ミュートされた告白*ChatGPT使用
「なんか変なんだよね、この部屋」
そう言ったのは、ルームシェア相手の伊吹。
2人で住んでるこの1LDK。オートロック、防音、24時間ゴミ出し可能という“東京での奇跡”みたいな物件。
だけど、ここ数日、不可解なことが起きていた。
誰もいないはずの時に、冷蔵庫の中のものが減っている
スマートスピーカーが勝手に反応する
玄関の靴が、微妙に位置が変わってる
「てか……気づいてた?最近、誰かに見られてる感じしない?」
伊吹は笑って言ったけど、俺は正直、ゾッとしていた。
俺はこの異変を、こっそりSNSに投下していた。
「同居人に言えないけど、部屋に“もう1人”いる気がする。
物が勝手に動いてる。でも記録は何も残らない。
気のせいですか?」
この投稿が、深夜のバズを呼んだ。
コメント欄はこんな感じだった:
「物理的な侵入より、心の侵入が怖いよな」
「ルームシェアしてる時点で人生ハードモード」
「スマスピが勝手に起動するのは命の前兆(※迷信)」
誰もまともなことは言ってくれない。
でも、フォロワーの一人がこう言ってくれた。
「証拠、集めてみたら?見えないものでも、履歴には残るかもよ」
その夜、俺はスマート家電の履歴を調べた。
スマートロック:22:08開錠(俺が帰宅)
スマスピ:22:32「誰かいるの?」という声で起動(録音ナシ)
冷蔵庫のドア開閉:22:41(俺、寝てた)
なにこれ。
ほんとに誰か、いる——?
次の日、伊吹が突然いなくなった。
私物もそのまま。スマホも置いてある。
部屋に鍵をかけたのに、外には出た形跡がない。
玄関のスマートロック履歴も「開閉ナシ」。
本気でヤバいと思った俺は、SNSにもう一度だけ書いた。
「同居人が消えました。警察に言うべき?それとも夢?」
コメント欄が荒れた。
「構ってちゃん乙」
「でた、AIに乗っ取られた同居人」
「“共感性ホラー”やめろマジで寝れん」
深夜3時、通知が鳴った。
伊吹のアカウントから、1通のDMが来ていた。
「ミュート、解除してくれてありがとう。
見てくれてると思ってた。」
……は?
俺、伊吹をSNSでミュートしてた。
気まずい呟きが多くて、通知がウザくて、つい——
いや、でも。
これ、どうやって知った?
翌朝、玄関前で警察が立っていた。
何も言ってないのに。誰も呼んでないのに。
警察:「通報があったんです。“自殺をほのめかす声が、部屋の中からした”と」
俺:「……え?」
警察:「あと、部屋のスピーカーから“たすけて”という音声が定期的に流れていたと」
俺:「まって、それは……伊吹……?」
捜索の末、押入れの中の収納スペースで、伊吹が発見された。
体力を消耗し、意識は朦朧としていた。
彼は言った。
「ドア、閉まったの。勝手に。……出られなくて。
でも、声は届くと思って……スマートスピーカーに向かって、ずっと話してた」
「……だけど、ミュートされてたんだよね。
SNSでも、現実でも、……君に」
あのとき、たしかにスマートスピーカーは反応していた。
でも、それは“俺の声”にしか答えなかった。
履歴に“録音ナシ”と出ていたのは、俺が「録音オフ」にしていたからだった。
伊吹の声は、どこにも記録されなかった。
「履歴には、残るかもよ」
そう言ってくれたフォロワーの言葉が、皮肉のように響いた。
見えていたのに、見なかった。
聞こえていたのに、聞かなかった。
伊吹のSNSアカウントには、こう書かれていた。
「人がいないって、誰が決めたの?
そこに“いる”って言ってるのに。」