第三十一章 時の神殿
碑文が光を放つと同時に、悠聖と紗江の視界が一瞬真っ白になった。
次に気づいた時——二人は、全く異なる場所に立っていた。
「ここは……?」
紗江が周囲を見回す。
そこは広大な神殿のような場所だった。
天井には、夜空のように輝く無数の星が瞬いている。
そして、中央には巨大な祭壇——。
悠聖は慎重に紗江の手を引いた。
「気をつけろ……何かが来る」
——ドクン。
紗江は彼の手を握り返し、不安をかき消そうとする。
(この人がいるなら……大丈夫)
その時——。
「よくここまで来たな」
低く響く声とともに、神殿の奥から黒い影が現れた。
その男は、漆黒の衣をまとい、まるで夜そのもののような存在だった。
「……誰だ?」
悠聖が鋭く問いかける。
男は薄く笑い——。
「“ささやき”の管理者だ」
——ドクン。
紗江の全身に寒気が走る。
「管理者……?」
「“ささやき”を選び、未来を知る者たち……その力を正しく扱えなければ、世界は崩壊する」
男は悠聖と紗江をじっと見つめる。
「試されるがいい——お前たちが、本当にこの力を持つべき者なのか」
その言葉と同時に、神殿が大きく震えた。
光の柱が立ち上がり、悠聖と紗江を包み込む。
「っ……!」
紗江は咄嗟に悠聖の腕を掴んだ。
「大丈夫だ、紗江!」
悠聖が力強く抱き寄せる。
——ドクン。
彼の温もりが、不安をかき消していく。
「お前は俺が守る」
囁く声が、甘く優しく響いた。
それだけで、紗江の心は完全に彼に囚われてしまう。
(この人となら……どんな試練も乗り越えられる)
二人の未来を決める試練——今、始まろうとしていた。




