第五十九章 二人だけの未来
王都の門を抜け、悠聖と紗江は静かな森の道を歩いていた。
戦争の終わった世界は、ゆっくりと新しい未来へと向かい始めている。
——ドクン。
紗江は、そっと悠聖の手を握り直した。
彼は何も言わず、しかし確かに、指を絡め返してくれる。
(この温もりが、ずっと続けばいいのに……)
ふと、悠聖が足を止めた。
「紗江」
彼の声は、いつもより少し低く、静かだった。
「ん……?」
振り返ると、悠聖はまっすぐに彼女を見つめていた。
その瞳に、思わず息をのむ。
「これから、どこへ行く?」
彼の問いに、紗江は少し考える。
けれど、すぐに答えは決まった。
「どこでもいいよ。悠聖と一緒なら」
——ドクン。
悠聖の目が、わずかに揺れる。
次の瞬間、彼の手が紗江の腰を引き寄せた。
「っ……!」
近い——。
彼の体温が、全身に伝わる距離。
「お前は……俺なしじゃ生きていけないな」
低く甘い囁きが、耳元に落ちる。
——ドクン、ドクン。
胸が苦しくなるほど高鳴る。
「……悠聖こそ、私なしじゃダメなんでしょ?」
少しだけ意地悪く言ってみる。
すると、悠聖はゆっくりと微笑み——
「……ああ、その通りだ」
そのまま、そっと額を寄せた。
——ドクン。
彼の鼓動が伝わる。
「だから、もう絶対に離さない」
甘く優しい囁きに、全身が包まれる。
「……私も」
そう言った瞬間——
悠聖が静かに唇を寄せた。
「お前と生きる未来が、俺のすべてだ」
——ドクン、ドクン。
それは、未来への誓い。
二人だけの、新しい未来の始まりだった。




