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真夜中の宣戦布告

私が自室にこもって三か月、ようやく準備が整った


蓮のUSDを使用した【ファントム】も完成し、私の相棒【マリー】も大幅に改良、バージョンアップさせた


私は戦いに備えてまずは風呂に入った。身を清めるという意味合いがある訳ではないが今回の作戦の目的は


〈日本を管理しているスーパーAIコンピューターの一つ、【アウクソー】にハッキングを仕掛け


【サイバーテクノロジー社】の陰謀を暴き、世間に知らしめる〉というものだ


勝敗の行方は私が証拠となる秘密のデータを盗み出し、それを全世界のマスコミにリークするのが先か?


私の目的が達成される前にこちらのIPアドレスを特定され警察に身柄を拘束されるのが先か?という勝負である


つまりこの作戦が成功しても失敗しても私は捕まるのである。だからせめて体を綺麗にしておきたかったのだ


あと数時間後にはこの部屋に警官が大挙して押し寄せて来るだろう。


【内乱罪】というのは刑法において【第一級殺人罪】よりも重い罪だ、しかも国際法まで犯している


捕まれば極刑は免れない。私は部屋を整理し心の準備を整える。いつもの上下グレーのスウェットに身を包み、髪をゴムで後ろに束ねる


普段のラフな格好ではあるが私にとってはこれが戦装束なのだ。

 

「さあ、全知全能の女神さまに宣戦布告よ‼」

 

自分のパソコンとそれに並列化させた蓮のファントムのパソコンに電源を入れると


ウィーンという起動音が聞こえてきて嫌でも私の心は奮い立つ、


しかし女神【アウクソー】に手を出すという事は必ず彼らが出て来る


そう、女神を守護せし白き騎士【ホワイトナイト】達である


一年前の【KOEG】での対戦では手も足も出ず完敗した、しかし今回は負けられない、相手が誰であろうと必ず勝たなければいけないのだ。


 蓮のファントムを構築したパソコンに相棒【アビゲイル】を接続する。

 

「頼むわね【アビゲイル】、また蓮を支えてやって」

 

そう言って【アビゲイル】のUSBケーブルを差し込むと、緑色のランプが点灯し起動を始めた


それはまるで私の言葉に応えてくれている様であった。

 

〈任せなさい、どいつもこいつも処刑台に送ってやるわ〉

 

【アビゲイル】はそう答えた。もちろんこんなのは私の妄想でしかないのだろうが、確かに私にはそう聞こえたのである


続いて私の相棒【マリー】を接続する、私とは一年以上ぶりのコンビ復活だ。

 

「今度も私を助けてね【マリー】……」

 

赤いランプが点灯し【マリー】も私の声に答えてくれた。

 

〈仕方がないわね、付き合ってあげるわ〉


 そんな言葉が聞こえてきて思わず頬が緩んだ。そして蓮のファントムが入っているパソコンをジッと見つめ小さな声で囁いた。

 

「行くよ、蓮……私に力を貸して……」

 

だが蓮のファントムは何も答えてはくれなかった。当然と言えば当然なのだが私は自嘲気味の笑みを浮かべた後、モニターへと視界を移した。

 

「さあ、戦闘開始よ‼」

 

時間は深夜一時過ぎ、私の頭の中で戦いのゴングに打ち鳴らされた


私はまず初めにハッカー達がたむろするあるアングラサイト、いわゆる〈闇サイト〉に顔を出し


【アウクソー】を攻略する為の〈セキュリティホール〉と【サイバーテクノロジー社】の秘密を書き込んだ


ここにいるほとんどのハッカー達は自分の腕に自信があり、〈チャンスがあれば何かデカい事をやってやろう〉


という野心を持った連中がゴロゴロしている。そういった連中にとって、【アウクソー】という標的はこの上ない魅力的なターゲットであった。


〈全能の女神【アウクソー】にセキュリティホール発見、管理会社の【サイバーテクノロジー社】がとんでもない陰謀を画策


その全貌を暴き世に知らしめるための勇者求む、侵入手段は○○○……〉

 

と書き込むと、すぐさま反応があった。

 

〈これマジ?〉

 

〈どうせデマだろ〉

 

〈でも試しにやってみたら侵入できた、マジっぽい〉

 

〈ちょっ、それってワクテカ展開じゃね⁉︎〉

 

〈よっしゃ、やってやるか‼〉

 

〈いざ、出陣じゃ‼︎〉

 

狙い通りの反応に私は思わずほくそ笑む。こういった所にいる連中は私と同じく性格や人間性に問題がありそうだが、この際そんな事はどうでもいい


今必要なのはハッカーとしての技術、知識だけなのだ。こうして私は会ったこともしゃべった事もない人達を援軍に加え戦いを挑むこととした。


 だがそれには当然リスクもある。それはこのような掲示板に具体的なセキュリティホールを載せ大挙して攻め入れば


早い段階で相手側に対処法を確立され対策されてしまうのは否めない、しかしそれでも構わなかった


なぜならば私の狙いは超短期決戦、いわゆる【ゼロデイアタック】と呼ばれるものだ


【ゼロデイアタック】とはセキュリティホールが発見され、その脆弱性を解消する対処法が確立されるまでのわずかな間にクラッキングを仕掛けるサイバー攻撃のことである。


さあ、行くわよ、私についていらっしゃい‼︎」

 

私の呼びかけにアングラサイトの掲示板はこれ以上ないほどの盛り上がりを見せていた


〈蛇の道は蛇〉とばかりに類は類を呼び次々に参加者希望者が増えていく


そういった連中を引き連れて私はいざ決戦の場へと向かった。

 

それはさながら屈強な騎士達が守る女神の居城に、腕っ節自慢のならず者や荒くれ者どもを引き連れて、秘密の侵入口から城へと攻め入るレジスタンスの様であった。


 時間は深夜一時、【サイバーテクノロジー社】自慢の〈ホワイトナイト〉達も自宅で深い眠りに入っている事だろう


逆にこういったアングラサイトにたむろする様な連中は基本的に夜行性の人間が多い


今回はタイムアタック的な時間との勝負の為、少しでもアドバンテージが欲しかった


決行の時刻をこの時間にしたのもそのためである。いくら用意周到に準備し腕っ節自慢の連中の援軍を得たとしても


【サイバーテクノロジー社】の様な大企業と真正面からカチンコで戦ったら資金力、人材などあらゆる面で勝ち目は薄い


だが私は負けるわけにはいかないのだ。だからこそ〈どうやったら勝てるか?〉を必死で考え、手段を模索し何度もシュミレートした結果


選択した作戦がこの時間帯による【ゼロデイアタック】なのである。

 

古今東西、寡兵をもって大軍に勝つための作戦は〈奇襲戦法〉と相場が決まっている


織田信長が世間に名を知らしめる事となった〈桶狭間の戦い〉や日本軍が勝利した〈真珠湾攻撃〉など


過去にも下馬評を引っくり返し大勝した奇襲戦法は少なくない


良い悪いは別としてその作戦が有用である事は歴史が証明してくれている


これはゲームや試合をやっているのではないのだ。正々堂々とかスポーツマンシップとかいう意識は毛ほども持ち合わせていないし


自分のやっている事が正しくて、悪事を成敗する正義の所業などとも微塵も思っていない。


ただただ悔しくて、腹が立って、居ても立っても居られないからやっているのだ


つまり抑えきれない感情のはけ口としてこんな大犯罪に手を染めているのである


しかし私の心に迷いや戸惑いは無かった、〈憎しみの感情は何よりも強く人を動かす〉という言葉を聞いたことがあるが


今の私はまさにその言葉を地でいく存在と化していた。


〈蓮を殺した連中を絶対に許さない、必ず奴らを地獄に引きずり落としてやる‼︎〉


という復讐心だけが私の心のモチベーションであった。


他人から見たらさぞかし馬鹿な女に見えることだろう、半年前の私ならば考えられない行動である、でも私は蓮と出会い色々な事を知った

 

楽しいことばかりでは無かったが、今思うとどれも素敵な思い出でばかりある


彼とデートしてからもう三ヶ月以上が過ぎたが、心の中のマグマのように湧き上がる衝動は未だに止まる事を知らずむしろ活発化していた


そう、私は完全に復讐の鬼と化していたのである。

 

薄暗くしんと静まり返った夜中の部屋で、カタカタというキーボードを叩く規則正しい音が鳴り響いていた


下の階では明日に備えて両親はすでに寝息を立てている。今娘のやっている事を知ったらどんな顔をするのだろう……

 

季節的にはもう涼しくなっていて夜には肌寒さすら感じるが少しでもパソコンの性能が落ちる事を恐れて暖房は入れていない


多少寒かろうがそんな事を感じる暇もないほどに集中していたから気にはならなかった。

 

「流石に固い……」

 

私とマリー、そして蓮のファントムとアビゲイルのコンビを持ってしても【アウクソー】攻略は至難の技であった


考えてみればそれも当然で【サイバーテクノロジー社】にしてみれば


〈アウクソーのファントムを作って、日本を自分たちの意のままに操ろう〉


などという計画が露見すればとんでもないことになるからだ


当然何重ものプロテクトやファイアウォールが用意されていることは明白である。

 

日本有数の大企業と現厚生労働大臣を相手に一介の女子高生が挑むのだ


冷静に考えれば勝ち目とか勝算とかあるはずもない。しかし勝たなくて良いならば話は別だ


私の目的は〈連中と刺し違えること〉自分が助かる事を放棄し相手を倒す事だけを考えた場合、可能性はゼロではない


自爆覚悟のバンザイ攻撃、奇襲による神風アタック、もしこの作戦が失敗したとしても連中の心胆を寒からしめることぐらいはできるだろう


それぐらいはやってやらないと、蓮と私は何のために……


私は思わず唇をかみしめた。



頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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