第十三章 月光の下の誓い
夜空に浮かぶ月が、淡い銀の光を地上に降り注いでいた。
悠聖と紗江は、追っ手から逃れるように森の奥へと足を進めていた。やがて、草の香りが漂う小さな湖に辿り着く。水面は月の光を映し、幻想的な輝きを放っていた。
「ここなら、少しは休めそうだな」
悠聖は辺りを見渡しながら、紗江に声をかける。
「うん……」
紗江は、まだ速くなる鼓動を抑えられずにいた。
追っ手の気配はもうないはずなのに、胸がざわつくのは別の理由——。
(……だって、二人きり……)
月明かりに照らされた悠聖の横顔が、妙に大人びて見えた。
「座れ」
そう言って、悠聖は紗江の手を引いた。
「えっ、ちょ、ちょっと……!」
抵抗する間もなく、彼の隣に腰を下ろされる。
「そんなに警戒するなよ」
悠聖は、くすっと笑って紗江の髪をそっと撫でた。
「っ……!」
突然の仕草に、息が詰まる。
月明かりの下、彼の指が紗江の髪をゆっくり梳く。
「少しは落ち着いたか?」
そう囁かれ、紗江はただ小さく頷いた。
彼の手は温かくて、触れられるたびに心臓が跳ねる。
(どうしよう……悠聖のこと、こんなにも……)
考えがまとまらないまま、ふと彼と視線がぶつかる。
——近い。
息がかかる距離。
瞳の奥に吸い込まれそうになる。
「……紗江」
悠聖の声が、低く甘く響く。
——ドクン。
心が揺れる。
「お前がここにいてくれるだけで、俺は……安心する」
囁くような声に、体が熱くなる。
「俺に……ついてきてくれるか?」
悠聖の手が、そっと紗江の指に絡む。
温かく、逃げられないほど優しくて——。
「……はい」
小さな声で答えた瞬間、悠聖の腕が彼女をそっと引き寄せた。
「……よく言えたな」
耳元で囁かれ、紗江の心臓が大きく跳ねる。
「もう、俺のそばから離れるな」
悠聖の腕の中で、紗江は静かに目を閉じた。
彼の温もりと、静かな湖の波の音だけが、二人の世界を包んでいた。




