第五十五章 戦争の終結
夜空のように静まり返った戦場。
悠聖と紗江が選んだ未来——それは、“ささやき”の消えた新たな世界だった。
——ドクン。
紗江は、まだ悠聖の唇の温もりが残る自分の唇をそっと指でなぞる。
(これは、夢じゃない……)
確かに、彼と未来を選んだ証だった。
その時——
「……戦争は……終わったのか?」
兵士たちのざわめきが広がる。
悠聖は静かに剣を収め、紗江の手を引いた。
「これからは、お前たち自身の意志で未来を決めろ」
その言葉に、王国軍も帝国軍も、徐々に剣を下ろしていく。
「もう……戦う理由がない……」
「俺たちは、何のために……」
兵士たちの声が次々と漏れ出す。
——ドクン。
(みんな、気づいたんだ)
“ささやき”に操られるのではなく、自分で選ぶ未来を——。
紗江は、悠聖の横顔を見つめる。
彼は穏やかに微笑み、そっと彼女の手を握り直した。
「これで……本当に、終わるの?」
紗江が不安そうに尋ねる。
「いや……」
悠聖はゆっくりと彼女を引き寄せ、額をそっと合わせる。
「これが、本当の始まりだ」
——ドクン。
近い。
彼の鼓動が、紗江の胸に響く。
「悠聖……」
名前を呼ぶと、彼はそっと微笑んだ。
「お前と選んだ未来が、これからどうなるか——」
彼の指が、そっと紗江の頬をなぞる。
「一緒に、見届けよう」
甘い声に包まれ、紗江の心は完全に彼に囚われてしまう。
「……うん」
未来は、これから二人で歩んでいくもの。
そう、確かに感じながら——
二人は、夜明けの光を浴びた。




