第五十七章 ささやきのない世界
空が澄み渡り、新しい時代の風が吹き抜ける。
“ささやき”の消えた世界は、静かで——それでいて、不安を抱えた者たちも少なくなかった。
「未来が見えなくなるのが、こんなに怖いことだなんて……」
王国の兵士が呟く。
「だけど、それはきっと、俺たちが本当に生きるってことなんだろうな」
誰かの囁きに頼らず、自分の意志で進む。
それこそが、悠聖と紗江が選んだ未来だった。
悠聖と紗江は、並んで歩いていた。
——ドクン。
並んでいるだけで、彼の存在がすぐそばにあると分かる。
それが、何よりも心を落ち着かせた。
「これから、どうする?」
悠聖がふと問いかける。
紗江は少し考え——彼の袖をそっと引いた。
「……一緒に旅がしたい」
——ドクン。
悠聖が微笑む。
「なるほど、俺と二人きりで?」
「えっ……あ、違……!」
頬を染める紗江に、悠聖はくすりと笑い、彼女の手をそっと握った。
「冗談だ。俺も、お前と一緒にいたい」
——ドクン、ドクン。
近い。
彼の指が、優しく絡む。
「お前と歩む未来が、俺の選んだ未来だからな」
低く甘い囁きに、心が震える。
(もう、この人から離れられない……)
「……悠聖」
名前を呼ぶと、彼はそっと紗江の頬を撫でた。
「これから先、何が起きても——お前のそばにいる」
その誓いに、涙がこぼれそうになる。
「……私も、ずっと一緒にいる」
そうして、二人は新たな旅へと踏み出した。
これからどんな未来が待っていようとも——
彼の隣にいられるなら、それだけでいい。




