第三十二章 神々の遺言
光の柱が消えた瞬間、悠聖と紗江は別の空間にいた。
静寂が広がり、まるで時が止まっているかのような場所——そこには、石碑に刻まれた無数の文字が浮かんでいた。
「これは……?」
紗江が小さく呟く。
「“ささやき”の真実が、ここに記されているのだ」
先ほどの黒衣の男、管理者が静かに言った。
「お前たちに選択の権利を与えよう。知るか、知らぬまま進むか——」
悠聖は紗江の手をぎゅっと握る。
「俺たちは……知る」
強くそう答えた瞬間、石碑が淡く光を放ち始める。
浮かび上がる文字が、淡く揺れながら形を成していく。
そして——。
「“ささやき”とは、過去の異世界転生者たちの残した“想い”の集合体である」
——ドクン。
「想い……?」
紗江は不思議そうに呟く。
管理者は静かに頷く。
「彼らは、世界の未来を守るために、己の知識や力を遺し、それが“ささやき”として受け継がれている」
悠聖は険しい表情で問いかける。
「ならば、なぜ“ささやき”は人によって違い、時に誤った未来を示す?」
「それは、過去の転生者たちが持っていた意志が交錯し、時に偽りの声を生むからだ」
——ゾクリ。
紗江の背筋に冷たいものが走る。
「じゃあ……私の“心のささやき”も……?」
「そう。お前が聞く声もまた、かつてこの世界にいた者たちの想いの一つ」
管理者は続けた。
「お前たちは、知ってしまった。さあ——どうする?」
静かに問いかけられる。
悠聖は、紗江の手をさらに強く握る。
「俺たちは……この力を使いこなす」
——ドクン。
その言葉に、紗江の胸が熱くなる。
「お前がいるなら、どんな未来も怖くない」
悠聖がそっと紗江の頬を撫でた。
「俺が、お前の道を照らす」
——ドクン。
(……この人となら……)
紗江はそっと目を閉じ、彼の温もりに身を寄せた。
未来がどうなるかは分からない。
けれど、彼がいるなら——どんな未来も受け入れられる。
「……ありがとう、悠聖」
甘く響く囁きが、二人を包み込んでいた。




