第三十三章 狙われた力
“ささやき”の真実を知った悠聖と紗江は、神殿を後にした。
だが、その帰路——異変は起こった。
「見つけたぞ!」
突如、周囲の暗闇から響く声。
王国と帝国の軍が、二人のもとへと迫っていた。
「……追ってきたか」
悠聖は紗江の手を強く握りしめた。
「紗江、俺から離れるな」
——ドクン。
その言葉に、紗江の心が大きく揺れる。
(悠聖のそばにいるだけで、怖くない)
そう思った瞬間、兵士たちが剣を抜き、包囲を狭める。
「お前たちを拘束する」
王国の兵士が冷たく告げる。
「“ささやき”の力は、王国のために使わせてもらう」
「違うわ!」
紗江は思わず声を荒げた。
「私たちの力は、誰かの道具じゃない!」
——ドクン。
その言葉に、悠聖が満足そうに微笑む。
「その通りだな」
そして、彼は静かに紗江を引き寄せ——
「俺たちは、誰にも支配されない」
低く甘い囁きが、紗江の心を震わせる。
その瞬間、兵士たちが動いた。
「捕えろ!」
剣が振り下ろされる——。
だが——。
「紗江!」
悠聖が彼女の腕を強く引いた。
次の瞬間、紗江の体は彼の胸に抱き寄せられていた。
「っ……!」
——ドクン。
「……大丈夫、俺がいる」
悠聖の声が、甘く優しく響く。
心臓が、苦しいほどに高鳴る。
「悠聖……」
彼の腕の中が、あまりにも心地よくて——
もう、どこにも行きたくなくなってしまいそうだった。
(……ずるいよ)
戦場のど真ん中なのに、こんなにも彼に囚われてしまうなんて——。
「もう、誰にもお前を渡さない」
悠聖の囁きが、まるで誓いのように響いた。
この戦いがどうなろうとも——
彼のそばだけは、絶対に離れたくない。
そう、紗江は強く願っていた。




