第三十八章 記憶を取り戻せ
悠聖の腕の中で、紗江はただ彼の温もりを感じていた。
その感触があまりにも心地よくて、夢のようだった。
——ドクン。
「……悠聖」
名前を呼ぶと、彼はそっと紗江の髪を撫でた。
「大丈夫、もう怖がる必要はない」
低く甘い声が、耳元に落ちる。
それだけで、体が熱くなる。
(……どうしてこんなに)
彼のそばにいるだけで、こんなにも心が満たされるのか——。
だけど、その時。
「紗江、まだお前の記憶は戻っていないな?」
ふいに、悠聖が静かに問いかけた。
「……え?」
記憶——?
「帝国は、お前の“心のささやき”を歪めようとした」
悠聖の瞳が、鋭く光る。
「きっと、お前の記憶も……改ざんされているかもしれない」
——ゾクリ。
紗江の心に、不安が広がる。
「私は……何も変わってないと思う……」
そう答えながらも、何かが引っかかる。
本当に?
何も忘れていない?
悠聖はそっと彼女の手を握る。
「俺を……信じろ」
——ドクン。
彼の瞳が真っ直ぐで、あまりにも優しくて——。
気づけば、紗江は彼の胸にそっと顔を埋めていた。
「……信じてる」
そう囁いた瞬間、悠聖の腕が強く彼女を抱きしめた。
「なら、取り戻そう。お前の大切な記憶を——」
その誓いとともに、二人の未来が再び動き出した。




