第二十四章 信頼の証
夜の静寂を切り裂くように、悠聖は紗江の手を強く引いた。
「ついてこい、絶対に離れるな!」
彼の声は、いつになく真剣だった。
紗江は息を切らしながらも、必死で彼に追いつこうとする。
(この人の手を離したら……もう、二度と会えない気がする)
そう思うと、自然と手に力がこもった。
後ろでは騎士たちの足音が迫ってくる。
「こっちだ!」
悠聖が角を曲がった瞬間、紗江の足がもつれ——
「きゃっ!」
バランスを崩して倒れそうになる。
「っ……!」
しかし、次の瞬間、悠聖がすぐに紗江を抱きとめた。
——ドクン。
彼の腕の中に包まれる感覚。
心臓が跳ねる。
「大丈夫か?」
顔を覗き込まれ、紗江は頬を赤らめた。
「う、うん……」
けれど、悠聖はじっと彼女を見つめたまま、腕を離そうとしない。
「紗江」
静かに名前を呼ばれた瞬間、体が熱くなる。
「お前は……俺のこと、信じてるか?」
優しく、けれど真剣な問いかけ。
その瞳の奥に映るのは、不安ではなく——強い決意。
(信じてる……この人のことなら、何があっても)
「……信じてるよ」
小さな声でそう告げると、悠聖はふっと微笑んだ。
「……なら、もう怖がるな」
次の瞬間——
悠聖がそっと紗江を引き寄せ、彼女の額に唇を落とした。
「っ……!」
額に触れる感触が、ひどく優しくて。
全身が甘く痺れるような感覚に包まれる。
「お前は、俺が守る」
静かに囁かれる声が、心に深く響いた。
(もう……逃げられない)
悠聖に囚われていく自分を感じながら——
紗江はただ、彼の胸の中でそっと目を閉じた。




