第六十章 永遠のささやき
木漏れ日が優しく降り注ぐ森の小道。
戦乱の影が消え、未来へと歩み出す世界の中で——悠聖と紗江は、ただ二人だけの時間を過ごしていた。
——ドクン。
繋いだ手の温もりを感じながら、紗江はそっと目を閉じる。
(このまま、時間が止まればいいのに……)
そんな淡い願いを抱いていると、悠聖が立ち止まった。
「紗江」
低く甘い声に、胸が跳ねる。
「な、なに?」
振り向くと、悠聖はゆっくりと彼女の頬に手を添えた。
「お前がいる世界が、俺にとっての未来だ」
——ドクン。
彼の指がそっと頬をなぞり、熱が広がる。
「悠聖……」
名前を呼ぶと、彼はゆっくりと微笑んだ。
そして——
「お前の心の声を、これからもずっと囁いてくれ」
甘く低い囁きが、耳元に落ちる。
——ドクン、ドクン。
心臓が彼の言葉に支配されていく。
「……ずっと、囁き続けるよ」
誓うように言うと、悠聖は満足そうに微笑み——
そっと紗江の額に唇を落とした。
(この人となら、どんな未来でも——)
それは、二人だけの“永遠のささやき”。
未来へと続く、新たな物語の始まりだった。
——第一部 完——




