結局、担がれる
「武器、新しく新調しなかったんですね」
「黙れ」
三十四階層で、そんな質問をされたが、あっさり切り捨てる。
「その反応を見るに行ったのは確かのようですね。では、なぜピカピカではなく、ボロボロの短剣が腰に下げられているのですか?」
「人間は、他人に触れてほしくない現実が存在するものだ。だから、お前も知りたくても我慢しろ」
「……で、その現実とは?」
「だから、我慢しろよ!!」
「我慢は精神を疲弊させてしまいますよ。私をそんな状態にするつもりですか」
「話さなくていいんだったら、俺はそんなお前を見捨てる。どうせ、自業自得なんだからな」
「最低ですね。助けられたにも関わらず、そんなことをするなんて」
「人の傷をえぐるお前の方が最低だろ」
などと、いがみ合っていると目的地に到着する。
いつ見ても間抜けな姿だ。
裸で糸に吊るされた五人組。
「一晩って、言ってただろうが!! 二晩待たされたぞ!!」
「犯罪者が何言ってやがる」
俺は少し引き気味にそう答える。
コイツらは臓器売買をしているクソ野郎ども。
以前、ここに吊るしておき、明日にでも連行しようと言っていたのだが、それどころではなくなり、二日が経ってしまった。
ま、別にそんなことはどうでもいいか。
「じゃあ、運ぶか」
糸を直接巻き付けると、通行人に俺らが人間を運んでいるヤバい奴、という扱いをされてしまう。
そのため、人間がすっぽり入る大きな繭を作り、そこに一人ずつ入れる。
まあ、これでもかなりヤバいやつだが。
***
――その後、何事もなく奴らを引き渡すことに成功した。
……噂は広まったかもしれないが。
そんな俺たちはもう一度、三十四階層へ戻ってきていた。
そろそろ、上へ上がりたいしな。
目の前には前回、痛い目に遭わせてきやがったキツネ。
コイツらには一目連の的役になってもらおうか。
右手を前へ突き出す。
前回と同じ失敗などする俺じゃない。
手のひらに風を作り出し、照準を合わせる。
――そして……放つ!!
前回より威力が低く、木々は大きく揺れる程度。
ただ、荒々しい風が葉、服、髪を靡かせる。
――数秒後、上からキツネたちが降ってくる。
かなりの高さから落としたし、原型が保てていないのは当たり前か。
魔力を消費した感覚はあるが、体は動く。
どうやら、成功したようだ。
魔法と体の繋がりを遮断する、これが正解か。
ま、代わりに威力とかコントロールは雑になったけど。
「……すごいね。もう使いこなせてるなんて」
「なんて言ったって、俺は才能の原石だからな」
自画自賛が止まらないほどに、強くなったのを感じる。
さすがは神様だな。
――突然、俺の左腕に何かが突き刺さる。
それは動物の牙、ただ体重は軽い。
右目で姿を確認すると、そこにはオコジョが俺の腕に噛み付いていた。
俺はそれを風を使い、振りほどく。
数は、一、二、三……。
反響定位で確認したのだが、数えるのも馬鹿らしくなるほどの数がそこにはいた。
あー、これはあれだ。
さっき起こした風が発した爆音が、コイツらを連れてきたやつだな。
……俺、戦犯じゃねぇか。
的が小さいし、海隅に頼ることは難しい。
……これしかないよな。
――風が吹き荒れ、周囲の木々を巻き込みながら、全てを削り取っていく。
***
……結局かよ。
この状況にデジャヴを感じる。
またもや、海隅に担がれ帰路につく俺。
格好のつかないったら、ありゃしない。
「……おい、笑ってんじゃねぇよ」
俺の状態に二人は微かに笑みをこぼしている。
……クソッ、次は絶対に立ったまま帰ってやる!!




