第二十六章 魔族領への旅路
逃亡の果てに、悠聖と紗江はついに王国の境界線に辿り着いていた。
目の前に広がるのは、“禁忌”とされる地——魔族領フィエルデ。
「ここに入ったら……もう戻れない」
悠聖は静かに呟いた。
王国も帝国も、この地へ入ることを禁じられている。
だが、今の二人には、それ以外の選択肢はなかった。
「紗江、怖いか?」
悠聖がそっと彼女を見つめる。
紗江は迷わず首を横に振った。
「……悠聖がいるなら、大丈夫」
——ドクン。
そう言った瞬間、彼の目が優しく細められる。
「……なら、行こう」
次の瞬間——
悠聖が、紗江の手をそっと握る。
その指の温もりが、ひどく安心できるものだった。
「……離れるなよ」
低く甘い声が、静かに響く。
紗江の心臓が跳ねる。
(この人のそばにいるだけで……こんなにも)
彼に触れられているだけで、怖くない。
むしろ、もっと——
「……悠聖」
名前を呼ぶと、彼は振り返った。
「……なに?」
その視線が、あまりにも優しくて、胸が熱くなる。
「……ありがと」
小さく呟くと、悠聖は驚いたように目を瞬かせ——
「……当たり前だろ」
そう言って、さらに手を強く握った。
——ドクン。
もう、戻れない。
でも、この人となら——
どこまでも、一緒に行ける気がした。




