第十四章 交錯する想い
夜の静寂が、まるで二人だけの時間を守るかのように広がっていた。
悠聖の腕の中に抱き寄せられたまま、紗江は身じろぎもできずにいた。
(心臓が……壊れそう)
彼の胸に耳を寄せると、静かで落ち着いた鼓動が聞こえる。
対して、自分の心臓はまるで暴れているかのように速く鳴っていた。
「紗江」
名前を呼ばれた瞬間、全身が熱くなる。
「……なに?」
囁くような声で答えると、悠聖は彼女の髪をそっと撫でた。
「お前、少し震えてるな」
「そ、そんなこと……!」
咄嗟に否定するが、悠聖の手がさらに彼女の背をゆっくりと撫でた。
「無理しなくていい」
「……無理なんてしてない」
「じゃあ、なんでそんなに顔が赤いんだ?」
「……っ!」
悠聖が紗江の頬に手を添えた瞬間、さらに熱くなるのを感じる。
「……触れなくても、分かるくらい熱いぞ?」
彼の指先が、頬を優しくなぞる。
「……反則……」
震える声でそう呟くと、悠聖はふっと微笑んだ。
「反則でも、いい」
そう言うと、彼はゆっくりと紗江の髪を耳にかけた。
「……お前を、大事にしたい」
その言葉が、心の奥にじんわりと染み込む。
(ずるい……)
そんな風に言われたら、もうどうすればいいのか分からない。
「悠聖……」
無意識に名前を呼ぶと、彼は静かに微笑み、そっと紗江の手を握った。
「これからも、俺のそばにいてくれるか?」
その言葉が、まるで告白のように甘く響く。
鼓動が痛いほどに高鳴る。
「……はい」
気づけば、小さく頷いていた。
悠聖は満足そうに微笑むと、紗江の手をぎゅっと握り直した。
「よし……なら、もう離さない」
月明かりの下、二人の距離は完全に縮まり——
紗江は、もう二度と彼の手を離せなくなってしまった。




