第五十三章 最後の選択
管理者が消え、静寂が戦場を包んだ。
悠聖は紗江の手を強く握りしめながら、兵士たちを見渡す。
——ドクン。
誰もが困惑していた。
王国と帝国の兵士たちは、剣を構えたまま、だが誰も動かない。
(この戦いは……本当に終わるの?)
不安げな表情を浮かべる紗江に、悠聖はそっと微笑んだ。
「……このままじゃ、まだ未来は決まらない」
「悠聖……?」
その瞬間、彼は紗江の手を引き、彼女の目をじっと見つめた。
「最後の選択をしよう」
——ドクン。
彼の声が甘く、深く、心を揺らす。
「俺たちは、“ささやき”を完全に消すのか、それとも……残すのか」
未来のすべてを決める問い。
「紗江、お前は……どうしたい?」
悠聖の真剣な瞳に見つめられ、紗江は息をのむ。
(私は……どうしたい?)
“ささやき”が消えれば、未来を予知することはできなくなる。
けれど——
「……私は……」
紗江は悠聖の手を強く握り返す。
「私は、もう誰かの声に振り回される未来じゃなくて……私たち自身が選ぶ未来がほしい」
——ドクン。
悠聖の目が優しく細められる。
「なら、決まりだな」
彼はそっと紗江の髪を撫でた。
「俺たちの選ぶ未来を、みんなに示そう」
悠聖と紗江は、戦場の中心へと立つ。
「俺たちは、未来を“誰かの声”ではなく、自分たちの意志で選ぶ」
悠聖の声が響き渡る。
「“ささやき”に頼らなくても、人は生きていける。だから、俺たちはもう“導き”はいらない!」
——ドクン。
兵士たちが息をのむ。
そして——
「“ささやき”の力を、ここで消す!」
悠聖がそう宣言した瞬間、空に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
それは、“ささやき”を司る最後の残滓。
「紗江、俺と一緒に」
悠聖が彼女の手をぎゅっと握る。
「この力を、終わらせよう」
——ドクン。
紗江は悠聖の顔を見上げ、力強く頷いた。
「うん……!」
そして、二人は——
自らの手で、“ささやき”を消し去るための最後の一歩を踏み出した。




