ソロ攻略してみるけど、
「受け取れませんよ」
「はい? 」
驚くほどかすれた声、あっけらかんとした顔、それが今の俺だ。
俺は討伐したうさぎ肉をギルドで提出しているところなのだが、「受け取れない」という返答に困惑している。
「今回の依頼はうさぎ肉を提出する、というものですが、この肉は毒が回っております。そんな物を欲する変人などいません」
「……血抜きとかすれば大丈夫なんじゃ? 」
「これを見て、そんなこと言えますか? 」
そこには紫色に変色したうさぎ肉が置かれている。狼をセットしたせいか、微かに悪臭を放っているのがわかる。
ものわかりの良い俺は諦める、という結論を出す。
「じゃあ、処分しておいてください」
「処分にも費用が必要になりますが、それでもよろしいですか? 」
最悪だ。報酬ゼロでは飽き足らず、マイナスなんて。けど処分方法なんて知らないからそうしてもらうしかないよな。
「……お、お願いします」
泣き叫びたい。もう、やだよこの世界。俺という存在はどれほど不遇扱いを受けなきゃいけないんだよ。
その後、諸々の手続きをした後、ギルドを後にしようとするが、兎をセットしていたせいで雑談が耳に入る。
「……なぁ、アイツ、『稀スキル』らしいぜ」
「マジかよ! そりゃかわいそうだぜ」
『稀スキル』。その言葉だけ聞くと強力なスキルと勘違いするだろう。だが、実際は不遇な扱いだ。
この世に出回るスキルのほとんどが、剣技や魔法などの才能を上げる、というものだ。それ以外を『稀スキル』と呼ぶ。
才能を上げるスキルはシンプルで扱いやすく、パーティーでの連携を取りやすいという利点がある。
だが、俺たち『稀スキル』は何かしらの条件の下強力、という扱いづらいスキルとなっている。
俺のスキルでは『殺す』、というとんでもない条件が課せられている。
そんな俺の『簒奪者』という暗いスキルを所持した奴なんて、誰も関わりたくない。そのため、俺は常に一人だ。
早く宿へ帰ろう。これ以外ここにいたくない。
――こうして、今日が終了した。
***
翌朝、俺は『青龍の塔』の前へ来ていた。
昨日の損失を取り戻す、自分の限界を知る、これら二つのためだ。
俺は深く息を吐き、決意を固める。
――よし、行くぞ!
俺は足を踏み入れた。
第一層。薄暗く、冷気が漂う洞窟内。
視界が悪いが、そこはアビリティで補おう。
各階層のクリア方法はその階層に出現する魔物を、全種類討伐すること。
まぁ、俺はクリア方法が違ったとしてもそうしていたが。
狼の嗅覚を頼りに辺りを索敵する。
……いる、上だ。
上を見上げると、そこにはコウモリがいた。ただ、デカい。あれは『オオコウモリ』だろうか。
前世の記憶を信じるのなら、奴はフルーツを食べるらしいが、この世界では……違いますよね。
口元から飛び出している牙がものがたっている。私は肉食です、と。
俺とオオコウモリは目を合わせている。どちらも行動はしない。そんな時間数秒続く。
だったら、俺の方から仕掛けるか。
俺は近くに転がっていた、小石を手に取り投げつける。
魔法が使えれば良かったんだが、あいにく俺には魔法の才能がない。
石を回避し、翼を広げ飛行する。
それを兎のアビリティである、発達した脚力を使い、斬りかかる。
その斬撃はかすりはするが、かわされてしまう。ただ、かするだけで俺は勝つ。
蛇のアビリティ毒。
セットしておいてよかった。これでアイツは死ぬ、……はず。
アイツの生き生きとした動きになんだか心配になってくる。
毒耐性とかないよね?
攻撃を仕掛けてこないため、俺は観察する。
少しずつふらつき始めるが翼を動かしている。死には至らないようだ。やっぱ、強いな。
ただ、弱ったアイツなど簡単に倒せるから問題ないんだが。
俺はもう一度斬りかかり、トドメを刺す。
さて、どんなアビリティだろうか。
<<アビリティ>>
オオコウモリ:スキル『反響定位』が使用可能
反響定位。索敵能力が増えるのはありがたい。
ここら一帯は血肉の匂いで充満してしまい、嗅覚が機能しない。そのため、狼と交換することにしよう。
――よし、試してみるか。
目を閉じスキルを発動する。
すると、見るとは違い触るという感覚のほうが近いだろうか。周囲にある岩たちのおおまかな形を理解することができる。
このスキルは不意打ち対策になってくれそうだな。
そろそろ、アビリティの確認は終えて、進んでみるか。
***
――数時間後。
第一層にいる大半の魔物を狩ることに成功した。
順調に進んでいる。入るのを渋っていたが、案外俺は強いようだ。ソロでもやっていけるんじゃないか?
おっと、慢心は良くないか。まだ、第一層。全九十九層もあるんだ。まだまだ、強い魔物が大量に出てくる。
……おっ、俺は運がいいな。まだ、討伐していない魔物が来てくれたようだ。
……この形、スライムか?
反響定位で確認すると、丸い物体がその体を震わせながらジャンプして移動している。
おいおい、スライムなんて序盤に出てくる魔物の定番だ。弱いに決まってる。
スライムが俺の視界に入った瞬間、斬りかかる。
……き、切れない。
俺の当てた斬撃はスライムの形を歪ませただけで、切傷など一切無い。
今度は蹴りを入れてみる。だが、効果は今ひとつのようだ。
あぁ、これっていわゆる『物理耐性』ってやつか。
俺は一度距離を取り、様子を伺う。
すると、口から液体を発射してくる。
俺は難なくそれを回避する。
だが、その液体の効果に驚愕する。これは『酸』だ。
……逃げるか。勝てるビジョンが見えない。
空賀龍輝は異世界転生して、スライムに殺された。そんなのは絶対に嫌だ。
――俺はすぐさま走り出す。
狼のアビリティを外してしまったことにより、持久力は失われていたが、兎の脚力により逃げ切ることに成功した。
だが、体力がもうない。
ずっと深く呼吸をしていたせいで喉が痛い。
――もう、帰ろう。
俺は塔を出る。
タイムリミットがあるにも関わらず、こんなところでつまずくなんて。
今の俺に必要なものは……
「……仲間……だよな」




