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奪うスキルで嫌われた俺、偽りの空の下で成り上がる  作者: k


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9/10

読み違えた一手

 傷のない体、手入れのいき届いた武器たち、動きやすい服装、そして――目の下の黒いクマ。

 よし、万全じゃない。


 ……いや何がよし、だよ。

 本当は別日にしてもらいたいが、それは二人に悪い。

 それに――俺はもう到着してるし。


 俺は『青龍の塔』の前で二人を待つ。

 多分だが、数分は待ったと思う。

 確か、集合時間の五分前に到着していたから、そろそろ来るはずだが。


「空賀さん。その顔、万全ではないようですね」


 先に到着したのは永久輝か。

 少し心配そうな顔をしながら、俺の顔を覗いてくる。

 永久輝はいつも通りの顔色だな。

 まぁ、コイツは戦わないんだが。


「まさか、夜更かししたんですか。今日は遠足などではないんですよ」


 永久輝は俺が年下だとわかった瞬間、俺をガキ扱いしてくるようになった。

 もちろん、ムカつく。


「何度も言っているが、俺はガキじゃない。遠足が楽しみで眠れない子供と一緒にするな」


「じゃあ、そのクマはなんですか? 何かいやらしいことでもしてたんですか?」


 そんなわけないだろ。

 本当の話をしたい。だが、直射日光を浴びたせい、なんて言うのはなんだかかっこ悪いのでやめておこう。


「おはよう。二人とも」


 海隅も到着したか。

 これで会話も強制終了だな。

 こんなところにいても仕方がない。さっさと出発することにしよう。


「お前ら、一応聞くが準備はできてるよな?」


 二人は何も言わず、首を縦に振る。

 少しずつだが、脳も冴えてきた。この寝不足も、戦闘にそこまで支障をきたさないでくれるだろう。


 左手に短剣、右手に長剣を持つ。

 本当は揃えたほうがいいんだろうが、残念ながら金はない。

 だが、それ以外は全部揃った。

 仲間、アビリティ、――そして俺の決意も。

 軽く深呼吸をし、自分自身と二人に向けて、


「それじゃあ、行くぞ!」


 『守護者』の討伐くらい、難なくこなしてやる。

 これは、ただの通過点でしかないんだから。


 ***


 ――三十三階層。ここも洞窟内。

 ただ、他の階層とは違い、高さこそあるが奥行きはあまりない。

 吹き荒れる風が小石や砂利を飛ばし、視界があまり良くない。

 だが、『それ』はここへ足を踏み入れた瞬間に俺たちの視界に入り込む。

 うねりながら空を飛び、しかしその高度は低い。 

 奴の表面の鱗は鈍く光っている。

 そいつは俺たちを見下ろしてくるが、その目玉は片方にしかついていない。

 ここまでの情報で奴の名前を元いた世界の言葉で表すのなら、


 奴の名は――『一目連』。


 ……っ!まずい!

 一目連が風の斬撃を俺たちへ向けて飛ばしてくる。

 俺はそれに瞬時に反応し、永久輝を抱えながら走り出す。

 もちろん、海隅も回避する。


 永久輝をどこに置いておくべきだろうか。

 流石に、あれを回避することを永久輝に求めることはできない。

 ただ、俺が常に守ることも難しい。


 ……選択肢は一つか。

 俺は永久輝を抱えたまま、石造りの扉へ駆け出す。

 試したわけではないため強度はわからないが、岩陰に身を隠させるよりマシだろう。


 永久輝を扉の影へ押し込み、


「いいか。絶対に俺たちの邪魔をするなよ」


 永久輝は少し不服そうな顔をするが、これ以外に選択肢はない。

 俺は足早にここを離れ、海隅の元へ向かう。


 海隅は肩に斬撃を受けたようで、血が流れ出している。

 流石に一人はキツイか。

 俺はすぐに一目連へ近づき、永久輝のスキルで光らされた部分に斬撃をぶつける。

 このまま、攻撃を続けたいがそんなことさせてくれないのが生物だ。

 

 今度は俺の足元に気流を発生させ、俺を宙に浮かせてくる。

 蜘蛛のアビリティをセットしておいてよかった。

 俺は即座に壁に糸を張り付かせ、それを利用し落下を防ぐ。

 

 そのまま、少しずつ高度を落としていき――地面に着地する。

 こういう類の攻撃をしてくるのなら、永久輝のスキルの恩恵は諦め、死角に回り込むか。

 奴には左目がない。そのため、確実に死角が存在している。

 俺は奴の死角である左側に行く。

 

 ……これはまずいな。

 ここには岩や鍾乳石が転がっており、足場が不安定。

 奴が自分の弱点を考え、用意したんだろう。

 これではここから攻撃することは難しいだろう。

 早く移動しなくては、こんなところでは回避もままならない。


 もしかして、今のがフラグになったんだろうか。

 俺は奴の風により、壁に叩きつけられる。

 スライムが役に立ち、ダメージを緩和してくれたが、かなり痛い。

 骨は折れてはいないが、砕けた岩が背中に食い込み、体が脳に痛みを訴える。

 この痛みは俺の足を引っ張る。だが、今の俺にはどうしようもない。

 再生能力がつくアビリティを手に入れておくべきだった。


 痛みに思考を食われるな。冷静に物事を考えろ。

 俺は岩を背中から抜き取り、移動する。


 ……クソッ。海隅もかなり攻撃を受けている。

 先ほどの肩の傷ほどではないが、腕のいたるところに斬撃を受けた跡がある。

 限界が来るのも時間の問題だ。

 短期決戦を実行しなくては俺たちの負けは確定する。

 何か案を出せ。一目連の弱点や習性などは前世の知識にないのか。


 俺が何も出来ずにいると、海隅が気流により宙に浮かされる。

 ……まずい! 海隅は対策を持っていない。俺が手助けしなくては。

 俺は蜘蛛のアビリティを発動させようとするが、風の斬撃が俺めがけて直進してくる。

 だが、それを回避した後でも間に合う。

 俺はそれを回避し、そのままアビリティを発動しようとする。

 奴を見てきたが、風の発生には少しだけクールタイムがある。

 その猶予を利用し……


 そうしようとした瞬間、俺の体に重い衝撃が走る。

 これは風ではない。尻尾での攻撃。

 俺はそのまま、壁へ激突する。

 死角に入れさせないため、奴は動かないと思い込んでいた。

 ――完全に読み違えた。

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