第四十二章 封印された記憶
黒い雷が空を裂く。
“ささやきの管理者”と名乗る男が、静かに手を掲げると、周囲の空気が一変した。
「悠聖……!」
紗江は不安に駆られ、思わず彼の腕を掴む。
——ドクン。
彼の体温が、紗江の不安を和らげる。
「大丈夫だ」
悠聖が低く囁き、剣を強く握る。
「お前は俺が絶対に守る」
その言葉が、甘く心に響いた。
だけど——
「お前たちは、未来を変える力を持つがゆえに……この世界にとって異物だ」
管理者の目が淡く光る。
そして、次の瞬間——
「紗江、お前の記憶を封じたのは、お前自身だ」
——ドクン。
「え……?」
紗江の胸がざわつく。
「私が……?」
「そうだ」
管理者は静かに続ける。
「お前はかつて、自らの“心のささやき”を恐れ、その力が導く真実を拒んだ……そして、無意識のうちに、大切な記憶を封じた」
——ゾクリ。
冷たいものが背筋を這う。
(私が……自分の記憶を……?)
「紗江……?」
悠聖の手が、そっと彼女の頬に触れる。
「本当に……思い出せないのか?」
——ドクン。
彼の指先が触れた瞬間、何かが胸の奥で弾けそうになる。
(何か……思い出しそう……)
だけど、それは深く閉ざされていて——。
「……怖い」
紗江は小さく震えた。
悠聖が、そっと彼女を抱きしめる。
「……怖くない」
彼の声が、優しく耳に落ちる。
「俺がそばにいる。だから、ゆっくりでいい」
——ドクン。
彼の腕の中が、あまりにも温かくて——
紗江はそっと目を閉じた。
「……思い出したい」
震える声で囁く。
「でも、どうすれば……」
悠聖が、ゆっくりと紗江の額に唇を落とす。
「……俺を、信じろ」
その言葉が、甘く心を満たす。
——ドクン。
その瞬間、紗江の脳裏に、一筋の光が差し込んだ。
封じられた記憶が、今、目覚めようとしていた。




