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ささやきの運命  作者: 乾為天女


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第二部:第五十章 帝国再生と和解

 帝都フォルニアは、ようやく――

 本当の意味で、夜明けを迎えていた。

 黒き残滓が完全に浄化され、空を覆っていた不穏な影が晴れていく。

 壊れた街には、静かに鐘の音が響き、人々は互いの手を取り、再び“生きる場所”を築き始めていた。

 そして、その中心に立っていたのは――

 直哉なおや麻希まき

 広場の仮設演壇。

 グレオスが深く頭を下げ、民衆に向けて告げる。

 「私は、この国を導く者として、再び立つ。だが、私ひとりの手では、何も築けない」

 ざわつく人々の中に、まっすぐに立つふたりの姿があった。

 「この国を救ったのは、私ではない。

 闇に打ち勝ち、声を響かせ、命を賭して守ってくれた――この“ふたり”だ」

 拍手が起きた。

 最初はぽつりと、やがて波のように広がって、帝都全域がその音で満たされていく。

 麻希は少しだけ肩をすくめて照れ笑いを浮かべる。

 「わたし、あんまり人前に出るの得意じゃないのに……」

 「でも、誰より目立ってる」

 直哉が耳元でからかうように囁く。

 「う……やめてよ、もう……!」

 顔を真っ赤にしながらも、麻希は彼の袖をきゅっと引っ張った。

 まるで――「逃げちゃダメだよ」と言いたげに。

 「……でも、嫌いじゃない。あなたとなら、どんな場所に立っても、きっと大丈夫だから」

 直哉はその言葉に、静かに微笑んだ。

 「よし、じゃあこの先ずっと、隣にいてくれ」

 「うん。……“ずっと”だよ?」

 「“ずっとずっと”でもいい」

 ふたりの笑顔に、空気が柔らかくほどけていく。

 数日後――。

 帝都は急速に復興へと向かい始めていた。

 グレオスは民衆と向き合いながら、少しずつ信頼を取り戻し、

 ナディアは和平の象徴として王国との交渉を進めていた。

 その夜。

 静まり返った屋上のテラスで、麻希は風に髪をなびかせていた。

 月明かりに照らされたその背を、直哉が後ろからそっと抱きしめる。

 「……こんなに世界が静かだなんて、信じられないね」

 「ずっと騒がしかったからな。お前の寝言以外は」

 「なっ、ちょっと! 聞いてたの!?」

 「“直哉のばか”って、はっきり言ってた」

 麻希は顔を真っ赤にして、肘で軽く突く。

 「うう……それは、夢の中のわたしのせいだから……!」

 「それも含めて、お前が好きだって話」

 その一言に、彼女の動きが止まる。

 風が、ふたりの間をそっと抜けていったあと――

 麻希は彼の腕の中で、小さく言った。

 「……好きって言葉、いくら聞いても足りないんだね」

 「じゃあ……何度でも言うよ。俺は、お前が、好きだ」

 「わたしも……あなたが、好き」

 その言葉が、そっと唇の間から零れると同時に――

 直哉が麻希を抱き寄せ、額を合わせる。

 「……次は、どこへ行こうか」

 「どこでもいいよ。あなたとなら、草原でも、谷でも、雲の上でも」

 「そっか。……じゃあ、ひとまず“ふたりの家”から始めようぜ」

 「うん。白い壁と、大きな窓と、あなたの声が響く家」

 ふたりは未来を夢見ながら、そっと唇を近づけ――

 だが、触れる寸前で、止まった。

 麻希が小さく笑う。

 「……まだ、取っておくの。だって、ちゃんと家ができたら“初キス”にしようよ」

 「お、おう……逆に緊張してきたんだけど」

 「それでいいの。……あなたの“好き”を、もっと大事にしたいから」

 ふたりは見つめ合い、頬を染めながらも手をつなぐ。

 光が差し込む未来へと――しっかりと、ふたりの心が歩き始めていた。


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