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おい、風魔法使えよ

作者: アフト

「空飛ぶのたのしぃぃぃぃいいいいい!」


リューベルトは雲より高く飛び上がり、叫んでいた。


初めて魔法を習った時、アフトは“まず、空を飛んでみないか?”そんなことを言われた。


アフトは生まれつき、感情が薄い人間だった。


ぼうっとしてるとあっという間に1日が終わってしまう。食べるのも寝るのも人の勧めがなければできなかった。


周りが必死に自分を生きさせよう、とするのはとてもありがたいことだ。と、アフトは思っている。


貴族という身分に生まれ、父と母の愛を受けて育てられた自分はきっと幸せなのだと、そう思っている。  


そんな自分を幸せにしてくれた周りの人のためなら、きっと命だって投げ出せるよ!そんな風に自分の最大限の感謝を込めた言葉は、思ったように両親を喜ばせられなかった。


もっと自分を大事に、ね?そんな両親の言葉を頭では理解したが、心では理解できなかった。


「心ってなんだろ。」


アフトは常にわからなかった。自分は完全に心がないわけではないのだ。愛とか憎しみとか怒りとか感じることはあると思うのだ。ただそれがただそれがとても薄いだけで。


どうしてこんなふうになってしまったのか、自分でもわからない。でもこうなりたくなかったと思うわけでもない。結局自分のことなどよくわからなかった。


けど、初めて楽しいと言う感情が理解できたんだ。空を飛んだとき、


「魔法って楽しい!!」


そう。アフトは初めて楽しいと言う感情が理解できたんだ。だからのめり込んだ。


魔法と言うのは素晴らしい。空を飛び、雲を切り裂き、モノを運ぶ。


そうやって学んだ。数々は、人の生活を助けることにも役立った危険な魔物を討伐し、重いものを運んだりしてありがとうございます。アフト様そう呼ばれる事は楽しいと思えた。


「大変変わられましたね。」


婚約者であるレーんにそう言われた時、確かに自分は変われたのだとアフトは思った。それを嬉しいと思えた。そう。魔法は自分を変えてくれたのだ。


だからアフトは魔法愛しているし、きっと魔法もアフトのことを愛してくれていると思った。だって魔法はこの風はこんなにもアフトの言う通りに動いてくれるのだから。


けれど、あの時、自分の大切な家族が婚約者が領民が恐怖にさいなまれている時、その敵に風はいつものように動いてくれなかった。


それがアフトにはとても許せなかった。初めて自覚する。楽しい以外の強い感情、それは憎しみ。それはあまりにも強くアフトの身を焦がした。


そして、


「馬鹿な?!どうして!」


魔法の使えないはずのその空間の中で、アフトは炎をまとっていた。魔法の炎が暗くなるほど、心の中で押し殺され続けた黒い炎。


あらゆるものを焼き尽くた。


まず、婚約者を殺した敵を。そして領地のすべてを焼き払った。その中には、焼け焦げた人の姿もあった。


そしてアフトは自分はここにいるべきではないそう強く思い、その日のうちに落地を出た。悲しいかな、少年の心を最も強く動かしたのは、ここにいるべきではない、と言う自分への排他の感情だったのだ。


そしてまた薄い感情に戻った少年は一人旅を続ける。


自分の生き方を、探したかった。


死んでいた方がマシ、そんな人生だったと終わりの最中に言わないで済むように、少年は生きているのだった。

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