第四十一章 ささやきの管理者
戦火が魔族領の大地を赤く染める。
王国と帝国の軍が入り乱れ、剣と魔法が交錯する中、悠聖は紗江の手を強く握った。
「離れるな、絶対に」
——ドクン。
彼の声が、まるで誓いのように心に響く。
「悠聖……」
紗江は小さく頷き、彼の背中にしがみつくように寄り添った。
(この人のそばにいれば……きっと)
けれど、次の瞬間——
「待っていたぞ」
静かでありながらも、圧倒的な威圧感を持つ声が響いた。
悠聖と紗江が振り向くと、戦場の向こう側から黒い衣を纏った人物がゆっくりと近づいてきた。
「お前たちが“ささやき”の真実に触れた者か……」
その男の目は、まるで悠聖と紗江のすべてを見透かすように冷たかった。
「……誰だ?」
悠聖が剣を構える。
男は薄く微笑んだ。
「我は、“ささやきの管理者”」
——ドクン。
その名に、紗江の全身が震えた。
「管理者……?」
男は静かに頷く。
「“ささやき”は、世界の秩序を維持するために存在する……しかし、お前たちのように真実を知り、力を使おうとする者は——排除しなければならない」
「っ……!」
悠聖が紗江を庇うように前へ出た。
「排除……? ふざけるな、誰がそんなことを決めた?」
「我々だ」
管理者は淡々と告げる。
「この世界は、決められた未来の中でしか生きられない」
「そんなこと、誰が決めたんだよ!」
悠聖の叫びに、管理者は微笑みながら言った。
「神だ」
——ドクン。
紗江の胸がざわつく。
(“ささやき”は、神の意思……?)
その真実が、彼女の心を揺らす。
だが——。
「たとえ神が決めた未来だとしても……俺たちは従わない」
悠聖がはっきりとそう言い切った。
——ドクン。
彼の言葉に、紗江の心が熱くなる。
「……俺たちは、自分の未来を自分で選ぶ」
悠聖がそう言った瞬間、管理者の目が鋭く光った。
「ならば、証明してみせよ」
その言葉と同時に——
空間が歪み、異様な気配が広がった。
悠聖はすぐに紗江の手を強く握る。
「紗江、どんなことがあっても俺を信じろ」
——ドクン。
彼の温もりに、全身が包まれる。
「……信じてる」
彼の隣でなら、どんな運命も乗り越えられる。
その瞬間——
戦場の空に、黒い雷が閃いた。
決戦が、幕を開ける。




