こいつ、アホちゃうか
「それで聞きたいんだけど――」
主の言葉に私は返事をする。
『はい。どうしました。ご主人様』
「歴史を紐解くとさ。なんか信じられない理由で滅んだ国とかあるよね。暗君丸出しというか」
『暗君……と言いますと?』
「例えばさ。昔、ある国では侍従長にあたる人が政治を左右しかねないほど口出しをしたと聞いたけれど、将軍や宰相の意見に並ぶ、もしくは超えるほどの影響力を持ったなんておかしすぎるでしょ」
『それは流石に単純化しすぎていますが、その要素があったのは事実ですね』
「要素? 事実じゃないの?」
『事実と言い切るのは流石に乱暴すぎます。ですが、あなたが例に挙げた侍従長は皇帝に接する機会が多く、その気になれば自分の気に食わない意見を排斥することが出来たんです』
「あぁ。今と違って皇帝に会える人なんて一握りだもんね」
今も皇族や王族に会える人なんて一握りでしょうに。
そんなことを思いながら私は返す。
『仰る通りです。当時は皇族の顔すら知らない者が多い時代でしたから』
微妙にアクセントを変えたのだが主は気づくだろうか。
「それじゃ、自分に都合の良い意見ばかり優先するのもある意味当然か。そもそも他の意見は良く知りもしない相手からのものなんだから――」
あぁ。
主様が勝手に納得して話を閉じてしまわれる。
そのことに絶望しながら私は微かな望みを手繰り寄せるようにして問う。
『その通りです。調べてみると色々と面白いですよ。よろしければ幾つかの例をご提示いたしましょうか?』
「いや、いいよ。大丈夫」
そう言ってすっかり今話していた内容を忘れていく主様を見つめながら思う。
ご両親やご友人の話を聞かず、AIの私とばかり話している主様はまさに現代に甦った――。




