焦土の戦場
19
「……アブッ!!」
……やべぇ。
なんとか、掠り傷程度で抑えてはいるが、すぐに限界がくる。
「……みつ……け……」
掠れた声だ。
うまく聞き取れなかったせいで、放たれた言葉は理解できなかった。
「……いッ!!」
また、手が伸びてくるが、なんとか体を捻り、回避する。
「……ま……て……」
――また、攻撃!!
だが、今回は……抗わせてもらうぜ。
――一歩下がる。
ただ、その程度じゃ、回避も反撃もできない。
だが、今回はその程度で終わってねぇ。
俺の元いた地面に、彼女は足を運ぶ。
――すると、突然、竜巻が発生し、彼女は体勢を崩す。
これは、目眩まし。
……本命は俺自身!!
俺は彼女の懐に入り、腹に拳を叩きつける。
――もちろん、終わりじゃない!!
二段攻撃。
俺は拳から、強烈な上昇気流を発生させる。
「ここには、俺以外もいるんだよ」
理由は知らないが、コイツは俺しか見ていない。
――だから、アイツに背中を取られる。
上空に打ち上げられた、彼女。そのさらに、上には――海隅がいる。
本当に凄まじい身体能力だ。
風で簡易的な足場を作ってやったが、まさかあれほど上へ行けるとは。
さっき、背中に光が見えた。コンボは一切ないが、相手は人間。かなりのダメージなはずだ。
海隅は体勢を整え、彼女へ剣を斬りつける。
――すると、彼女の背中から、紅色の鮮血が溢れ出る。
俺は海隅の着地のサポートをし、彼女の方を見る。
彼女は地面に叩きつけられ、周囲に煙が舞う。
海隅が着地をし、俺の方へ駆けてくる。
そして、安堵の息を吐きながら……
「……ふぅー。倒せたみたいだね」
「……おい。……それフラグなんじゃ」
ていうか、なんで煙が舞っているんだ?
下は土じゃないはず……。
――そう思った瞬間。
息苦しいほどの熱気が、煙から放たれる。
「……くっ!」
熱気に顔を歪ませながらも、煙の方向を見る。
――煙に一つの影が見える。
それは、人型などではなく、巨大。
その影はズルリ、という地面が擦れる音を発しながら、こちらへ近づいてくる。
次の瞬間、煙が吹き飛ぶ。
――視界が開ける。
彼女の足は消えていた。
代わりに、長い胴体がうねっている。
そして、表面には薄く光る鱗。
人間の面影は消えていた。
この見た目は……
「……蛇……か?」
奴の姿に動けずにいると、バチバチ、と音を立てながら、奴の口の奥で炎が揺れ動くのが見える。
……絶対にヤバい!!
俺たちの周囲を気流で守る。
――次の瞬間、炎が奴の口から溢れ出る。
気流が、俺たちと炎との距離を保ってくれた。だが、それでも肌が焼ける痛みを感じる。
この状態を続けるのは、危険か……。
炎への対抗策は――これだな。
<<アビリティ>>
蛙:粘液の生成
手のひらに、ヌルリと嫌な感覚を感じさせる、粘液が生まれる。
……気持ち悪い。けど、これくらい我慢しろ。
風に粘液を乗せ、消火に試みる。
粘液が炎に触れた瞬間、ジュッ、という音が鳴る。
すると、粘液の触れた部分の炎は、勢いが静まる。
小さくなった炎くらい、風で押しのけられる。
俺は炎を無理やり横へ退かし、脅威を離す。
炎が退き、視界が開けた瞬間、俺へ頭から突撃してくる奴が見えた。
「……ハトの動体視力、舐めるなよ」
その攻撃を紙一重で横へ避け、反撃を試みる。
背中には、さっきの傷がある。
そこをさらに二人でえぐってやる。
奴の背中を見る。
――その背中には、傷が完全に消えていた。
……おいおい、変身したら全回復するタイプの敵かよ。
それは、ゲームの中だけにしとけよ。
――ただ、隙は逃さない。
極小の風の刃を9個作り出し、奴へ向かわせる。
その9個は的確に光に当てる。
「二倍まで運んだぞ」
失敗から何も学ばず、俺だけを奴は見ている。
だから、海隅が致命傷を与えやすい。
今回はサポートに回らせてもらおう。
永久輝のスキルで二倍まで、威力が上がるが、さらにダメ押しさせてもらおう。
海隅の剣に風を纏わし、回す。
追い風を作り、速度を上げる。
上げた速度を殺さず、海隅の射程内に奴の背中が入る。
――そして、渾身の一撃がぶつけられる。
海隅の剣は鱗を貫通し、肉を切り裂く。
ただ、もがきが一切ない。
受けた攻撃、攻撃的な相手、どちらにも奴は目線を向けない。
――奴の目は俺だけを見ている。
よくわからないが、奴が生きているのは確か。
さっさと、追撃でトドメを刺す。
――そう思った瞬間、奴は俺の真横に現れる。
「……くっ!!」
風で無理やり、自分を吹き飛ばし、伸ばしてきた手を回避する。
……なんで動けんだよ。
空に自分を吹き飛ばした俺は、受け身を取り、着地する。
目線を上げると、異様な光景を目にする。
「……再生している!?」
おいおい、マジか。
再生能力は変身直後のみじゃなく、常にかよ。
チートすぎるだろ。
奴は俺へ向き直り、口元に火花をちらつかせる。
炎を吐く予備動作!
――早く粘液と風を!!
なんとか、粘液と風を間に合わせ、炎を防ぐ。
だが、攻撃はこれで終わっていなかった。
まだ、炎が残っているにも関わらず、俺へ突っ込んでくる。
肉が焦げる匂いが鼻を突く。
――ダメージ覚悟の攻撃!!
……だが、俺には好都合。
こういう敵には……
――オーバーキルだ!!
周囲に轟音とともに風が吹き荒れる。
その風は血肉により、赤い。
……流石に、死んだだろ。
今までの俺ならば、これほどの大技を放つと、倒れていただろう。
だが、今はなんとか立てている。
……自分の成長が感じられるぜ。
――勝利。そう思っていた。
……だが、違った。
「……おいおい」
俺の目に映るのは、動く肉片。
その肉片は少しずつ大きくなり、鱗が生えてくる。
――そして、何事もなかったように、奴はそこにいた。




