聞くわけでもなく呟いた。
そして、ここがファンタジーの世界だと認識せざる負えない事態に遭遇し、頭を働かせる。
(もしここが異世界だとしたら、俺の使ったのはなんだ? 手から火の玉や水がでるわけでもなく、自分の身体能力が極端にあがっるわけでもなく、何故かナイフが光り、刀に変化した)
この能力を仮に仮定するのなら物質の状態変化、あるいは質量変化、あるいはそのどちらも兼ね備えている、あるいはどれでもない。
という仮定が浮かび上がってくる。
「まぁ、物は試しだ」とナイフを持つと、(変われ~、変われ~)と念じてみたが変化はない。
「あ、もしかしたら刀を想像しなくちゃいけないのか?」と今度は刀をイメージしてみた。
そして、ナイフは光りだし、1m程の刀に変化した。
「おお!やっぱそうか!」と春は結果に満足したような声をだし、その他にも何か使える能力がないか模索する。
それから3日ほどかけて、自分の能力を調査した結果、自分が質量保存の法則を無視したような特殊能力に目覚めたことがわかり、
変化する範囲は自分の周囲5mまで可能でこの距離は努力すれば、まだ伸ばせそうだった。
そして、月が見えるときは伸ばせる距離が倍になることが分かった。
3日も同じ能力を使い続けていると、使い慣れたもので、周囲の草花を針や蔦のように変化させたりして、能力の範囲に入ってきた、ゴブリンや、コボルト(2日目に遭遇した。強さはゴブリンより少し弱い)
を楽に殺せるようになっていた。
「はぁ、そろそろ人恋しくなってきたなぁ」と慣れた動きでコボルトを作成した罠で仕留めると、「街を探したいが、そもそもここからどの位の距離かもわかんないしなぁ…」と呟いて、「まぁこの森も永遠に続くなんてありえないだろうし、湖の近くから探索するか」
と少し気だるそうに歩き出した。
湖に着くと水を少し飲み、辺りを慎重に探索する。
「そういえば向こう岸までは行ったことないなぁ」と足早に歩き出した。
歩き出して2時間ほどだろうか… 春は目的地が近くになるにつれて、人らしき姿がゴブリンの群れに囲まれていることに気づいた。
この世界に来て、視力が良くなっているのは初日に気が付いたが確信したのは湖でゴブリンと遭遇してからだった。
と考えていると、あっという間にゴブリンからおよそ20mのところまで着いた。
能力は触れなくても使えるので、走っていけば間に合いそうだと自分の中で結論する。
とゴブリンに襲われているのは女の子だと気づいた。
ゴブリンに囲まれていて見えなかったが、髪の色は淡い水色で、顔は元居た世界ではなかなかお目にかかれない程整っており、茶色の目が少々吊り目がちで気が強そうだ。
「…っと、そろそろ助けに入んないと」と走りながらゴブリンの群れにに突っ込んだ。
ゴブリンと少女が春が急に割り込んできて、対応に困っている隙に、足元の草を操り、ゴブリンをまとめて締め上げる。
少女が腰を抜かしたまま茫然としていると、春は少女に「大丈夫ですか? 怪我とかありませんか?」と聞いてみた。
少女が慌てて「…っは、はい!大丈夫です!」と答える。
「良かった~」と春は安心して座りだすと少女は「お強いのですね。魔法使いの方ですか?」と聞いてきた。
「あ、あぁ、まぁね…」と返すと、少女は「凄いです!これって操作系の魔法ですよね?」とまた聞いてきた。
「…うん、まぁ、ソウミタイダネ」と春は苦笑しながら答える。
今度は春が「なんで君はこんなところに?」と質問する。
少女は「じ、実は…ここら辺に生えている薬草が怪我によく効くという噂を聞いたので…」とオドオドと答える。
「あ、申し遅れました。私の名前は、アルミナです」と笑顔で言う。
あまり女性に耐性がない春がいきなり美少女の笑顔を直視してしまい、思考がストップしてしまうも、すぐに「桜咲 春です」と答える。
「オウサキ シュンですか?苗字があるということは貴族の方でしたか?」とアルミナが遠慮がちに聞いてきて、慌てて「い、いや俺は貴族じゃないから!」
と返すもどうも説得力に欠ける。
「実は遠い日本という国からやってきて、そこには貴族とか関係なく、皆が苗字を持っているんだ!」と今度はちゃんとした理由を言って、取りあえずは(警戒は解けたのかな?)
とアルミナの表情を見て安心していると、「シュンも薬草を取りに来たんですか?」とアルミナが問うと、「いや、あっちの森で迷っていて、アルミナがゴブリンに襲われているのが見えたからこっちに来たんだ」と答える。
アルミナが驚いた表情で「え!?ネストの森からですか!?あそこはゴブリンやコボルトが巣の場所のの取り合いをしていて今は非常に危険な状態なんですよ!?」と言ってきた。
(やたら出てくると思った理由はそれか…)と思っていると、アルミナが「どうしました?」と聞いてきて、「あ、いや旅人だから泊まる宿を探していてね」
と言うと、アルミナが「それなら是非うちの村に来て下さい!歓迎しますよ!」と言われ、春の中では行かないの選択肢は存在しなかった。
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