第十二章 追跡と罠
冷たい夜風が、静寂を破るように吹き抜ける。
王国の追っ手はすぐそこまで迫っていた。
悠聖と紗江は、朽ちた教会の中に身を潜め、気配を殺す。
——だが、紗江の鼓動は抑えられなかった。
こんな状況なのに、彼の隣にいるだけで、心臓が壊れそうなくらい高鳴る。
(どうして、こんなに……)
思考が絡まる中、悠聖がそっと彼女の手を握った。
「大丈夫、俺がいる」
——ドクン。
その言葉と温もりが、全身を優しく包み込む。
怖くない。
この人がそばにいてくれるなら——。
「……うん」
小さく頷くと、悠聖は微笑み、彼女の頬にそっと触れた。
「……お前、顔が赤い」
その言葉に、紗江の体が一気に熱くなる。
「そ、そんなこと……ない……っ」
必死に視線を逸らす。
けれど、悠聖は逃がさなかった。
「嘘つき」
指先が、頬を優しくなぞる。
「……触れただけで、熱い」
「っ!」
彼の指先が滑るたびに、体が熱くなる。
息が苦しい。
「……紗江」
低く甘い声が、耳元に落とされた瞬間——
もう、逃げられなかった。
「俺に……ついてこい」
囁きとともに、悠聖の腕が彼女をしっかりと抱きしめる。
その腕の強さが、「絶対に守る」と語っていた。
——ドキン。
彼の胸に触れ、鼓動が重なる。
(もう……ダメ)
理性が溶ける。
けれど、心は確かに叫んでいた。
——この人に、囚われていたい。
夜の静寂の中、二人はただお互いの温もりを感じていた。




