第三十四章 戦火の中で
剣の音が響き、王国と帝国の兵士たちが入り乱れる中、悠聖と紗江は必死に逃げ道を探していた。
「このままじゃ捕まる……!」
紗江が息を切らしながら叫ぶ。
「大丈夫、俺が絶対に守る」
悠聖は紗江の手を強く引き、彼女を庇うように背を向けた。
その瞬間——
「狙え!」
兵士の一人が弓を構え、矢を放った。
「——紗江!」
悠聖がとっさに彼女を抱き寄せる。
——ドクン。
そのまま、彼の体に包み込まれるように倒れ込んだ。
「っ……!」
強く抱きしめられる感触。
彼の温もりに、全身が震える。
「大丈夫か?」
悠聖の声がすぐ耳元に響く。
——近い。
荒い息遣いが、首筋をかすめる。
「う、うん……」
息が詰まりそうになる。
「……お前を傷つけさせるわけがない」
低く甘い囁きが、さらに胸を締めつける。
「悠聖……」
名前を呼ぶと、彼の腕の力がさらに強くなる。
「……離れたくない」
思わず口をついた言葉に、悠聖の表情がわずかに揺れる。
——ドクン。
「俺も……お前を、手放したくない」
その言葉が、心の奥に深く刻まれる。
戦場の喧騒が遠くなっていく。
彼の腕の中が、世界で一番安全な場所に思えた——。
(もう……この人から離れられない)
悠聖の鼓動を感じながら、紗江はそっと彼の背に手を添えた。
たとえどんな運命が待っていようとも、二人は決して離れられない——そう確信していた。




