表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/22

無双した後は


 ――三十四階層。

 目の前には木々の生い茂った、存在感の強い山がそびえ立つ。

 この山は鉱山であり、さまざまな鉱石を収集できると聞く。

 

 もちろん、これは依頼をこなすのが第一目標だが、『一目連』の試運転も同時並行するつもりだ。

 三十四階層以降は中層とされ、魔物のレベルが上がっている。

 流石に一目連レベルの魔物がぞろぞろと出現することはないと思うが、気は引き締めるべきだな。


「それじゃあ、行くか」


 ――俺たちは山の麓へ向う。


 

 ……ダチョウ。

 いや、ダチョウと呼んでよいのだろうか。

 ところどころ、宝石が体から顔を出しており、前世の記憶に存在しない生物に変化している。

 ダチョウは石を食べることがあるらしいが、アイツは鉱石を食べたんだろうな。

 ……あれ? でも石を食うのは栄養を摂るためではなかった気が。


 考えている時間が無駄に感じてきたため、俺は『一目連』をセットする。

 一目連は視界が悪くなるから、嫌いなんだなぁ〜。


 ――次の瞬間。ダチョウ? の体の鉱石が一直線に、弾け飛ぶ。

 ……防御力とかじゃないんだ。


 俺たちの前方に気流を発生させ、軌道を逸らす。

 ……やっぱりだ。

 鉱石が顔を覗かせていないのを見るに、クールタイムが長いのだろう。


 その隙に俺は右腕を前へ突き出す。

 手のひらに風を集中させる。

 風が俺たちの服、木々の木の葉、周囲の小石や砂を巻き込みながら手のひらに溜まっていく。


「覚えておけ、一目連は、竜巻をもたらす存在なんだよ」


 俺は竜巻の塊を放つ。

 

 それは周りの木々をへし折りながら、ダチョウ? に向かっていく。

 ……強すぎたか? ……いや、絶対にやりすぎた。


 周囲は風により削り取られていた。ダチョウ? の跡形は存在しなかったように消えていた。

 ……凄まじい、だが……。


「……すごいですね、空賀さん。……何してるんですか?」


 立てない。

 あ、足が機能してくれない。


 ――その後は海隅に抱えてもらい、移動することになった。

 ……俺、かっこわる!


 ***


「これ、魔石じゃない?」


 いや、そんな事言われても、担ぎ上げられているせいで、見えないのよ。


「この独特な淡い光は間違いなく、魔石ですね」


「……俺にも見せてくれ。なんだか気になる」


 海隅が体勢を変え、俺に魔石を見せてくれる。

 魔石は永久輝の言っていた通り、淡い光を放っている。

 その他の特徴は白色なことくらいで、前世で見た宝石とほぼ同じだ。


「……じゃあ、二人とも回収してくれ」


 こういうのは俺たち男性陣の仕事かもしれないが、歩くことすらできない俺には無理そうだ。


 二人が作業しているのを俺はただ、ぼーっと眺めている。


「なんだよ。力が入らないんだから、仕方がないだろ」


 永久輝が無言で俺を睨めつけてくる。

 今の俺の状態はいわゆる『魔力切れ』というやつなんだろうか。

 魔法が使えなかったため、わからないが。


 ――誰か来たな。

 狼の嗅覚により、人間が来ているのを察知する。

 なんだろうこの匂い。調理された肉に香辛料を入れた香り。……うん? この匂いは


「……あ? なんで人間がいるんだよ」


 男の声。声質から考えて、それなりの歳だろう。

 声の主の方向に視線を向けると、後ろに四人の男性を連れているのがわかる。

 ……あの匂いの正体、一応聞いてみるか。正直に答えるかはわからないが。


「何か狩って素材を手に入れたんだな。ただ、この匂いは魔物とは違うんだが、何を狩ったんだ?」


 この疑問をぶつけることにより、二人も警戒を始めてくれるだろう。

 仲間が死んだ、これくらいしか俺には言い訳は浮かばないが、コイツらはなんて言うんだろうな。


「人間だよ。人間の臓器は高く売れるんだ」


 わぉ、ドストレートかよ。

 人を殺すのは当然のこと、とでも言いたそうな目をしてやがる。それなりの強者と見るべきか。

 海隅は俺を降ろし、戦闘体勢に入る。


「塔はいいよな。人の目なんてめったにありゃしない。まぁ、来たやつを全員殺してるからなんだけどな」


 もろ悪役じゃん。

 コイツは余裕を感じているためか、ベラベラ喋る。

 もしかしたら、この疑問も解消してくれるかもな。


「なんでこの階層なんだ? 下層なら弱い冒険者しか来ないはずだろ?」


「飽きたからだな。弱すぎるんだよ、下層の奴らは」


 なんじゃそりゃ。アンタらは戦闘民族かよ。

 だがここは中層、それなりの実力はある。

 五対一か、海隅は大丈夫だろうか。

 

 心配だが、俺にはこれくらいしかできないんだよな。

 俺は神経を集中させ、海隅の長剣に風を流す。

 風を刃に沿って回転させ、切れ味が頂点に達した剣を完成させる。

 これで魔力はスカンピンだ。


 ――頑張れよ、海隅。


 

「てめぇら、売り物になってもらうぞ」


 次の瞬間、矢と魔法が放たれる。

 ――この軌道はまさか……狙いは俺かよ!

 動けない俺が回避なんてできるわけない。


「……ぐっ!」


 誰かが俺の服の襟を引っ張り、無理やり動かした。

 首は締まったが、助かった。

 後ろを見ると、永久輝がドヤ顔を見せつけてきた。今じゃないでしょ。


 海隅は持ち前の脚力を使い、奴らとの距離を詰める。

 本当に海隅は足運び、剣技、身体能力の全てが人間離れしてるんだよな。

 一度、体術のみの組手を挑んでみたが、結果は……まぁ、言わなくてもわかるよな。


 海隅の狙いは、弓使いと魔法使い。

 奴らは近接が弱点なため、抵抗虚しく簡単に切払われる。

 魔法使いは腕を、弓使いは肩を斬られうずくまっている。


 残りの三人は海隅が強者ということを理解したのか、全員で襲いかかってくる。

 一人は斧、もう一人はハンマー、最後の一人は剣と盾を所持している。

 さっきの二人とは違い、この三人はガタイがいい。

 普通だったら、刃を通すのは難しいだろうな。


 盾持ちが中央に立ち、右から斧、左からハンマーが振られる。

 ……動体視力半端ないな。

 海隅は斧の攻撃は回避し、回避の動作の一環のようにハンマー持ちの腕を切り落とす。

 ハンマー持ちは体勢を崩す。そこに海隅は蹴りを入れ、距離を離す。

 斧持ちが追撃しようとするが、海隅が足を斬り落とし、無力化する。

 

 ――残るは一人。

 

 ソイツの顔は絶望という文字をそのまま貼り付けたかのように、気持ちが読みやすかった。


「海隅、殺すなよ」


「わかってるよ」


 いやぁ~。殺してしまったらどうしようと考えていたが、大丈夫そうだね。

 海隅が一歩近づくが、アイツは何も行動しない。

 

 ――もう、戦闘終了かな。

 アイツには戦意がもう存在しないようだし。


「永久輝、俺を運べるか?」


「無理です」


 そ、即答かよ。

 仕方ないな、みたいな顔しながら海隅が俺を背負い、アイツの元へ連れて行ってくれる。

 

 ――さて、色々聞かせてもらうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ