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間違った憧れ


 俺は知っている、『死』を。

 あれを二度と味わいたくないと思う。

 ……見るのも、聞くのも御免なんだよ。

 だから今、気分がとても悪い。――ただ、殺したくはない。


「なんでこんなことしてんだ?」


 目の前にいる男は驚いている。

 これはおそらくだが、今、担がれている俺の姿にだろう。

 格好がつかないんだよな、俺は。


「……は?」


「いやいや、理由だよ。こんなことしてる。まぁ、十中八九、金のためだろうけど」


 こういう奴らは金を欲している、というのがセオリーだ。


「……その通りだ。俺たちは金のためにこの仕事をしている」


「こんなことしているのは、お前らだけか?」


「……いや、違う」


 やっぱり裏の存在がいるんだろうか。

 ただ、否定の仕方が少し奇妙だったな。


「上の存在、ということか?」


「……いや、組織などはない」


「だったら、雇用主がいるということか?」


「……それも違う」


「じゃあなんだよ」


 組織も雇用主もない、だが他にもいる。どういうことだ?


「……俺らはただ憧れたんだ。……たった一人に」


「憧れた?」


 あまりに意外な返答に、思わず反復してしまう。


「あぁ……見た目も、声も、実力も詳しくは知らない。だがソイツの噂を聞き……憧れた」


 憧れる存在はもう少し選べよ。

 そんなクレイジーな奴の背中なんて追うなよ。


「馬鹿みたいだ。そんな奴に憧れて、人殺しを始めるなんてよ」


「別に共感なんて求めてない。富とその存在だけがあれば、俺たちには生きていける」


 分かり合うことはできないな。

 まぁいいや、話題を変えよう。


「話題は変わるが、お前ら弱すぎないか? 本当に『守護者』を倒したのか?」


 怒りの視線を向けられる。

 ただ、海隅一人で相手できる奴らが、守護者を倒すことなどできるはずがない。

 何かしらのズルをしたんだろうな。


「俺たちの力で倒したに決まってんだろうが」


「イカサマしたんだろ?」


 すると歯を強くかみしめた後、怒りに任せ、叫び出す。


「そんなわけねぇだろ。俺たち五人の実力で倒した。これには一切の虚言はない」


「あっそ」


 ……いや待てよ。

 そういえば、守護者はパーティーによって変化するんじゃなかったか?

 そう考えると辻褄が合う。


「……本当に討伐したんだな?」


「あぁ」


 もし、コイツの言うことを信じるのなら、もしかして俺たちは大ハズレを引いたんじゃないか?

 

 ――いや、良くない想像はやめよう。


「もう、聞きたいことはなくなったし、とりあえずコイツらを拘束して、塔を出たいんだが、俺は動けないし、まだ依頼もこなせていない」


 とりあえず、蜘蛛の糸を出し、拘束の準備をする。


「どうするんですか? 空賀さん」


「依頼を優先する。ただ、そうすると、流石に五人は運べない。だから、コイツらはそこら辺の木にでも貼り付ける。もちろん、身ぐるみ剥がした後な」


「……容赦しないんですね」


 まぁ、流石に死んで欲しくないから、それなりに高い木を探さなくてはならないがな。


 ***


「……おい。本気なのか」


「当然だろ。お前らはスッポンポンで一晩過ごして反省することだな」


 最初の余裕はどこへやら。

 木に五人全員吊るされ、見るに堪えない姿へと変貌したコイツらに、笑みが止まらないぜ。


「お前ら無様な姿だな」


「空賀さん。あなたが言います?」


 海隅に担がれていることは忘れさせてくれ。

 海隅は魔石がパンパンに詰まった鞄と俺を持ってくれている。

 もちろん、永久輝も魔石の入った鞄を背負っているが、大半は海隅が持っている。

 ……本当に海隅には頭が上がらないよ。


「重くない?」


「これくらい大丈夫だよ」


 微笑みながら、そんな事を言ってくれるなんて、本当に優しいなぁ。

 ……ちょっと人間やめてる節があるけど。


 何はともあれ、これでようやく帰れるな。

 今日は早く寝よう。

 ……日光は、見ないようにしないとな。


 草むらから、何かが擦れる音が聞こえてくる。

 ……嫌な予感が。

 

 ――次の瞬間、青紫色のキツネが顔をのぞかせる。

 俺は魔力切れ、海隅は大量の荷物を抱えている、永久輝は元々戦えない。

 おっと? ヤバいんじゃないですか?


「に、逃げろぉぉー!!」


 今回ぐらい、何事もなく終わらせてくれよ!

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