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奪うスキルで嫌われた俺、偽りの空の下で成り上がる  作者: k


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3/8

仇敵との再会は突然に

 仲間。この存在を甘く見ることは良くない。

 一人での限界を実感した俺はより強くそう思う。

 塔での出来事の後、俺は仲間探しに励んだ。

 その結果を知りたいって? しょうがないな、教えてやるよ。結果は……


 ――惨敗だ。


 『稀スキル』それに加えて、殺すことにより力を得られる『簒奪者』。そんな奴をパーティーに加えたいもの好きはここにはいないようだ。

 

 ……えっ、待ってくれよ。俺の冒険はここで終了するのか? スライムすら倒せないまま?


 どうしようか、案がもう無いぞ。

 とりあえず何かヒントがないか、辺りを見渡すと、ギルドの一角でパーティーメンバーに暴言を放つ大柄な男を発見する。

 

 俺は一瞬で結論を出す。

 ――関わるな、という結論を。


 あれ、あそこにいるのって、


「……あら? 龍輝くんじゃない」


 まずいな。俺が出会いたくない人間を挙げるなら、真っ先に頭に浮かぶ人物。

 村での居場所を取り除いてきた、


 ――木節きぶし 桐乃きりの


「……お久しぶりですね。木節さん」


「本当に久しぶりだわ。えーっと、何ヶ月ぶりだったかしら。いいえ、そんなことどうでもいいわね。龍輝くんは一人? 」


「はい。今は一人です」


「『今は』じゃなくて『ずっと』が正しいんじゃない? 」


 あぁ、やっぱりこの人は変わらないな。

 俺を馬鹿にしてくる姿勢、それに何一つ変化がない。


「木節さんは、パーティーメンバーと一緒ですか? 」

 

「えぇ、龍輝くんとは違って恵まれてるから。同じ『稀スキル』なのにね」


 この人のスキルは戦闘向きなものなんかじゃない。

 にも関わらず、仲間がいるのはスキル『虚言者』が関与しているからだろう。


 俺たちの会話中も男の暴言は終わらない。そして、それを止める者もいない。

 『虚言者』というスキルは本当に胸糞悪い。

 無理だとは思うが、一応頼んでみるか。


「……後ろの方、パーティーメンバーですよね? やめるように言ってくれませんか? 」


 そんな俺の頼みを薄く笑いながら、首を横に振り拒否する。

 

 ハァ、とため息をつく。

 自分の力で助けてみるか。

 だが、今すぐは無理だ。『虚言者』の条件を突く必要がある。

 

 男が暴言をぶつけていた仲間を殴りかかる。

 

 一度の拳では飽き足らず、男は追撃をする。

 それを俺はあえて防御なしで代わりに受ける。

 ――これで俺の勝ちだ。


 木節以外のパーティーメンバーは俺を異常者だと、誤解しているだろう。

 『虚言者』は偽りの証拠を作り出すという能力だ。そして、たとえその事件を目撃したとしても、直接関与していない者たちは、その証拠を信じてしまう。

 だが、事件そのものを消すことはできない。

 だから、俺は暴言をぶつけられていた奴に一度だけ、拳を当てさせた。その後、俺も拳を受けた。これにより、俺たちは『被害者』という立場を確定させる。

 そして、『虚言者』で犯人をなすりつける場合は条件がある。それは、本名を知っている、ということだ。

 これは俺の憶測だが、俺の存在を認識した後、暴言を開始したのだと思う。俺になすりつけるために。

 だが、この状態で俺になすりつける場合、『空賀龍輝が空賀龍輝に暴力を振るった』というものになってしまう。もし、俺と暴言をぶつけられていた奴が殴り合っていた、と言われた場合でも両者が合意の上、と言い訳すれば、罰を受けさせられることはないだろう。

 

 暴言をぶつけられていた奴が合意の上ではないと、言い放つと俺の敗北に終わる。だが、顔を見ればそんなことしないとわかる。

 それほど暴言をぶつけ……彼女の瞳には涙が顔をのぞかせていた。


 木節は俺と彼女が殴り合っていた、という証拠を作り出すべきだ。だが、俺は負けを味わってほしい。そのため、少しでも木節が完敗する確率を上げる。


「逃げたほうがいいんじゃないですか? 理解していると思いますが、ピンチですよ」


 さぁ、逃げるという選択肢を取れ、俺に負けろ。


「……逃げる……わよ」


 悔しがる顔を見て、俺の気分は最高値に到達する。

 さて、トドメのドヤ顔でも決めておくか。

 

 そのドヤ顔を見て、より悔し顔が強くなるが、木節たちはドタバタとギルドから飛び出す。


「……ざまあみろ。だが、今までの借りはまだ残ってるからな」


 周りの視線は俺に集まる。だが、そんなこと気にせず、初勝利の余韻に浸る。


 俺は彼女の座る席の真正面に座る。


「……大丈夫か? 助けるのが遅くなったせいで、一回殴られただろ」


 彼女が殴られたのは作戦のうちではあった。だが、申し訳なさが俺の中には存在する。

 彼女は中学生くらいの年齢だ。そんな彼女があの男の拳を受けるのは、相当な苦痛だろう。


「……いぇ、大丈夫です。助けていただいて、ありがとうございます」


 彼女は頭を下げながら、礼を言う。


「頭を上げてくれ。木節とは因縁があったんだ。だから、これは自分のためにやったことだよ」


「そうですか。わかりました」


 うん? なんでそんなにあっさり頭を上げるの?

 えっ、だって俺は君のヒーローなんじゃないの? 例えば「なんでも言う事聞きます」だったり、「この恩は絶対に返します」とか、言ってくれるものじゃないの?

 木節はテンプレ通りだったのに、この子は完全に逸脱している。


「では、私はこれで」


 えっ、嘘でしょ。マジで言ってんの?

 俺の心のなかでのツッコミなど気にせず、彼女もギルドを出る。


「……マジかよ」


 今日は木節への勝利以外、全て惨敗だ。

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